人と人をつなぐ安納芋の味を届けて「地湧庵農園 横浜営業所」
都筑区の住宅街の一角に立つ「安納いも」の文字の旗。その近くに、「安納芋(あんのういも)」を焼き芋にして販売する「地湧庵農園(じゆうあんのうえん)横浜営業所」があります。こちらを経営するのが、鹿児島県の種子島出身の河東大詔(かわひがしひろのり)さん。都筑区で種子島の味を届けながら、長く地域を支えてきた河東さんに話を伺いました。(2021年ライター養成講座修了レポート:外舘 純子)

※今期の安納芋の販売は終わりました。次期は10月から販売予定です

 

サツマイモの中でも糖度が高く、水分が多い安納芋。産地として鹿児島県の種子島がよく知られています。こちらの営業所では、種子島産の安納芋をつぼの中でじっくり焼いて、「つぼ焼き芋」にして販売しています。

 

「安納芋の味は?」「つぼ焼きとは?」。初めて訪れたのは、新聞で紹介されていた河東さんの「つぼ焼き芋」の記事を目にして、そんな興味を持ったからでした。それ以来、わが家は甘くてしっとりした、こちらのつぼ焼き芋の大ファンです。

 

旗が立っている日は、営業所が開いている合図です。最近その旗が立っていない時期がありました。心配していたことを伝えると「先日の風の強い日に破れてしまったのだよ」とのお話が。「知っている人は気になったみたいだから」と新しい旗の準備中でした。「この旗が立っていたら、営業所が開いている日」、地域の人はよく知っているのです。

 

奥に見えるのが「つぼ焼き」の機材。営業所の小屋は全て河東さんが作った(撮影時にマスクをずらしています)

 

種子島で生まれ、大学を卒業してからは横浜に移り、青葉区で小学校の先生をしていた河東さん。河東さんが安納芋をこの地域に伝えようと思ったのは、定年退職した後のことです。ちょうどその頃、百貨店の催事でも安納芋の甘さが話題になっていました。そこで、故郷の種子島で親族が栽培する安納芋を自分の住んでいる地域にも紹介できたらと思ったのが、営業所を開くきっかけだそうです。

 

「道楽でやっているのだよ」と河東さんは謙遜します。しかし、目の前にある立派な「つぼ焼き」の機材を見れば、その言葉を信じる人はいないでしょう。安納芋は他の芋よりも水分が多いため、特有の甘さを引き出すには、長めの焼き時間が必要とのこと。反対に、焼き過ぎてしまうと、しっとり感がなくなってしまうそうです。そこで、河東さんは、「つぼ焼き」という焼き方を取り入れました。安納芋特有の甘さとしっとり感を引き出すのに、最適な焼き方が大きなつぼの中で練炭を使って安納芋を長時間加熱することだったそうです。その後、さらに焼き時間や温度の調整などの試行錯誤を繰り返し、営業所を始めて10年が経った今では、市外からも買いに来る人気の焼き芋になったのです。

 

つぼ焼きにすることで安納芋特有の糖度がさらに増す

 

「地湧庵」という営業所の名前の由来は、「自然の恵みは土から湧いてくる」という意味を込めたといいます。「すべての恵みは土から始まるからね」と 話す河東さん。種子島には、他にも全国的に有名な特産品がたくさんありますが、「甘さ」が人気になる秘密は、種子島の「土」にあります。

 

周りを海で囲まれた種子島は、年間平均気温が19度を超えます。南国の日光が降り注ぐ、温暖な気候なので、寒さに弱いサツマイモを長く暖かい土の中で育てられるのです。そのため、芋のでんぷん量が多くなるとのこと。安納芋が甘くなるのは糖質に変化するでんぷんがとても多く含まれているからなのですね。

さらに、周りを海に囲まれていて、海水が土に降り注ぎ、ミネラルが長年に渡って土に浸み込んでいるのも理由だそうです。「海水が降る」ということについて、「台風が必ず来る土地だからね」と河東さんは教えてくれました。その言葉を聞いて、日光と土だけでなく、風もこの甘さの秘密なのだなと思いました。

 

でんぷんを糖質に変化させるには、収穫後しばらく熟成させる期間が必要です。安納芋をどのくらい熟成させてから「つぼ焼き」にするか、種子島で生まれ育った河東さんは、そのタイミングをよく知っているのです。

秋に収穫された安納芋は種子島から船や車で運ばれ、河東さんの元に届いた後、熟成の期間を経てから「つぼ焼き」にします。こうして長い日にちと手間をかけて、10月から5月までの期間限定で甘くてしっとりしたおいしいつぼ焼き芋を食べることができるのです。

 

安納芋の歴史は種子島から始まる。平成25年までは種子島でしか栽培が認められない「登録品種」だった

 

営業所では安納芋以外にも、季節折々に河東さんの親族の農家から直送される種子島産の野菜や花などを販売したり、市場に卸したりしています。旬の食材なので、営業所でいつ出会えるかわかりません。だからこそ、その時々に、旬の種子島の味の出会えるのを楽しみにしています。

この日は、ちょうどスナップエンドウが届いたところでした(現在は販売していません)。甘くて食べ応えがあって、とてもおいしい!

 

種子島から直送されてきたばかりのスナップエンドウをさっそく並べる河東さん。それを見て、安納芋を買いに来たお客さんが一緒に購入していく

 

都筑区に25年以上住んでいる河東さん。地域を支える多忙な人でもあります。イベントへの安納芋の出店を頼まれたり、地域の人が作った野菜の販売の委託を頼まれたり。営業所の通学路近くの斜面を整備しているのを見かけたこともあります。小学校の先生を長年されていた河東さんの営業所には、近所の小学生がおつかいに来ることもあるそうです。

驚いたことに、こちらの営業所の小屋は全て自身の手作り。「広く浅く、できるだけだよ」と笑いながら、「わからないことは人が教えてくれる」と言います。故郷の味を伝え、地域を支えながら、逆にわからないことは人が教えてくれる。河東さんのお話の中でさらっと出てくる「人と人とのつながり」を感じさせる言葉が私の心に残りました。

 

その「人と人」をつなぐのは、自然の恵みの安納芋。種子島という遠く離れた場所で育てられた安納芋の味を、ここ都筑区で楽しめるのは、「人と人」をつなぐ「安納芋」にも、物語があるから。ここに来るといつも遠い種子島に思いを馳せてしまいます。

 

取材を終えて、「親が書いている姿は子どもにも良い影響を与えると思うよ」と河東さん。

今日も種子島の味をこの地に届けながら、地域を温かく支えています。

Information

地湧庵農園 横浜営業所


住所:横浜市都筑区茅ケ崎東3-19-10 河東ガレージ ※インターホンを押してください
電話:090-7018-0862
営業時間:1130分~19
定休日:木曜日(他、臨時休業あり)
販売価格:つぼ焼き芋 100グラム150円から(10月~5月の期間限定)
アクセス:横浜市営地下鉄・センター南駅より徒歩約8
公式Facebook https://www.facebook.com/annnouimo/

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