古代から未来へ。原始の火がつなぐもの。
人としてこれから身につけたいスキルの一つが「火おこし」。そんな私にうってつけ、とびきりの先生が町田市鶴川にいました。古代発火技術をはじめとする原始生活技術の研究家にして、民族音楽研究家、刃物研究家、武術研究家……ひとり博物館のような関根秀樹さんです。

関根秀樹さんは、ご自身の母校である東京都町田市の和光大学で、現在非常勤講師として週一回授業を行っています。肩書きはフリーの研究者でライターですが、自己紹介や仕事紹介をしはじめると1日では終わらない、無限に彩なす人生。名刺やスマホを持たず、インターネットの外側で飄々と生きている、都市に生きる仙人のようです。
 
人とモノ、人と道具、人と自然、人と動物、人と文明……、つまるところ「人はどこから来てどこへ行くのか」を研究しつづけている人、といえばわかりやすいでしょうか。
 
和光大学では、前期に民族音楽の授業、後期に火の授業を担当しています。
火おこしチャンピオンの異名を持ち、「インディアンに火おこしを教えたこともある」という関根さん。道具の革新と長年の経験により、最短3秒で火種をつくる記録をもっていると話していました。
 
火を畏れ、敬い、適切にあつかう知恵は、今後、どんなに時代が進んだとしても、生きるための基本として、また無上の楽しみのために、伝えていきたい技術の一つです。
 
ただ火をつけるだけであれば、ライターという便利な道具がありますが、すぐ燃料がなくなってしまい、本体自体が石油製品なので捨てるときになんともいえない空しさを感じます。そのため、わたくし梅原はマッチを愛用していますが、マッチは工業製品です。やはり、一から自分の手で火を生み出せるようになりたい。
そこで、関根さんに火おこしの実演をしてもらいました。

和光大学構内の野外ベンチの上でおもむろに火おこし開始。この「どこでも感」がたまらない。これが可能なのが和光大学の自由な気風でもある。関根さんに武術稽古を受けているお弟子さんが通りがかりに参加

この日は、弓切り式の道具をつかって二人組で火おこしをしました。1センチ厚ほどの杉材にナイフで窪みをつけ、ウツギなど中が空洞になった植物の枝を、その窪みにあてます。両手にもった紐を交互にひくことですばやく棒を回転させ、杉板とこすり合わせると10秒しないうちに黒い煤と煙が出てきて、火種ができました。

できた火種は杉板の下に敷いた葉っぱで受けて、麻ひもをほぐした繊維に移してつつむ


 

やわらかく丸めて、息を吹きかけ……


 

ぐるぐると回転させるとそのうち、ぱっと火がつく


 

いとも簡単に、現代の風景の中に、原始の技術で火が誕生した


 
「古代発火技術の研究は、師である岩城正夫先生が95%くらい解明してしまったので、わたしはその道具を少し改良したりするぐらいで、歴史とか他の技術の研究にうつりました」と語る関根さん。「昔の人は毎回大変苦労して火を得ていたというのは間違いで、縄文の人々も道具の研究をしていたと思います」という言葉にも説得力があります。
 
 
ここで少し時代を遡りますが、チェルノブイリの原発事故の2年後、1988年8月1から8日の8日間にわたり、八ヶ岳で行われた「いのちの祭り」を知っている方はいるでしょうか? 私はそのころ、まだぼんやりした小学生だったので残念ながら知りませんでしたが、フジロックなど、日本の野外フェスの前身、原型とも言われ、「No Nukes One Love」 をテーマに掲げて行なわれた伝説的なお祭りです。
 
ステージパフォーマンスだけでなく、反原発のためのシンポジウム、新しいライフスタイルに関するワークショップや映画上映が行われ、大手メディアや企業も関心をもち8000人以上の人が集ったと言われています。関根さんは、その呼びかけ人の一人で、原子の火に対抗して原始の火を起こしてティピーの中で3日間火を燃やし続け、ワークショップを行ったのだそうです。その話を事前に聞いていたので、今、眼の前で燃える火を見ながら、「いのちの祭り」から29年も経つのだな……と、ぐるぐると様々なイメージや想いが去来して言葉になりませんでした。
 
福島県出身で、小学生の頃から原発やダム建設に反対していた問題児(!)だったという関根さんは、高校3年で出会った、工業デザイナー秋岡芳夫さんの一連の本に感化されて上京します。
 
秋岡芳夫さんは、大量生産大量消費の社会に対し、森と人間の共生する社会を提唱して、消費者から愛用者へ、つかう人からつくる人へという考えを、いち早く実践し、多くの職人、工房、デザイナーを育てました。
 
関根さんは、秋岡さんのデザイン運動「モノ・モノ」に最年少で参加して、秋岡さんの仕事を手伝う中で、全国の手仕事の職人、クラフトマンたちと知り合い、自身も手でものをつくったり、教えたり、美術館や博物館で、木工や音楽のインスタレーションやワークショップをするようになったそうです。

ご自身でつくったスプーンや楽器のコレクションの一部。「学校では音楽も美術も苦手で成績は最悪。でも不器用だったから、逆にすごく憧れがあったんですね。こんな仕事をするようになったことに、同級生や両親が一番びっくりしています」


 
竹で作った楽器でその場で演奏がはじまったり、刃物に興味があると話をしたら、以前雑誌に書いたという文章をさっと持ってきてくれたり、最近私が最も気になっている武術家たちと長いつきあいがあったりと、引き出しがありすぎて、取材というより遊んでもらった私。この楽しみを一人じめしておくのはもったいないので、秋に関根さんを招いて「火」に学び、遊ぶ場を創りたいと思っています。小さな「いのちの祭り」の再現です。いっしょに、マイ火おこし道具をつくってみませんか?
 
別で記事を掲載しているソーラークッキング協会の鳥居ヤス子さん、糞土師の伊沢正名さんなどにも声をかけ、いのちの立場から環境を考える、自然とともに生きる知恵をつなぐ、ゆるやかな連続講座にする予定です。

「縄文人になる!」以外は図書館で借りたもの。関根さんを知るための書籍、関わった書籍を集めればゆうに100冊は超えるが絶版になっているものも多い。気になった方はまずは図書館へ

Information

関根秀樹さんの縄文生活講座

日時:20171029日(日)13:00-16:00

関根さんを招いて、火おこし道具をつくって、火おこしして焚き火をしたり、楽器をつくったり、里山で古代人になったつもりで遊びましょう。

参加費:

おとな:一般:2500

おとな:会員:2000

こども:一律1000円(小学生以上・乳幼児は無料)

定員:2030

会場:川崎市麻生区早野聖地公園里山ボランティアの活動場所(詳細は参加者にメールでお知らせします。聖地公園内に駐車可能)。

event@morinooto.jp宛に、参加人数、お名前(お子さんは年齢も)、住所、電話番号、をお書きの上、メールでお申し込みください。


参考資料

2001年の映像

夢をつむぐ人々(63) 古代は宝の山縄文の知恵

https://www.youtube.com/watch?v=37WJEp4azY8&feature=youtu.be

(この映像に出てくる研究室を見たかったのですが、現在は残念ながら部屋がなく、モノも分散してしまいました)

at home 教授対談シリーズ こだわりアカデミー

https://www.athome-academy.jp/archive/culture/0000000128_all.html

町田市ゆかりの美術家たち

http://home.wako.ac.jp/user/m-artist/2008/11/post-58.html#more

ヌンチャク歴も長い

https://www.youtube.com/watch?v=TEdsS0fs1F8

梅原 昭子
この記事を書いた人
梅原昭子理事/事務局長/ライター
難しいものをおもしろく、かたいものをやわらかく翻訳し、絵で表現できる編集者。市民電力会社「たまプラーザぶんぶん電力」の社長になってしまうが、エネルギーの世界にも飄々とたゆたう視点で、こんがらがった世界を解きほぐす。アートユニット「WAKUSEI/ワクセイ」として縦横無尽に活動中。
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