これからも、ずっと、我らが街のパン屋さん! ベッカライ徳多朗
地元のみならず、パン好きの間では全国区の名店・「ベッカライ徳多朗」。リポーターであるわたし・清水朋子も、20年程前にお店を訪れて以来、すっかりとその味の虜になり、いつしかオーナーでもある徳永さんにお話をうかがいたいと思っていました。今回は、元石川店(たまプラーザ)を切り盛りする奥様の徳永久美子さんを訪ねました。

パン屋を営みはじめてから、今年で24年目を迎える「ベッカライ徳多朗」。次々とお客さんが訪れる店内では、カウンター越しに丁寧に接客をしながら、声をかけ合うスタッフの明るく元気な声が響き渡っています。この対面販売方式は、今でこそ多くのパン屋さんが取り入れていますが、徳多朗が先駆けとして開店当初から変わらずに続けている「こだわり」のひとつです。

 

一人ひとりに話かけながら、対応していくスタッフたち。お勧めのパンの話などを聞いてしまうと、買わずにはいられなくなる……

会話をしながら販売することで、お客さんの好みもわかり、そこから新しいパンが生まれたことも多々あるとのこと。また、「ご近所の方から、『パンを食べなかった主人が、ここの食パンを食べてから食べるようになったのよ』などと聞くと、自分たちパン屋の必要性を感じることができて本当にうれしい」と、久美子さんは話します。

 

大きな樹のある広々とした空間には、テーブル席とカウンター席が並ぶ。壁に飾られている絵画は、スタッフの方が描いたもの。木、白壁、自然をモチーフにした絵画、そしてパンの焼ける香りが漂い、この上なく幸せな空間

 

こうした販売方法もさることながら、店の大きな魅力のひとつは、お客さんとの会話を楽しみながらテキパキと笑顔で働くスタッフが大きいように思います。この点について久美子さんにうかがうと、やはり一番力を入れているポイントが接客であり、また、こうした接客に共感する人が自然と集まってきてスタッフとして働いているというから不思議です。

 

「いくらパンが美味しくても、また来たい! と思える店でないと嫌になってしまうでしょ? 例えるならば、子どもがお友達の家に遊びに行った時と同じなんですよ。そこの家のお母さんが『また遊びに来てね!』と笑顔で応じてくれたら、子どももまた行きたいな! と思うもの」と、納得のご意見。

 

徳多朗を陰で支えるスタッフの皆さん。お互いに声をかけ合い、手際よく働く姿にチームワークの良さが垣間みられる。「スタッフには助けられてばかりで……」と久美子さんはいう

 

そして、徳多朗の最大の魅力は、やはり「パン」です。小麦粉という素材のうまみを最大限に引き出したシンプルなものから、惣菜パンやサンドイッチなどの自家製のフィリングを加えた調理パンに至るまで、そのどれもが心からおいしいと思えるものばかりです。フィリングのアイデア源は、徳永家の日々の食卓から生まれるといいます。「日常」から、自分たちが食べておいしかったもの、食べたい! と感じるものをパンにしているとのこと。

 

徳多朗の顔ともいえるほどの人気商品、「角食パン」。棚には予約待ちの商品がいつもずらりと並んでいる

 

久美子さんの著書。パンやお菓子についてだけでなく、日々の徳永家の食卓にのぼる惣菜や作り置きレシピなどがたっぷりと掲載されている

 

パニーニとスープのセット。定番のものから、旬の素材を生かした日替わりメニューまで幅広い。写真は、チリコンカンのパニーニと人参のポタージュ。素材の良さに、ハーブやスパイスが入り混じり、オリジナルティに溢れている

 

現在、久美子さんが特にはまっているのが、南フランスが発祥のPAIN DE LODEVE(パン・ド・ロデヴ)といわれるパンです。ルヴァン種を使い、吸水の多い生地から仕上げるロデヴは、外はパリッ、中はしっとりと水分を含んだハード系のパン。日本中にこのパンを広める目的で、「パン・ド・ロデヴ普及委員会」という組織が立ち上がり、久美子さんも「作るよ会員」としてこの会を支えています。「このパンは日本人にとってはごはんのような感覚で、きっといろいろなことができるはず」と、目を輝かせて語ります。徳多朗にロデヴが並ぶ日も近いはず。今から楽しみです。

 

最後に、徳多朗のこれからについてお聞きしました。

「私たちは、開店当初から、基本的にはご近所の方に喜んでもらえるように、おいしいものを提供したいという想いがあります。来てくださる方が飽きないように新しいものを提案する一方で、これまでつくり続けてきた定番のパンもずっと大切にしていきたい。“つづける”という行為は、一般的には、つまらないことなのかもしれないけどね!」と笑いながら話す久美子さん。しかし、その表情はとても自信に満ち溢れていました。

 

粉のついた服を身にまとい、カラッとした笑顔の久美子さん。スタッフへ指示をだしながら、手元は常に動かし、はつらつと働く姿は、まさに「お母さん」のような存在

 

わたしが徳多朗のパンに出会ってから20年ほど。「ここに来れば、必ず、季節のものとおいしいパンが食べられる!」という安心感にも似た気持ちで、まるで吸い寄せられるかのように日々、訪れていました。今回、久美子さんにお会いし、その人柄にふれ、徳多朗を創り上げている人たちの朗らかで温かい雰囲気を感じ、増々、お店が大好きになりました。

 

また、“つづける”ことで、わたし達の心にしっかりと信頼感を築きあげてきているように感じます。これからも、新しい商品を生み出しながら、これまで通りにパンを焼きつづける、私たちの「街のパン屋さん」でいてほしいと、心から願っています。

Information

ベッカライ徳多朗(元石川店)

〒225-0004 神奈川県横浜市青葉区元石川町6300-7

TEL/FAX 045-902-8511

OPEN 7:00-18:00 火曜、水曜定休

ベッカライ徳多朗(Yotsubako店)

〒224-0003 神奈川県横浜市都筑区中川中央1-1-5

TEL/FAX 045-913-3200

OPEN 9:00-19:00、7:00-19:00(土・日・祝祭日) 水曜定休

◆パン・ド・ロデヴ普及委員会

http://lodevepain.org/shop_info.html

※ こちらのページの「美味しい食べ方」には、徳永久美子さんのちょっとした簡単レシピが載っています。お試しください♪

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この記事を書いた人
清水朋子ライター卒業生
食べること、つくること、ワインとチーズ、焼酎を愛する食いしん坊。雑木林のような豊かな庭、愛するアンティークに囲まれた自宅の一角で、集会所+ときどき、喫茶として「Glänta(グレンタ)」を主宰している。小さな家の隅々まで愛おしみ使い尽くす、センスのよい暮らしぶりが注目を集める。
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