学びは冒険!ラーニング・クエスト天田武志さん「勉強の前に大事なこと」
ゲームやアートのような教材に魅かれて、私が最近ちょこちょこ参加して楽しんでいる「大人のためのフォイヤーシュタイン教室」。主宰の天田武志さんは主に発達障害のこどもたちを対象にした教室「ラーニング・クエスト学習センター」をあざみ野で運営しています。大人もワクワク熱中させられるプログラムの一端をご紹介します。

ラーニング・クエスト学習センターでは、国語、算数、理科、社会といったいわゆる「お勉強」の前に必要なこと、教科学習の基礎を支える体と心、考える力を育むことを目的としています。クエストは探求、追求と、その道のり、冒険の旅などを意味し、フォイヤーシュタインIE(Instrumental Enrichment/認知能力を強化する教材)をはじめとして、子どもたちが「学び方を学ぶ」教室です。

ちなみにフォイヤーシュタインとは、ルーヴェン・フォイヤーシュタイン先生の理論によって作られた教育法のことで、イスラエルのエルサレムを本部として、ヨーロッパだけでなく南米などでも取り入れられています。日本では2000年夏に先生の著書『このままでいいなんていわないで!』が翻訳されたことを機に、3年の準備期間を経て、神戸に、フォイヤーシュタイン・ラーニングセンターというNPOが設立されました。

教室兼事務所の、あざみ野駅近くのマンションの一室にて。今秋完成した教室のパンフレットを持つ天田さん

もともとは医薬品メーカーで研究職についていた天田さんですが、自分が面白いと思ってフォイヤーシュタインを学んでいるうちに、ついに脱サラして教室を開いてしまったという、予想しなかった人生が展開しはじめました。「学びは冒険」をまさにご自身で体現しています。

かくいう私も、天田さんがfacebook上であげている教材が面白そうだと前から気になっていたところ、「大人のフォイヤーシュタイン教室」が不定期で始まって、その楽しさと深さにはまってしまいました。

フォイヤーシュタイン先生はルーマニア生まれの教育心理学者。イスラエルの心理教育部門の責任者として、第二次世界大戦後、ホロコーストを逃れ、発達や学習につまづきを抱えた多くの青年、孤児たちと関わったことから研究を深め、独自の教育プログラムを生み出した

教材はだいたい一枚の紙にまとまっている。見本を見て、同じ形を再現したり、点と点をつないで図形を書いたり、空間中で方向を把握したり、特徴を見分けて分類したりと、いくつかのジャンルと難易度があり、その子、その場に合わせて選ばれる

 

こうした教材は、ただやみくもにやるのではなく、ちょっと立ち止まってまず解くための方針をたててから取り組んだり、なぜ出来たのかを後で説明したりするプロセスがとても重要で、かならず媒介者(つまり先生)を通して学ぶことが大事だとされています。つまり、テキストだけ買って一人でやっても身につかないわけですね。

実際教材が切り売りされることはなく、大人のフォイヤーシュタイン教室でも参加者が取り組んだシートは毎回回収されて、人別にファイリングして、その人が見たいと言った時には見せられる状態に保管することがルールになっています。学校の成績表や親の日記などとは違う、自分の頭や体の使い方の成長の記録が残っているというのは、なんとも楽しいし、嬉しいことだと感じました。

また、衝動性や自閉的傾向をもっているという自覚のある私は、その理論や教材が本当によくできているなあということを実感しています。

フォイヤーシュタイン先生の著書のタイトルとなっている、『そのままでいいなんていわないで!』という言葉もじーんと響くいい言葉です。たくさんの理解されなかった子どもたちの声がぎゅっと濃縮されていながら、希望が感じられます。

そもそも文字を読むのが困難だったり、集中できない、緊張している子どもには、ポール・デニソン博士考案の「ブレインジム」という、かんたんな運動から入る。これは横方向に8の字を描く手を、目で追うという動き。首を動かさずに目だけを動かすのがポイント

こちらは「ブルムベルグ・リズミックムーブメントトレーニング」のカエルの足の動きを真似るようなポーズ。赤ちゃんの時に十分に行っていなかったために残っている原始反射という動きを、やりなおして統合する。無意識にでてしまう反射的な行動をちょっとずつ鎮めて落ち着けるイメージ

 

天田さんが、知り合いを通じて知り、最初に学んだのはブレインジムでした。考案者のポール・デニソン博士は自らがディスレクシア(文字がゆがんだり、二重に重なったり、うずをまいたり、反転したりして見えてしまうため、そもそも本を読むことができないこと)で、それを自分でいろいろ実験しながら克服してしまった方です。天田さんはディスレクシアではありませんが、その運動は普通の人が行っても学びを促進する効果があります。

その後、フォイヤーシュタイン先生とその教育法を知り、さらにその前にも必要なことがあるなと思って探したら、ブルムベルグ先生のリズミックムーブメントと出会いました。その3つを組み合わせて行なえるのが、ラーニング・クエストセンターの特徴なのだそうです。

「最初できなくて興奮したり泣いたりしてしまった子や、まっすぐ座っていられない子、学校の教室で授業に取り組めずフラフラしてしまっていた子などが、かんたんな運動や、ゲームのような教材に取り組むうちに、これから何をするのか、今何をやっているのかを理解できるようになり、集中して自分の力で分かるようになっていく姿をみるのはやはり嬉しいですね。できるようになるまで待つことの大切さを感じます」と天田さんは言います。

発達の状態は、ベッドに仰向けに寝たり、その状態で頭だけ持ち上げたり、四つん這いになったりと、ごく簡単な姿勢をとるだけで分かるそうです。それができない、例えばまっすぐ仰向けになれず、くの字になってしまうとか、頭が持ち上げられない、四つん這いになるときに手のひらを拡げられない子などがいます。そして、ただそれだけのことが意外な困難につながることも。そんなとき、何が起こっているのだろうと、一緒に考えてくれる人がいるのは頼もしいですよね。

私も、四つん這いになったときに肘の表側の向きが前になってしまうとか、仰向けになったときに足首から下の開き具合が狭いとか、いくつか反射が残っていることがわかり、ハイハイする前に赤ちゃんがする動き、遠くを見たり近くを見たりする前後の動きなど、それを統合する運動を教えてもらいました。しばらくやってみて、今は少しさぼってしまっていますが、効果はかなりありそうです。

もし、学校での学習についていけないとか、能力はあるのに対人関係や学習につまずきを感じているお子さんがいて、行き場を探している方は、教室に直接問い合わせてみてくださいね。

Infomation

ラーニング・クエスト学習センター

神奈川県横浜市青葉区あざみ野1‐7‐6-408

http://www.manabi-bouken.net

info@manabi-bouken.net

梅原 昭子
この記事を書いた人
梅原昭子理事/事務局長/ライター
難しいものをおもしろく、かたいものをやわらかく翻訳し、絵で表現できる編集者。市民電力会社「たまプラーザぶんぶん電力」の社長になってしまうが、エネルギーの世界にも飄々とたゆたう視点で、こんがらがった世界を解きほぐす。アートユニット「WAKUSEI/ワクセイ」として縦横無尽に活動中。
カテゴリー