季節の花あしらい第1回 「チューリップ」
「春」と聞いて浮かぶ花のひとつが、チューリップ。切り花として市場に出回るのは、なんと12月頃から。しんしんと凍える早朝の市場にその姿を見つけると、まだまだ遠い春に想いを馳せ、心だけはふと温かくなるように感じます。

チューリップの和名は「ウッコンソウ(鬱金草)」。

鬱金とは「鮮やかな黄色」を意味するそう。

北アフリカ〜地中海沿岸〜中央アジアで咲いていたと考えられており、15〜16世紀頃にヨーロッパに持ち込まれてから、上流階級で熱狂的なブームが起き、品種改良が多く行われたそうです。

品種改良を重ねた園芸種は、かつては8,000種もあったとか。

日本では2,000種以上が品種として登録されており、そのうち生産されているのは150種前後だそうです。

生産地では新潟と富山が有名です。

シーズンともなると、全国各地でチューリップのお祭りが開催されていて、じゅうたんのように遠くまで続く、赤黄ピンク、色とりどりの光景を楽しめます。

チューリップの咲き方には多くの種類がありますが、花屋でよく見かける咲き方はこの4種類。

・一重咲き:花被片が6枚でカップ型
・八重咲き:花被片が20枚近くありカップ型(もっと多い種類も)
・ユリ咲き:名前の通りユリのような咲き方。花被片の先端が細くなり外側に反り返る
・フリンジ咲き:花被片の周囲にギザギザで細かい切れ込みが入る

他にも、パロット咲きやスパイダー咲きなど、咲き方にも個性があります。

原種系のチューリップは園芸種のものに比べひと回り小さく、可憐で山野草のような雰囲気があります。

花言葉は「思いやり」。

色によって、本によっても異なりますが、特に赤色のものは「愛の告白」だそう。

今回はそんな魅力いっぱいのチューリップの水あげ方法とご自宅での飾り方のポイントを、わたくし板垣が、ご紹介いたします。

【【水あげ】】

花屋では、市場で花を仕入れたあともイキイキと咲き続け、長く楽しめるように、それぞれの花にあった「水揚げ(水あげ)」処理をし、再び水を吸わせます。

チューリップは他の草花よりも水あげ方法がシンプル。

お店で買ってきた場合は、よほどのことがない限り水が下がりませんが、万が一花首がだらんとしてしまっていたら、花首をまっすぐにして新聞紙や包装紙で全体を固めに覆い、切り口を花ばさみやカッターで切り、すぐに水を張った器に入れます。

切り口は斜めでなくても大丈夫です。

また、茎を水に入れながら切り戻す(水圧を利用する方法)が良いといわれますが、すぐに水に浸ければ問題ありません。

水の量は茎が全体の1/3くらい水につかる位で、多くなくても大丈夫です。

だいたい2時間位で、全体がピンとしてきます。

端からくるっとまく

輪ゴムがついていたら取り外す

包み方がゆるいと、首が曲がったまま水があがってしまうので、やや固めに

次に、下の葉を1〜2枚取ります。

葉が多くなるほど蒸散にパワーと取られてしまい、花が長持ちしなくなると言われています。

まずは剪定バサミや花ハサミで軽く(ポイント!)ぐるっと切れ目を入れます。

ハサミをくるっとまわします。力を入れすぎるとポキっと折れてしまうので気をつけて!

切れ目が入った状態

切れ目から、葉をキレイにとります。

切れ目を入れずに葉を取ることもできますが、切り口がボロボロとしたり、茎の表面を剥いでしまうこともあるため、ハサミを使って丁寧に取るほうがおすすめです。

少しずつ取る

こんな感じで取れる

土が入っていることがあるので、気になる場合は水で洗う

これで、飾る前に長持ちさせるための前処理が終わりました。

買ってきた花をそのまま飾っても問題ありませんが、葉を取ったり、切りもどす作業をすることが長持ちの秘訣にもなりますので、その時の状態をよく観察してみてくださいね。

【【生ける】】

わたし自身、花の飾り方に決まりはないと思っていますが、花が映える飾り方のひとつをご提案します。

チューリップのフォルムは茎のすっとやわらかいラインが美しいので、それを生かすような生け方がおすすめです。

大きなガラスの花器にざっくりと。花首が垂れる姿もチューリップならでは

茎の長いものは写真のように花首が垂れるので、口元が広がった花器の方が飾りやすいです。

チューリップは水が下がりやすい種類ではないので、花器の水は多くなくて大丈夫。少し白濁したら変えてください。

ただ、カーネーションやかすみ草などと一緒に飾ると、花自体も水もいたみやすくなるので、水が濁ったらその都度変えてください。

チューリップを観察していると、花首が陽を求めて花首が動いたり、花弁がふわっと開いたり、夜になるといつの間にか閉じていたり、茎がぐぐっと伸びたり……毎日違う姿をみせてくれます。

変化する姿も、チューリップを飾る楽しみのひとつです。

花器と花色を合わせて元気なビタミンカラーに。黄色のチューリップはめずらしい咲き方のスパイダー咲きの「モンテスパイダー」

飾る場所が暖かいと早く咲ききってしまうので、

長く楽しみたい場合は涼しい場所がおすすめです。

新鮮なものであれば、2週間は楽しめます。

ラタンの花器と、白×グリーンのチューリップを合わせてナチュラルな雰囲気に

空き瓶を一輪挿しに。葉をきれいに取り、茎の自由曲線が生きるように

チューリップは残念ながら水分が多いため、ドライフラワーには不向き。

飾っているうちに、花色が薄くなってしまいますが、枯れた! とすぐに捨ててしまうのはもったいない!

最後の最後まで、花弁がギリギリまでひらいて落ちそうな姿もまた美しいですよ。

その「名残の姿」をぜひ見てみてください。

慌ただしい生活の中で、花を生ける作業はなかなかとれないかもしれませんが、チューリップなら、たくさん買ってぎゅっとまとめてるだけでもよし、数本をラフに飾ってもよし、1輪でもよし……。花器に合わせて選んで飾るのもよし、ぜひ生活の中の楽しみとして生けてみてくださいね。

【【さいごに】】

そもそも私自身は、花とは全く関係ない仕事をしていました。

都会で肩肘張って必死に生きていた20代、ある時を境に心身を壊し、食べることもままならない日々が訪れました。

そんな折、癒しの時間を得るのが目的で通い始めたフラワーアレンジメント教室。

間違いなく「花」はギュッと固く小さくなった私の心を癒してくれました。

あっという間に夢中になり、結局、生け花や投入れ、和洋色々な花教室を渡り歩き、観葉植物や園芸の講習に通うまでに……。

最終的には、もっと知りたい! さわりたい! と気持ちが抑えられず、花屋に飛び込んだのが、花をなりわいにするはじまりでした。

現在自宅では、庭の伸びすぎたハーブや剪定したバラや、植えた草花を少しだけ拝借して飾っていますが、お店でも買える身近な花で、簡単に、素敵に見える飾り方を提案できたらと思っています!

板垣 恭子
この記事を書いた人
板垣恭子ライター
静岡県出身で四姉妹の長女。大学卒業後、デザイナーとして働きつつ花屋で修行。現在は子育ての合間に、その経験をいかせるような世界観を目指して制作活動中。森ノオトではジャーナリスト的な一面を見せ、硬派な記事も立派に書き上げる努力家でもある。
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