ドキュメンタリー映画「ミツバチの羽音と地球の回転」監督の鎌仲ひとみさんです!
瀬戸内海に浮かぶ小さな島・祝島(いわいしま/山口県上関町)。1982年、対岸の上関町田ノ浦に中国電力の原子力発電所建設計画が持ち上がって以来、島民の9割が現在に至るまでの28年間、原発建設を阻止しようと闘いを続けています。

6月より全国で公開中のドキュメンタリー映画「ミツバチの羽音と地球の回転」(監督:鎌仲ひとみ)は、祝島の人々の闘いと、脱石油・脱原発を決め持続可能な社会にシフトしているスウェーデンでの生活を追っています。かの地に共通する未来とは。中国電力と島民との対話なき闘いの行方は……。

本作を監督した鎌仲ひとみさんと、反対運動をリードしてきた山戸貞夫さんに、映画に寄せる思いと持続可能な未来の展望について、お話をお聞きしました。

「ヒバクシャ 〜世界の終わりに〜」「六ケ所村ラプソディー」そして「ミツバチの羽音と地球の回転」。鎌仲ひとみ監督のテーマは、持続可能なエネルギーの未来をいかに切り開いていくか。全国で自主上映の輪が広がり、特に子育て世代から強い関心が寄せられている。上映会の企画や運営によって、地域で新たに人の輪が築かれるという、新たな「まちづくり」の側面もみられる

「ヒバクシャ 〜世界の終わりに〜」「六ケ所村ラプソディー」そして「ミツバチの羽音と地球の回転」。鎌仲ひとみ監督のテーマは、持続可能なエネルギーの未来をいかに切り開いていくか。全国で自主上映の輪が広がり、特に子育て世代から強い関心が寄せられている。上映会の企画や運営によって、地域で新たに人の輪が築かれるという、新たな「まちづくり」の側面もみられる

エネルギーの自立による地域の再生がテーマ

 

──前作「六ケ所村ラプソディー」は、核燃料サイクル施設に関わる人々の思いをあぶり出し、全国で大反響を呼びました。今作「ミツバチの羽音と地球の回転」では祝島の原発反対運動を取り上げることにしたのはなぜですか。

 

鎌仲ひとみ監督(以下敬称略): 映画にも登場するシーカヤッカー(海上からシーカヤックで中国電力の動きを監視し、阻止行動を行う人々)たちが「六ヶ所村ラプソディー」の上映を祝島で企画し、トークショーで誘ってもらったことが直接的なきっかけです。次回作でエネルギーの自立を果たしているスウェーデンを撮ることがすでに決まっていたのですが、祝島を訪れてみて、スウェーデンの人々との間に共通する思想を感じ、ぜひここを撮ろう、と。

 

──祝島とスウェーデンの共通項とは?

 

鎌仲: それは映画を観ていただければわかると思います。環境と経済がうまく回っているところは世界的にも少なく、スウェーデンのオーバートーネオなどがそのいい例なのですが、祝島もエネルギーの自立と、原発の利益誘導に頼らない経済の自立を模索しています。お金には換えられない環境を最も大切にし、そのために命をかけてまで闘う心意気や生き様が祝島の人たちにはあります。実は、それはものすごく先進的なことなのです。

 

──今作では山戸孝さんという32歳の青年を軸に映画を展開しています。山戸さんを主人公に据えたのはなぜですか?

 

鎌仲: 孝くんは今子育てのまっただ中で、間違いなく未来のことを一番現実的に考えているはずです。彼が島で今後どう生きていくかが、日本中の限界集落や過疎地で生きる若者たちの未来と重なります。

 

──「六ケ所村ラプソディー」では、原子力反対派、推進派、従事者など、様々な立場の人の声を拾いましたが、今作では反対運動にしぼって取り上げています。

 

鎌仲: 「ミツバチの羽音と地球の回転」では、「次の選択肢を明確にしたい」と考えていました。祝島の場合は原発の問題が目の前に突きつけられていますが、それは日本の現状と入れ子状態になっていると言えます。祝島がいかにエネルギーの自立を目指そうとしても、原発を推進していこうという大きな波が日本全体に押し寄せているのです。

 

しかし、原発に頼らないエネルギーのあり方を実践している国や地域があるのも事実です。スウェーデンがその答えの一つなのですが、実はローカル・エネルギーは世界中のどこでも実現できて、日本にもものすごいポテンシャルがあるのです。私は、その感覚を日本人にも持っていただきたい。「ローカル・エネルギーの可能性」はまさしく私のテーマと言えます。

 運動を続けるにはバランスが重要

──山戸孝さんのお父様でもある山戸貞夫さんは、これまで長年にわたり反対運動の中心的役割を担ってこられました。祝島での反対運動はどのように起こっていったのですか?

 

山戸貞夫さん(以下敬称略): 中国電力の上関原発建設計画が始まった1982年当初、中電はまず、祝島を含めた建設予定地周辺の住民たちを視察旅行に無料で招待するなどして、「買収」していきました。田舎の人間は義理堅いから、内心は原発がイヤだと思っていても、「お世話になったから建設反対などできない」というように態度を変えてしまう。

 

ところが、祝島の場合、漁協の婦人部のメンバーが四国旅行に招待されて伊方原発(愛媛県西宇和郡)を視察した際、あまりにも原発構内がきれいすぎる、立ち入り禁止の場所が多すぎる、と違和感を覚えた。「何かがおかしい」と。そこからお母ちゃんたちが明確に原発に反対するとなると、お父さんたちも反対せんとねえ。

 

──人口約500人、65歳以上の高齢者が約70%という典型的な過疎の地域で、島民の9割が今現在に至るまでの28年間、原発建設を阻止しようと闘いを続けていますね。みなさんがここまで運動を続けられる原動力とは?

 

山戸: 自分たちが住んでいる地域で人生を全うしたい、つまりは島が好きなんじゃろうね。祝島の場合は、朝日が昇る方向、島の真正面に原発が建つことになり、漁でも毎日原発を見て暮らすことになるわけだから、反対に動いていったのは自然なことでした。

こんなに小さな島ではありますが、島民はとてもよく勉強していると思いますよ。これまでにいろいろな学者、研究者、スリーマイルやチェルノブイリからもゲストを呼んだ。20年前にはデンマークから風力発電の専門家を招いて勉強会をしていたくらいですから。

 

──とはいえ、長年に及ぶ反対運動は、非常に厳しく、ご苦労もされたのではないでしょうか。

 

山戸: 反対運動の原則は、絶対に無理をしないこと。あくまでも生活が大事。自分の生活を守るために反対運動をするのに、反対運動のために生活がつぶれてはいけません。そして、みんなで情報、意識を共有すること。デモももう1000回を越したけれども、おばちゃんたちがチャラチャラと、世間話をしながら続けていく。同じ島の人でも、反対運動のボルテージは1から100までそれぞれ違います。どこでバランスしていくかが大切なのです。

山戸貞夫さんプロフィール:山口県上関町町議会議員、上関原発を建てさせない祝島島民の会会長。上関原子力発電所建設反対運動で中心的役割を担っている

山戸貞夫さんプロフィール:山口県上関町町議会議員、上関原発を建てさせない祝島島民の会会長。上関原子力発電所建設反対運動で中心的役割を担っている

奇しくも反対運動が地域の人々を磨いていった

インタビューは和気あいあいとした雰囲気で行われた。お二人の信頼関係が伝わってくる

インタビューは和気あいあいとした雰囲気で行われた。お二人の信頼関係が伝わってくる

 

──祝島の反対運動が、日本の原発反対運動の生命線とも目されていますが。

 

山戸: 島の人たちは、自分たちがそんな大それたことをしているとは思っていない。普通の生活を普段通りやりたい、と願っているだけ。ある意味、原発問題のおかげで、祝島は磨かれていったのかもしれません。もしそれがなかったら、ほかの離島や限界集落と同じ運命をたどっていたはずじゃから。

 

鎌仲: 映画のなかでも島民が言っていますが、自分たちが先人たちから島を引き継いでいるのに、自分たちの代で島の環境を壊すことはできない、と本気で考えています。日本中の誰しもが同じことを思っていても、28年間も実際に行動を続けてきた祝島の人たちは、やはりすごい。

 

──今後、反対運動はどのように展開していくおつもりですか?

 

山戸: 我が家に太陽光発電を導入しました。風力発電なども島のなかで広げていけば、エネルギーを自立できる可能性がある。反対運動は、単に原発建設を反対するだけでなく、今の島と海を残していくことが大前提です。そのきっかけの一つとして、今クローズアップされている生物多様性をバックアップしたい。

 

──大変なことのはずなのに、明るい未来を予感させるのが、この映画のすごいところです。

 

山戸: もちろん、反対運動は、今後も粘り強く、妥協しないで続けていきます。「絶対に諦めないという姿勢を崩さない」。映画のなかでも言っていますが、社会情勢が追いつくまでの先延ばし作戦なのです。

 

今後、映画をきっかけにいろんな人が島を来訪するでしょう。現にシーカヤッカーたちはひじき漁の応援をしたり、住み着いて農業を始める人も出てきました。そのような交流が盛んになれば、島は明るくなります。原発反対運動で疲れた島ではなく、元気な島になれるかな、と。

 

鎌仲: 私たちの生活は、何億年もかかってできた石油を一瞬で使ってしまうような文明のうえに乗っかっていて、さらにそれにウランを足して莫大なエネルギーを使うという異常さの上に成り立っています。こんな生活はもう長続きしないということははっきりしています。スウェーデンの人たちはそれをわかっていて、脱原発という現実的な選択をしたにすぎないのです。

 

この映画のなかでは、生物多様性も、原発も、エネルギーも、地域の自立も、すべてつながっています。映画をきっかけに、原発がなければこの国の生活が成り立たないというマインドセットをはずし、変えていくことが私の役割です。

 

──ミツバチがぶんぶんと羽音を響かせながら、日本全体に自主上映の波が広がり、そこから地域の再生につながる可能性もありますね。今作の広がりに期待します。ありがとうございました。

 

##取材を終えて……(一言)

 

青森県六ケ所村の核燃料サイクル施設の是非を問う鎌仲監督の前作「六ケ所村ラプソディー」は、全国でたいへん多くの人・団体によって上映されました。坂本龍一さんやUAさんを始めとするミュージシャンや、多くの環境活動家らとともに、エネルギーの未来、持続可能性について考える大きな社会運動のムーブメントの一翼を担ったのは記憶に新しいところです。

 

今作で扱う「エネルギーの自立」のキーとなるのが、原発の振興策に頼らない強い地域経済づくり。祝島であれば、ひじき、びわ茶、そして海の生物多様性です。エネルギーを考えることが、地域にしかない「宝」の発見につながり、人々を磨いていく……。祝島の今後に注目し続けることが、私たちの未来のエネルギーを考える最たる近道かもしれません。

 

なお、この記事は、「人、地球、環境を伝えるビジュアルニュース ジアスニュース」(アクティブリンク → http://theearth.275.jp/)の連載「顔の見えるエネルギー 〜 ロコエネの種をまこう」(http://theearth.275.jp/features/201006/11170633.php)でのインタビューを森ノオト向けに再編集したものです。森ノオトへの掲載を快く応じてくださったジアスニュース編集局、鎌仲ひとみ監督に感謝申し上げます。

 

 

Information

鎌仲ひとみ(かまなか・ひとみ)

 

映像作家。早稲田大学卒業後、ドキュメンタリー映像の道へ。1990年に最初の作品「スエチャおじさん」を監督。同年文化庁の助成を受けてカナダ国立映画制作所へ。2003年にドキュメンタリー映画「ヒバクシャ 世界の終わりに」を監督、国内外で受賞。2006年「六ケ所村ラプソディー」は国内外650カ所で上映された。明治学院大学、国際基督教大学、津田塾大学で非常勤講師も務める。玉川学園在住。

 

ミツバチの羽音と地球の回転 オフィシャルサイト

(全国での上映情報はこちらでご確認ください)

http://888earth.net/

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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