第15回:節電の夏、根っこからのスーパークールな生き方を!
丸の内Super Cool Biz 丸の内井戸端会議「涼しい生き方」を語り合おう

東日本大震災、東電福島原子力発電所の事故以来、もはや国民的キーワードとなった「節電」。特に梅雨入り、梅雨明けが早く猛暑が心配されてきた今夏の電力需要が乗り切れるかどうかが我々日本人の最大の関心事に上っている。

工場などでの輪番休業や土日出勤でピークシフトへの対策が進み、駅や商業施設などでは照明を落とし冷房の設定を高めにするなど、国民挙げての涙ぐましい努力が続いている。オフィスワーカーたちがネクタイをはずし、ジャケットを着用しない涼やかな服装を指す「クールビズ」は、接頭語に「スーパー」を掲げ、夏の労働時間を少しでも涼やかに過ごすためのワークスタイルそのものを示す言葉に進化した。

日本のクールビズを先導する実践を行っているのが、大丸有近辺のオフィスワーカーたちだ。7月19日、東京駅にほど近い三菱ビルM+において、「丸の内井戸端会議」が開催された。東京商工会議所が主宰するエコ検定に合格したエコピープル約50名が集まり、節電の夏における「涼しい生き方」を語り合う試みだ。

リーディングトークは財団法人地球環境財団理事長の嶋矢志郎氏が「涼しい生き方を考える」をテーマに行った。嶋矢氏は「私の考える涼しい生き方とは、清楚で、瑞々しく、爽やかな生き方のこと」と話し、前半では清涼感を科学する、後半は「3.11が促した文明シフト」について語った。

清涼感を生み出す行為として代表的なのは、「打ち水」だ。打ち水が涼しいのは、熱い地面に水をまくと水が気体に変化する時に熱を奪うためだ。嶋矢氏は「セメントやコンクリート、アスファルトなどの人工物が水と土の間の親和性を裂いた。今こそ先人が築き上げてきた化学的な生活の知恵を取り戻すべき」と指摘した。

 

 

続けて嶋矢氏は、せせらぎに涼気を誘われる効果として、最近注目を集める「1/fゆらぎ」効果や、フィトンチッド効果の高い緑陰に心身を癒される効果についても説明した。嶋矢氏は「五体五感で成り立つ人間のあらゆる機能に1/fゆらぎが存在する。また、人間は元来森の動物である。人間の五体五感は森の中の構造によって成り立っている。3.11を経た今こそ、私たち人間は、緑と土と水に満ちた森に行き、先人の知恵を思い出しつつ、清涼感を得ていくべきである」と力説した。

そのうえで、「3.11東日本大震災によって、科学技術や近代文明の前に人間はどれほどもろい存在だったかが明らかになった。今こそ、量から質へ、物から心へ、利己から利他への精神を取り戻すべき」と提案した。

 

 

休憩のあとは軽食をつまみドリンクを飲みながらのワールドカフェ形式で、参加者同士が語り合うワークショップが行われた。各テーブル4、5人ほどにわかれ、3つのテーマについて語り合った。ファシリテーターは愛・地球博のプロデューサーを務めた小川たくのり氏。

第一のテーマは『今回の電力不足によってどんな体験や経験をしましたか? していますか?』というもの。あるグループでは、オフィスの照明をすべてLEDにしたという話や、テナントでの照明をハロゲンランプからLEDに交換して電気代が大幅に下がった話、また家庭での調理に際に炊飯器や電子レンジの使用をやめ、鍋での調理も余熱調理でガスを節約するなどのアイデアが聞かれた。「節電、節電と言われるが、我々はどこまで我慢すればいいのか」という声もあがった。

 

 

第2のテーマは「東日本大震災以降の社会の変化について、どう考えていますか? 何を感じていますか?」というもの。グループを変えて新しいメンバー同士で話し合った。

自分の生き方、ビジョン、ライフプランを考え、人生を見つめ直したという人がいたり、先が見えない不安を感じた人、あるいは被災地にボランティアに行って人々が協力し合う姿に勇気をもらったという若者もいた。

また、東電福島原発事故が人々の暮らしや考え方に大きな影響を及ぼしていることも明らかになった。例えば放射能汚染への不安や、どの情報が正しいのか見極められないことへのいらだち、政府や東電の対応に対する不信感などの声が聞かれた。

大震災発生時の企業の行動について話題になったグループもあった。例えばある百貨店では帰宅難民者を積極的に受け入れ評価を受けたが、これは現場での判断がとっさに働いたのだという。震災時のマニュアルをつくっていたが、実際には有効に活用できなかったという企業もあったという。

 

グループを移して最後のテーマ「この夏の涼しいワークスタイルや涼しい生き方を考えましょう!」について語り合った参加者たち。

発熱時に使う冷感シートを首筋に貼って仕事をするととても快適だという声や、ネックストラップに涼しげな香りのするアロマシートをかけるとよいというアイデアが聞かれた。一方、クールビズでネクタイをはずすのは確かに気持ちがいいが、シャツをズボンの中に入れるスタイルは相変わらずなので、胴体に空気が通らず涼しさをそれほど感じないという男性の声もあり、「シャツをズボンに入れないアロハスタイルやかりゆしウェアが日本のビジネスシーンに浸透するにはまだまだ時間がかかりそうだ」という結論に至った。また、女性からは「ビジネスマナーの観点から、女性のクールビズはどこまでが許されるラインなのかわかりづらく、結局は暑苦しい恰好から解放されない」という声も聞かれた。

また、家の中のモノを減らすと風通しがよくなり心地よく暮らせるという声や、江戸時代の暮らしの知恵に学びたいという声もあがっていた。

 

 

最後に、参加者一人ひとりが、手渡されたうちわに自らのスーパークールビズ宣言を書き込み、写真撮影を行った。

「涼しいところに移動しながら過ごす」

「着物は涼しい」

「風情を感じる」

「夏を好きになる!」

ワールドカフェ形式のワークショップで、それぞれが考え、自分の考えを口にして、それを宣言し、実行に移していく。そのプロセスが垣間みられた「丸の内井戸端会議」。それぞれのクールビズ宣言を周りの人に伝え影響が広がっていけば、クールビズは一つのスタイルや流行から、日本人の新しい価値観や生き方の創出にもつながっていくはずだ。

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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