農業で人と地域とつながる。社会福祉法人グリーン
昨年11月に開催されたくさんの人でにぎわった、森ノオトマルシェ「あおばを食べる収穫祭」。多くの飲食ブースの中で、美味しいうどんを提供していたのが社会福祉法人グリーンでした。私たちのカラダを温めてくれたうどんが、障害のある方が働く畑の小麦からつくられていると知って、お話を聞きに行ってきました。(Text:中島美穂)

社会福祉法人グリーン(以下、グリーン)は、主に知的障害のある方を対象にした障害福祉サービスを行なっています。活動の中心になっているのが、農業と、おにぎりやお惣菜販売で、障害を持つ40人の利用者が従事しています。

私が青葉区すみよし台にあるグリーンにおじゃましたのは、農閑期である1月下旬のことでした。

「今の時季は直売所にあまり野菜はないのですが、畑仕事は毎日しています。よかったら遊びに来てください」とグリーンの施設長・宮本和也さんに言っていただいて、最初に向かったのが、事務所のある「第1グリーン」隣の「第3グリーン」でした。ここは地域の空き店舗を借りた調理場で、おにぎりやお惣菜をつくっています。

 

調理場にはおいしそうな匂いがたちこめていた。この日のおにぎりは、甘辛く煮た油揚げの混ざったきつねごはん、自家製のゆかり入り、こんがり香ばしく焼き上げた和チーズの3種類。お米はグリーンの田んぼでとれたもの

 

この日作業していたのは、おにぎり班といわれる3人の方と、2人のスタッフでした。3種類のおにぎりが手際よく包装され、正確に重さを量ったお惣菜が並んでいました。

グリーンでは週に3回、このおにぎりとお惣菜を青葉区内にある横浜国際福祉専門学校と田奈高校の教職員に販売しています。この日は専門学校での販売日で、私が行ったのは出荷直前の忙しい時間でした。

黙々と作業していたのは自閉症の方でしたが、おにぎりを型に入れて押し出す作業が得意で、施設スタッフよりも手際がよく上手なのだそうです。

「販売をとても楽しみにしているんですよ」とスタッフの方が話してくれたように、ウキウキとテンションが上がっている利用者の方もいて、私もつい笑顔に。和気あいあいとした職場でした。

 

“千切りの達人”と言われる女性の小気味よい包丁の音が響く。「調理班の食事はとてもおいしいですよ」と宮本さん

 

次に宮本さんに案内していただいたのは、直売所と調理場のある「第2グリーン」とよばれる建物でした。利用者とスタッフ全員(最大60人分!)のお昼ごはんをつくっている真っ最中で、調理班のメンバーは大忙しでした。

この日のメニューは、魚のホワイトソースがけ、ポテトサラダ、ごはんと味噌汁で、グリーンの畑で収穫した大根とねぎ、じゃがいも、人参を使用していました。

その中のおひとりは、私がとてもかなわないようなスピードでじゃがいもを細かく刻んでいました。スタッフの方に「千切りの達人です」と紹介された彼女の、自信に満ちた表情が印象的でした。

 

通称「鴨志田畑」。大切な堆肥運びの仕事中。最初はコンテナに堆肥を入れるのが難しかった方も、次第に上手くなっていく

 

そしていよいよ畑に向かいます。事業所から車に乗っておよそ5分で、通称「鴨志田畑」に到着しました。私もなじみのある緑豊かな寺家ふるさと村のすぐ近くです。およそ8反(80アール)あるという畑の広さに驚きました。

農閑期といえども、大根や玉ねぎ、白菜、芽キャベツ、ねぎなど、たくさんの野菜が育っていました。農薬は使わずに、年間30から40種類もの野菜をつくっていて、田んぼも3カ所あります。

小麦もこの畑で育てています。収穫された小麦を粉にして、うどん(町田の製麺所で麺にしてもらいます)やスコーンをつくり、地域のバザーなどで販売しています。自分が食べたうどんの元になった小麦畑が見られるなんて、貴重な機会ですよね。まさに地産地消です。

たくさんの野菜がとれる畑では、自家製の堆肥が使われています。地域の木くずリサイクル業者のウッドッチップと、玉川大学の農場の牛糞、グリーンの調理で出る生ごみを混ぜ、発酵させています。

この時期の主な作業は、この堆肥の“切り返し”。堆肥の山から別の場所へ山を移動させることで発酵を促します。畑班のみなさんがコンテナに堆肥を入れ、何度も往復して運んでいました。

「利用者が自分で考えて動くために、僕たちはなるべく手を出さないようにしています。みんな自分の役割をわかっていて、仕事に誇りを感じているようです。グリーンに来て農作業をするようになってから、見違えるように表情が変わる方もいますよ」と宮本さんは話します。

室内での作業が苦手な方が、ここではのびのびと仕事をするようになることも多いのだだそうです。

おにぎり班や調理班、畑班で作業する人たちの表情から、人のために役立てることや自分の仕事があることが、自信や誇りにつながっていることを改めて教えられたような気がします。

 

芽キャベツがたくさん! 元は県の職員だったボランティアの男性と一緒に利用者の方が収穫していた。ボランティアの方が「よく見つけたね! たくさんとれたね!」と優しく声をかけている様子が印象的だった

 

毎年11月、鴨志田畑では収穫祭を催し、地域の方を招いて、芋煮やカレー、焼き芋をふるまい、野菜の収穫体験など一緒に楽しみます。

「以前は畑で大声をあげてしまう利用者や、堆肥の匂いで苦情がくることもありました。そこでグリーンが地域のお祭りに参加したり、地域の方にも参加していただけるよう収穫祭を催すなど、積極的に地域のみなさんに活動を開いていくことで、今では理解も深まり、よいコミュニケーションがとれるようになりました」と宮本さん。

農業を介して、障害を持つ人と地域で暮らす人々がつながっていく。グリーンのキャッチフレーズにある“人と人の間を耕す”そのものだと感じました。

私が何気なく「地域には障害のある人も無い人も、おじいちゃんおばあちゃんも、子どももいる。みんなが普通に一緒にいられる街がいいな」とつぶやくと、宮本さんが大きくうなずき、「ノーマライゼーション(障害のある人も無い人も一緒に当たり前に生活できるような社会こそがノーマルであるという考え方)」という言葉を教えてくれ、「まさに!」と、ひざを打つような思いでした。それは、以前、藤が丘商店会が開催した「ココロのバリアフリー講演会」を取材したころから、私がぼんやりと理想に描いていた地域のあり方だったからです。

宮本さんに、今後の夢を聞いてみると、「畑の近くに1つの大きな施設がつくれたらいいですね。グループホームや調理場など、現在は点在している拠点が1カ所にまとまれば、利用者の移動の負担が少なくなります。また、グリーンの野菜が食べられるレストランや加工品工場などもできれば、これから高齢化していく利用者の能力に合わせた多様な仕事も生まれます」と話してくれました。そして、これからももっと地域のみなさんにグリーンのことを知ってほしい、地域とつながっていきたいとも。

宮本さんの夢は、街の理想でもあると感じました。微力な私には何ができるかわかりませんが、この日の出会いは大切に、つながっていきたいなと思いました。これからのグリーンの取り組みに、注目していきたいと思います。

 

最後に横浜国際福祉専門学校の販売にもおじゃました。学校の職員の方も生徒さんも販売を楽しみにしている様子。私もいただいたおにぎりとお惣菜は、とってもおいしかった!

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