作物の栽培、体験農業、農業委員、料理講師、軽やかにチャンネルを切り替えて。〜野路幸子さん
「農家のお母さん発!横浜の地産地消を未来につなぐ体験講座」もいよいよ最終回。3/28(水)は青葉区田奈町の野路幸子さんを講師に、春の香り漂うよもぎ団子とすいとんを教えていただきます。野路さんのお宅に行き、お話を伺ってきました。(写真:齋藤由美子)

農業を営む青葉区田奈町の野路幸子さんのお宅に、森ノオトのメンバーでお邪魔しました。

 

田奈町には東急田園都市線田奈駅があり、スーパーや商店、住宅地がある一方、一級河川恩田川の周辺に畑が広がり、なだらかでのんびりとした印象の町です。

 

生まれも育ちも田奈町の野路さんは、この町の移り変わりを見てきました。

「この町に生まれ、66年住んでいますよ。まだね、田園都市線ができる前から。昔、田奈近辺では材木問屋が3軒もあってね、父は当時林業もやっていて、山から木材を運ぶための大きな牛を飼っていたの」。

 

約60年前のお話は今と違う光景が広がり、思わず聞きなおしてしまうほどの驚きでした。

町並みも変わりましたが、野路さんの家業も変わっていきます。お父様は林業から梨栽培にきりかえました。さらにお母様と野路さんのお二人が中心となった今、手間のかかる梨栽培をやめ、野菜、果樹や米など100種類近くの作物を栽培しています。

 

果樹の前に立つ野路さん。畑は全部で1町3反(約1.3ha)もつ

 

「母とね、けんかになることがあるの。農業にもいろんなやり方があるでしょう?」

 

野路さんは窓から見えるわずかな雑草を指さし、

「あれ、母には許せないみたいなの。私は新しい方法を試してみたくて、乾燥を防ぐから雑草を残したいんだけど……。それにのらぼう菜(神奈川県の在来野菜の一つ)の自然栽培からできた、こぼれ種が雑草に混じって芽を出しているんだけど、母は雑草と一緒に全部とってしまうの」と冗談めかしてつぶやきます。

 

「だけどね、母はあれくらいしっかりした考えがあるから、88歳になっても農業ができると思うの。母はお弁当と大きな水筒をもって、一日中畑に出ていくこともあるし、畑の雑草はすべて手でとっちゃうから草刈り機の出番もないしね」と農業の方針で対立することはあっても、お母様への敬意を口にする野路さん。歳を経ても確固たる自分の信念をもつお母様のお話から、今の野路さんの成り立ちも見えてくる気がします。

 

お邪魔したお宅の窓からは、みかん、柚子、レモン、金柑、ブルーベリー、ラズベリーなど、子どもの背丈ほどの果樹が見えます。これらの植えられたばかりの果樹は、将来、野路さんが主力として農業を担うときを見据えたものです。

 

「一人ではとても今のようにはやれないと思うから、体験果樹園をしようと思っているの」。

 

置かれている環境も時代も移り変わっていくなかで、その先を読んでいく目はまさにビジネスマンのようです。

 

 

講座の料理手順の打ち合わせ。左から森ノオト講座担当の齋藤さん、講座料理アシスタントの高柳さん、野路さん。「お餅をこねるのは大変」と強調する野路さんに、ひるむスタッフ。手順確認はより丁寧に進んでいく

 

東京農業大学短期大学部を卒業後、病院の栄養士の経験もある野路さんは、農業全体のバランスを念頭に考えています。

 

出荷している直売所の売り場ではカラフルになるように、また、売り場にない作物をチェックして、時期や品種など他の農家さんと重ならない作物づくりを心がけます。

 

「専業農家さんのつくる白菜やほうれん草など定番の野菜にはとてもかなわないから、収穫時期をずらしたり、ミョウガタケとかちょっと変わったものを栽培したり狭間をねらうように工夫しているのよ」と野路さん。

 

さらに、売り場に商品が常にあるよう、豆、とうがん、バターナッツ(カボチャ)など、長期間置いても品質の変わらないものも栽培します。

事業者として、おのれの弱点を見据えたうえで、なにで勝負できるか考えをめぐらせている野路さんです。

 

また、野路さんは横浜市中央農業委員会ではじめての女性農業委員です。そして現在、横浜市中央農業委員会(※1)で、38名所属する委員のうちのただひとりの女性です。

「農業委員会は男社会だから大変なこともあるけど、大学でも男ばかりだったからけっこう慣れているます」といたずらっぽく微笑みます。

 

他にも、東京農業大学の学生を受け入れ、企業との稲の試験栽培や約1000人(※2)にもおよぶ芋掘り体験の運営など、野路さんの農業の運営方法は多岐に渡ります。

2時間の取材の中で多方面におよぶお話から、仕事の切り替えが大変でしょうとたずねると、

「ふふふ、若い時はもっとよ。切り替えが早いから“チャンネル”って思っていたの」と野路さん。

 

田奈の町が大きく移り変わり、少しずつ変化していく時代の中で、多くのチャンネルからしなやかに軽やかに、けれどチャンスにはどん欲にすすむ野路さんでした。

 

田奈恵みの里事業による女性メンバー約10名で植え付けられたよもぎ。動物の糞尿を防ぐため、約10年前から畑で栽培している

よもぎはまだ3〜4センチ。お彼岸の頃から4月上旬までがベストの収穫期。小さなよもぎをたくさん集めるのは大変だが、仲間で摘めばその時間も楽しい。摘みたては草独特の香りを放ち、格別な味わい

 

「農家のお母さん発!横浜の地産地消を未来につなぐ体験講座」で教えていただく献立は、よもぎ団子と地粉(田奈産小麦)で作るすいとんです。よもぎ団子は地元の春祭りで作り続けてきた定番のお菓子です。野路さんのお話とともに、みんなで集う春の味わいを楽しみませんか?

 

※1 農業委員会は、農地法に基づく売買・貸借の許可、農地転用案件への意見具申、遊休農地の調査・指導などを中心に農地に関する事務を執行する行政委員会として市町村に設置されています。(出典:農林水産省ホームページ)

 

※2 野路さん曰く、芋ほり体験の子どもに付きそう家族などのギャラリーも含めての数。芋ほり体験の時期は盛大に畑がにぎわうそうです

Information

平成29年度 横浜市経済局消費生活協働促進事業

「農家のお母さん発!横浜の地産地消を未来につなぐ体験講座」

第8回

2018年3月28日(水)10:00〜12:30

テーマ:よもぎ団子と季節野菜のすいとん

講師:野路幸子さん

会場:アートフォーラムあざみ野 3F生活工房

(横浜市青葉区あざみ野南1-17-3)

横浜市営地下鉄ブルーライン、東急田園都市線「あざみ野駅」より徒歩5分

料金: 2,500円

定員:15名(先着順)

申し込み方法:参加希望回、氏名、生年月日、住所、電話番号、E-mailアドレス、参加の動機を記入の上、event@morinooto.jpまでお申し込みください。

 

主催:特定非営利活動法人森ノオト

〒227-0033 横浜市青葉区鴨志田町818-3

TEL:045-532-6941/FAX:045-985-9945

共催:アートフォーラムあざみ野(男女共同参画センター横浜北)

後援:横浜市環境創造局、JA横浜

明石 智代
この記事を書いた人
明石智代ライター
広島県出身。5年暮らした山形県鶴岡市で農家さん漁師さんの取材を通して、すっかり「食と農」のとりこに。森ノオトでも地産地消、農家インタビューを積極的にこなす。作り手の想いや食材の背景を知ることで、より食材の味わいが増すことに気づく。平日勤務、土日は森ノオトの経理助っ人に。
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