花でつながる人の輪。フラワーダイアログキックオフ!
横浜市青葉区で、花と緑をキーワードにした新たな取り組みが始まりました。さまざまな対話を通して、花と緑あふれる豊かな環境を未来につないでいく「フラワーダイアログあおば~花と緑の風土づくり~」。キックオフイベントが8月4日、青葉公会堂で開かれ、「園芸王子」の愛称で知られるタレントの三上真史さんや、地域で緑化活動に携わる方々が花と緑の思いを交わしました。

8月4日、じりじりと日差しが照りつける真夏の午後。「フラワーダイアログあおば」のキックオフイベントは「幸せの種をまこう!花と緑はこころの栄養」をテーマに、NHK『趣味の園芸』に出演中の三上真史さんがゲストで登場するとあって、園芸愛好家の方や番組を欠かさず見ているというファンも足を運びました。

 

「フラワーダイアログあおば」は、「あなたの力の1%をあおばの未来に!」という青葉区の掲げるスローガンをもとに、花と緑を通じて地域の多世代がつながり、豊かな青葉区をつくるきっかけにしていこうという取り組みです。じっくりと関係性を育んでいく「対話」を軸に、青葉区役所とNPO法人森ノオトが協働で進めていきます。

 

三上さんのトークショー「きっかけを大切に」

第1部は三上さんのトークショー。園芸が趣味でブログに綴っていたところ、8年前に『趣味の園芸』に声をかけられたそう。「おじいちゃんも好きだった番組に、まさか自分が司会で出られるなんて!」(三上さん)

 

自宅のベランダをDIYして植物を育てている熱心なガーデナーの三上さん。家族との思い出のエピソードを交えながら、「花を見ると、思い出が浮かんできます。花には時代をも超えて、人と人とをつないでくれる力があります」とその魅力を語りました。今年「横浜の花と緑をPRするアンバサダー」に就任し、子どもたちが花や緑に親しみ、育てる機会を通して心を育む「花育」にも関心を寄せます。「一緒に活動する子どもたちの中から、将来『趣味の園芸』に出る人がいたり、横浜のフラワー事業に携わってくれたり……。そんなきっかけになればうれしいです」と話します。

 

 

ハイチを訪れた時にも、異国の子どもたちと心が通い合うきっかけは足元に咲く花でした。花を摘み、子どもの頭に飾ってあげると、一気に心の距離が縮まったそうです。

 

ハイチでの経験を語る三上さん。ステージフラワーは青葉区の桜台園芸さんによるアレンジメント。ガーデンのようにさまざまな花々で彩り、風が抜けるようなさわやかさが印象的だった

 

「花と緑は世界共通の美しさがあります。現代は土いじりの機会が少なくなっていますが、私にできることは、きっかけをつくること。花を育てることは、心を育てることにつながると思うんです」。花と緑への思いのこもったトークに、会場全体が熱気を帯び、園芸の世界に引きこまれた時間でした。

 

 

続く第2部は、三上さんが司会役となり、青葉区内で花と緑の活動に携わる区民4人と、小出区長によるダイアログの時間です。

 

(右から)荏子田太陽公園愛護会会長の増田健一さん、荏田猿田公園愛護会会長の武内和雄さん、美しが丘公園愛護会のメンバーで美しが丘連合自治会会長の辺見真智子さん、あおば花と緑のサポーター代表の齋藤世二さん、青葉区長の小出重佳さん、三上真史さん

 

 花の力でまちを変えたい

 

まず、登壇者の方々の活動内容やきっかけについて、三上さんが聞き出します。

 

青葉区の数ある公園の中でも、ひときわ華やかなローズガーデンで知られる荏子田太陽公園。同公園愛護会会長の増田健一さんが、17年前に始めた活動のきっかけを話しました。「今では想像つかないでしょうが、当時はかなり荒れていて、痴漢は出る、不良少年はたまる、地域で一番危険な場所でした。おやじの会が中心となって、明るい、犯罪のないまちにするには、ここをよくしないといけないと。そこがスタートです」

 

地域で活動する登壇者の話は親しみやすく、参加者も熱心に聞き入った。登壇者の名前は手書きで、壇上の雰囲気をあたたかくした

 

 

隣に座るのは、荏田猿田公園愛護会会長の武内和雄さん。近所の小学校と連携して花壇づくりに取り組んでいます。「増田さんの話を聞いてびっくりしました。同じなんですね。荏田猿田公園もまた、子どもが遊べない公園だったんです。9年前に自治会メンバーを中心に、子どもたちが安心して遊べる公園にしたいと、年に3回草刈りし、木を伐採し、周辺から中が見通せて明るくなりました。5年くらい前から花壇をつくり、地元の荏田西小学校の子どもたちと一緒に花を植える取り組みも始めました」(武内さん)

 

 

美しが丘公園の愛護活動をしている、美しが丘連合自治会会長の辺見真智子さんは、こう話します。「美しが丘公園は、実は十数年前までは青葉区の土木事務所から『区内で最も汚い公園の一つ』と言われていたんです。『美しが丘公園』っていう名前なのに。それが、花壇をつくり始めると、不思議なことにゴミを捨てる方が減りました。年に2回植え替えをしていますが、花壇の写真を撮る親子の姿を見ると励みになりますね」

 

 

このイベントを前に、各公園を見て回ったという三上さん。手入れされた今の姿からは想像がつかない状態だったことに、驚きの声を上げます。

 

 

担い手を増やすために

 

青葉公会堂に隣接する青葉区役所が23年前にできてから、区役所前の花壇づくりを続けているのが、あおば花と緑のサポーターです。代表の齋藤世二さんは、活動を続ける苦労と喜びをこう話します。

 

 

「メンバーは自分の地域でも花壇づくりの活動をし、一人で二役、三役と兼ねている方がたくさんいるんです。今年の夏は雨が少なく、2日に1回は水やりをしていて、大変な作業です。それでも、訪れた人に『なんだ、枯れているじゃないか』と言われると悔しいですから。水やりは区役所と何度も交渉したんです。特に正面玄関前の花壇は西日が照る上に、階上のひさしが出っ張っていて、花壇にほとんど雨が降らない。自動かん水にしてほしい、と毎年頼んできました。(訪れた人に)『いつもありがとう』と声をかけてもらえるのが一番ありがたい」

 

隣に座る区長に、「自動かん水にしてください」と齋藤さん(左)。ユーモラスな登壇者の話しぶりに、会場からは拍手や笑いが起こる

 

三上さんから今後の課題を聞かれると、登壇者からは「新たな担い手」というキーワードが挙がりました。

 

「お仕事をお持ちなので、男性がなかなか集まらないんです」と増田さん。武内さんは「メンバーが高齢化しています。最近の定年延長の流れがあり、会社を辞める人が少なくなりました。次の人をどう育てるか。活動を続けていくためには、後継者を増やしていかないといけません」。辺見さんも「十数年前から同じメンバーでやっていて、高齢化の波が押し寄せている」と言います。若い世代を取り込もうと、公園のウオーキングコースにハーブを植え、美しが丘をハーブの丘にしようという取り組みも始まったそうです。「ハーブを使ってアロマオイルを作ったり、公園で料理をしたりと、ハーブボランティアになりませんか?と声かけしているんですよ」

 

 

担い手不足の声を聞き、三上さんは「だれでも参加できるんですか? ぜひ、という方いらっしゃるのでは? きっかけがなかなかないから、やってみたいけど、自分ができるかな、という方が多いのではないでしょうか。ある意味、楽しいサークルのようなところだと思うので、気軽に参加してほしいですね。公園ごとに、ローズガーデンだったり、ハーブの丘だったり、そういった特徴があると、訪れるきっかけになるかもしれないですね。実際に収穫して楽しめると、自分でも育ててみたい、活動に参加したい、という方も増えると思います。ぼくもぜひ参加させてもらいたいです」とエールを送ります。

 

 

花が人の輪を繋いでいく。広げよう「花端会議」

 

「活動を通じての変化は?」との三上さんからの問いかけに、武内さんは「まさか会社を辞めた後、地元で友人ができるとは思っていなかった」と答えます。「男はプライドがあって、なかなか地域活動に参加しないものです。地域の活動に参加すると、友だちと自分の居場所ができます。旦那さんが会社辞めた後、家でゴロゴロしていたら、ぜひお尻をたたいてみてください」と、客席の女性たちに呼びかけました。

 

 

ダイアログの終盤、「ぜひ紹介したい」と齋藤さんが口を開きます。「”井戸端会議”という言葉がありますよね。もう井戸がなくなり、使われなくなった。それに代わる言葉として、”花端会議”を広めたい。かつて静岡の女性から聞いて印象に残っているんです。三上さん、ぜひテレビやラジオでこの言葉を広めてください」。齋藤さんの言葉を受け、三上さんがうなずきます。「それこそ、ヨーロッパでは当たり前にあることですよね。オープンガーデンといってお庭を見せて、会話が広がっていく。日本でも『次、いつ花端会議する?猿田公園で?』みたいなふうにしていきたいですよね」

 

「区長、ぜひ青葉区から花端会議、広げていきましょう!」と三上さん(左)が小出区長(中央)に呼びかける

「地域のために1%の力を、というのはとてもいいスローガンですよね。人生100年の時代ですが、会社を引退後は力を持て余します。地域のために、子どもたちのために、地域で活動する1%運動、広げていってもらいたいです」と武内さん。これを受け、小出区長が呼びかけました。「青葉区は男性長寿日本一になりましたが、地域活動をするきっかけがない方が多いのではないでしょうか。1%でいいから、青葉区の、子どもたちの未来のために、力を貸していただけないかと昨年から始めました。シニアはもとより、若い世代の方にも花や緑をきっかけに、かかわってみたいな、と思える工夫を森ノオトさんとともに考えていきたいと思っています。9月から始まる花と緑のプログラムに参加いただくことも、次への一歩になるはずです。近所で花の手入れをお孫さん、お子さんとすることで、声をかけ合う輪が、対話が、一つでも二つでも広がっていってほしいです」

 

 

ダイアログの締めくくりに、三上さんはこう話します。「みなさんからお話をうかがい、とても刺激を受けたし、今後の課題も発見できました。花を育てることは、ときに人の心を育てることであり、つまりはまち全体を育てること、まち自体を豊かにすることなんだな、というのがぼく自身の感想です。今日感じた思いが、幸せの種だと思います。ぜひ、ご家族、お友達にまいて、広げてほしい。青葉区、横浜市、日本全体の未来を豊かにすることにつながると思います。こういった機会、定期的に花端会議、みなさんと一緒に実現していきたいです」

 

 

多様なダイアログが生まれる

 

ステージでのダイアログが終わると、会場のロビーに掲示された手描きのポスターに、かわいらしい折り紙の花が一つ、また一つと咲いていきました。これは、参加者が登壇者へのエールや花と緑にまつわる情報などを、受付で配られた折り紙に自由に書いたものです。

 

ロビーに咲いた”花”の数々。これも一つのダイアログ(撮影:宇都宮南海子)

 

 

この折り紙だけでなく、会場の装飾にはあたたかみを随所に感じました。フラワーダイアログの企画、運営をおこなっている森ノオトの事務局長、梅原昭子さんは、準備段階から多くの方に関わってもらい、それぞれの“1%の力”を発揮してもらおうと「アートボランティア」という手法を思い付いたそうです。

 

イベントを前に、森のなかま(森ノオトのNPO会員)や子どもたちが集まり、会場装飾に協力した(撮影:北原まどか)

梅原さんは「普段から1%以上の力で活動して、地域の美しい環境づくりに貢献している方々に感謝とエールを送ることや、ゲストの三上さんを迎えるために華やかに演出しようと考えました。ハギレや余ったチラシなども活用し、ゴミを減らすというメッセージも込めています」と話します。

 

森ノオトのアップサイクルブランド、AppliQuéのメンバーが手縫いしたブローチを手にする三上さん。「持ち帰っていいんですか?」とにっこり

 

取材を終え、会場を後にしようとしたところ、いつもなら何気なく通り過ぎる花壇に目が止まりました。ああ、これが齋藤さんたちが2日に一度水やりしてくださっている花壇だと。その時も、男性が一人、水やりをしているところでした。ちょうど、公会堂から別の男性が出てきて花壇の前で足を止め、ホースを持つ男性に近づきお話を始めたのです。

 

さっそく新しい対話が生まれた場面を見て、心がほかほかとしました。

 

 

私は青葉区に暮らすなかで、公園に恵まれていると感じていました。ただ、これまでは、公園がきれいで花々が咲いていても、その裏方の存在を意識することがありませんでした。今回、地域のために花と緑の活動する方たちの思いにふれ、明るさや心の豊かさがとても魅力的で、私も仲間に入りたい、地域で新しい一歩を踏み出したいと思いました。

 

 

フラワーダイアログは、9月からも講座やワークショップなど、参加型の企画が続きます。花と緑をテーマに、地域活動のきっかけを探しに、お一人でも、友人や家族を誘ってでも、出かけてみませんか。

Information

<フラワーダイアログあおば>

●「企業との連携で活動を可視化する」ワークショップ

2018年10月5日(金)10時〜12時

会場:青葉区役所3階304会議室

 

●「子どもの視点からまちを見なおす」フィールドワーク

2018年11月8日(木)10時〜12時半

会場:ピッピ保育園

・いずれも参加費無料

・申込:参加者全員の氏名、住所、電話番号、メールアドレス、保育希望の有無を明記の上、event@morinooto.jpまでお申し込みください。eメールをお持ちでない方は、上記内容を明記の上、FAXでお申し込みください。

 

梶田 亜由美
この記事を書いた人
梶田亜由美ライター/スタッフ
地元・富山の新聞記者、ウェブやがん啓発関係の仕事を経て、出産後にライティングの仕事を再開。2016年から森ノオトの事務局スタッフとして編集部とファクトリーを担当。布小物とメディアを融合させた新しいものづくりに挑戦中。読書好きで、親子でくつろげるまちの古本屋さんを開くのが夢。
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