自分たちでデザインした自宅兼オフィス兼サロン
大学でともに建築を学んだ西川さんご夫妻が選んだ職業は、WEBデザイナーとアロマセラピスト。アロマのサロンとスクール、事務所を兼ねた自宅は、自分たちでデザインし、自然素材を駆使してできた快適な空間です。

大学で建築を学んだ同窓夫婦の家

 

小机の静かな住宅街。淡い色の外壁を伝って外階段を上り、玄関扉を開けるとふわりとやさしいアロマの香りに包まれます。大理石の広いホールの一角にはクリスタルが置かれていて、どこか清らかな雰囲気。アロマセラピーのスクール、サロン、そしてオフィス、自宅を兼ねた西川尚之さん・由佳さんご夫妻の家は、大勢を迎え入れるのにふさわしい美的センスにあふれた居心地のよい空間です。

尚之さんと由佳さんは同じ大学に学んだ間柄です。実は二人とも、専攻は建築。ところが卒業後の進路は、尚之さんはwebデザイナー、由佳さんはアロマセラピストと、建築とはまったく異なる道に進みました。今でこそお二人の職業は人気業種として定着していますが、今から10年以上前のこの選択は、先見の明があったとしか言いようがありません。

10年以上の時を経て二人が再び建築と向き合うのは、住まい兼仕事場となる自宅を新築することになった今から約3年前。

「大学生のころの食生活の乱れや髪の毛を染めたことなどがきっかけで、アトピーの症状が出てしまったのです。それからしばらく体調もすぐれず、つらい時期を過ごしました。その後、アロマセラピーや食生活の改善によって体調はよくなるのですが、やはり今でも建売住宅の匂いは受け付けず、自然素材で建てるしかない、と」。

そう、由佳さんが振り返ります。30代の二人が初めての家を新築するとなると、どうしても価格がネックになります。建売住宅ではなく、一から設計して建てる注文住宅……となると、当然土地に高いお金をかけるわけにもいかず、北側傾斜という決してよい条件とはいえない敷地条件の中で、工夫しながら家をプランニングする必要が出てきました。自然素材を扱うのが得意な茅ヶ崎の工務店と縁ができ、設計は尚之さん自らが腕をふるいました。珪藻土の壁塗りや床の塗装、カーテンレールの取り付けなどは二人で行うなど、頭も体も動かし、理想の家づくりに施主自らが参加していったのです。

 

太鼓梁が堂々たる存在感の2階リビング。和歌山の杉材で、家全体をどっしりと支える。ローテーブルの上に置いてあるのはクリスタル。電磁波をカットする働きがあるそう

 

オンとオフを空間が切り替える

 

「小さな家なので、廊下をなくして空間をつなげて広く使いたい」

これが、尚之さんのプランのポイントです。1階はサロンとホール、寝室のみ。大理石の床がつややかに輝くホールは凛と静かで、北側の庭に向かって穿った窓と無垢材の階段による異なる素材感の競演はまるで絵画のようであり、西川ご夫妻の美的感覚が余すところなく表現されています。アールがかかった天井や壁の一部は、どこか南欧を思わせる雰囲気です。

限られた建築面積のなかで、これだけ大きなホールをとるというのは、なかなか思い切ったプランです。「普通はしないですよね(笑)。だけど、小さな敷地だからこそあえて何でもない空間をつくることで、むしろ豊かに暮らすことができるんじゃないかと思って」(尚之さん)。果たしてここは家の顔となり、時にサロンのお客様を迎える癒しのスペースとなり、アロマグッズのショップともなる多機能な空間として自由自在に使うことができるようになったのです。

一転、2階は木の温もりあふれる「家族の憩いの場」。階段を上がった先には扉も廊下もなく、どーんと広い大空間のリビングと、奥にコンパクトなダイニングキッチン、客間にもなる和室という構成。高い天井の小屋裏に小ぢんまりとしたワークスペースがあり、そこが尚之さんの仕事場になります。

「家を見ながら仕事がしたいと思ってロフトを仕事場にしたけれど、さすがに夏は暑いですね」と苦笑する尚之さんですが、パソコンやモニターが並ぶ「デスク周り」と、スケッチをしながら創作のアイデアを練る卓袱台と座椅子の「床坐周り」がバランスよく配備され、仕事のスイッチの切り替えが上手にできそうな空間設計です。

1階も2階も大きな空間でつながりながら、働く場、くつろぐ場、人を招く場、休む場と、それぞれの役割を全うできる機能性。在宅ワーカーのお二人にとって、このうえなく快適なワークスペース兼住まいと言えるのではないでしょうか。

玄関からホールを望む。アールがかかった壁がやさしい雰囲気。空間全体がやさしいアロマの香りで満ちている。左手がショップスペースで、奥がスクール

 

ロフトにある尚之さんのワークスペース。絵の具やクレヨン、色鉛筆を駆使して描くイラストは脱力系。尚之さんのイラストはブログ「ちゅちゅにこ日記」で。http://holyshine.hama1.jp/

 

 

アロマを生活に生かし、人もペットも健康に

 

由佳さんは現在、ホリスティック・アロマセラピストとして、アロマオイルトリートメントやクリスタルトリートメント(鉱物を使ったトリートメント)を行う傍ら、JHAS(JAPAN HOLISTIC AROMATHERAPY SOCIETY=日本ホリスティック・アロマセラピー協会)横浜校の講師としてアロマセラピーを伝える仕事をしています。

ホリスティックとは「全体」や「総合」、「聖なる」という意味を有します。ホリスティック・アロマセラピーは、人間の心身を総合的にとらえて全体がよい状態に向かうよう、アロマ(芳香)によって心身を整えていく植物療法です。例えば胃が痛む場合、胃痛によい精油を使ってケアするのはもちろんですが、もしかしたらストレスが根本的な原因なのではないかなどと本質的な部分まで探り、症例に対して心身両面からアプローチしていきます。

西川家では尚之さんもアロマセラピストの資格をとり、夫婦で日常生活にアロマを取り入れています。朝はさわやかに目覚められるよう、ペパーミントなど刺激系の香りを。逆に夜は安眠を誘うよう、ラベンダーやサンダルウッドなど鎮静系の香りを焚くそうです。入浴時にはその日の体調や仕事の疲れなどに応じたアロマオイルを数滴たらし、筋肉痛や足のむくみの際はローションやクリームでマッサージ。だからでしょうか、尚之さんはいつも穏やかで落ち着いた笑みをたたえ、由佳さんは明るくはつらつと、人を元気にする笑顔で心和ませてくださいます。

取材の時には気分がシャキッとする気持ちよい香りがサロンを包んでいました。「初対面なので、緊張を和らげたり、円滑なコミュニケーションができるよう、バジルとベルガモット、オレンジの精油をブレンドしました」と、由佳さん。その心遣いが何ともうれしく、当然話ははずみ、和やかで楽しい取材のひとときとなったのです。

 

1階のスクール&サロンスペース。アロマオイルトリートメントやほっとストーンセラピー、クリスタルトリートメントなどが受けられる。スクールは気軽に受講できるカルチャーから、アロマセラピスト養成コースまで

由佳さんの膝の上でくつろぐニコちゃん。迷い犬だったニコちゃんを飼い始めた当時は皮膚病がひどかったが、由佳さんが毎日アロマでケアしている間に、今ではすっかりきれいで健康に。由佳さんは今年、ホリスティック・アニマル・セラピストの資格も取得した

Information

School of Aromatherapy HolyShine(ホーリーシャイン)

http://www.holyshine.co.jp/

4月8日(木)から毎月第2・第4木曜日にウィズの森で西川由佳さんのアロマセラピー初心者コースが開催されます。

全6回で、アロマセラピーの歴史や基礎についてのレクチャーのほか、ルームスプレーや香りのペンダント、シャンプーづくりなどの実習を行います。

各回90分、2000円。単発でも受講も可(通しで参加されるとより理解が深まります)

詳しくは下記まで。

http://holyshine.hama1.jp/e828721.html

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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