ごみ分別の新基準は思いやり! 「次の人」を考えた分別を
森ノオトは地域を「エコ」に、暮らしを楽しむための情報メディアを目指し、活動しています。エコを語る時に避けて通れないのが「ごみ」について。生きている限り必ず出てくるごみ、その分別も生活に欠かせない大切な要素です。ごみは燃やせばただのごみ、分ければ資源になります。ごみの行方から、分別の新基準を考えてみました。

皆さんは暮らしのなかで「エコ」を実践する時に、何からスタートすればいいと思いますか?

例えばオーガニック野菜を買ってきて食べる。オーガニックコットンの洋服を着る。買い物する時はマイバッグを持っていきレジ袋を断る。自家用車はなるべく使わず公共交通機関を利用する……。

日々できることを数え上げると枚挙にいとまがありませんが、キタハラは最近、「入口よりも出口から考える方が近道ではないかな」という気がします。入口とは、買ったり食べたり、暮らしに取り入れるモノやコトを指しています。出口とはそのものずばり、「ごみ」のこと。食べ残し、容器包装のプラスチックごみ、古紙・古布、生活廃水……。ごみそのものの質を見つめ、ごみの出し方に工夫することで、ごみが資源になり素材に戻る、エコロジーの本質ともいえる「循環」が可能になると感じています。

 

OLYMPUS DIGITAL 東南アジアに輸出される古着たち。「次に使ってくれる人」がいると思うと、ごみを出す時の気持ちも変わってくる

 

それを確信したのは、もう半年も前のことになりますが、2013年11月13日に、森ノオトの会員でもあるたまプラーザの大野承さんのお誘いで、美しが丘連合自治会の「資源化施設見学・勉強会」に参加した時のことです。

地域住民の方と一緒にバスに揺られて横浜の港湾地区に到着。訪れたのはリサイクルポート山ノ内という古紙・古布の回収施設です。

山のように積み上げられた古布の塊は、一つひとつに「カーディガン」「コーデュロイ」「夏ジャケット」「サマーセーター」「フリース」などと書かれ、130種類に分けられています。これらは自治会などの集団回収で古繊維問屋に集められ、汚れや傷の程度によって「古着」としてそのまま再利用、「ウエス」「フェルト」にリサイクルするなど、用途別に手作業で分別します。古着は東南アジアに輸出し再使用されます。

私たちが古着として出したものの状態がよければ、途上国でまた服として活用されると知り、気持ちが救われたのと同時に、捨てる時も「次の誰かが使うんだ」という気持ちでていねいに出すことが大切なのだな、と感じました。雨天時に古布を出してしまうと、古着としての再使用はおろか、資源としてリサイクルすらできなくなります。

 

古紙の回収ゾーンでは様々な状態の紙が混ざっているのが気になった

 

続いて見学したのは古紙の回収です。古布と異なり、色んな紙が雑多に混ざっているのが気になりました。雑誌置き場に新聞が混じっていたり、ひどいものは食品のパックなども……。職員の方によると、異臭がして開けてみたら使用済みの紙おむつが入っていたこともあるそうです。

こうした紙も最終的な分別は人の目と手に委ねられます。紙おむつや食品が紙に混ざったら……。当然ながら、再生ができなくなります。

また、古紙の分別も大切です。紙の質により再生利用できる範囲が異なります。資源循環の優等生は牛乳などの紙パック。トイレットペーパーなどにリサイクルができます。段ボールも段ボールの主原料としてリサイクルでき、新聞、雑誌、チラシなどの雑紙は新聞や雑紙として再生されます。

「ごみの鉄人」の異名を持つ横浜市資源リサイクル事業協同組合の戸川孝則さんは「燃やすごみは、実は“燃やすしかないごみ”なんです。燃やすのは最終手段。汚れている紙や濡れた布は、ごみになってしまいます。古布は濡らさず、紙は汚さないで回収できれば、これらは資源になります」と話します。

 

容器包装プラスチックも最終的には人の手で選別している

 

ごみも資源も紙一重、私たちの出し方次第で「次の価値」がずいぶん変わってくるなあ、と感じたところで向かったのはJFE環境株式会社の横浜プラスチックリサイクル工場。ここでは、「プラ」マークがついている、いわゆる容器包装プラスチックの分別がおこなわれています。

集められたプラの回収袋は受入貯留ヤードで投入され、コンベアで運ばれて可燃物とフィルム系プラスチック、ボトル系のプラスチックに粗選別されます。驚いたのはこの先の工程。何とほぼすべてのプラを人の手で選別しているのです。可燃物や缶・びん・PET素材、不燃物、金属類を取り除き、再生可能なプラスチック類を圧縮梱包し、コンクリート型枠などに再生するとのことです。

プラは集めてすぐに処理するのでにおいはさほど気になりませんが、それでも食品がプラ容器に残っているよりはきれいな方がいい。プラ容器についたごはんつぶや食品の残留物は、食事後にちょっとひと拭きするだけで、格段に選別しやすくなるのではないかと思いました。

 

大野承さんによる「資源曼荼羅」。循環できない「燃やすしかないごみ」をいかに減らしていくか、資源をきれいな状態で回していくかが、わたしたちの責任とも言える

 

このツアーを企画・実施した大野承さんは、美しが丘地区環境事業推進委員連絡協議会で活動しており、この日、お手製の「資源曼荼羅」を見せてくださいました。そこには大野さんたちが見学してきた「資源の行き先」が描かれています。

「燃やすごみ」

「燃えないごみ」

「乾電池」

「蛍光灯」

「スプレー缶」

「ダンボール」

「新聞」

「雑誌・その他紙」

「紙パック」

「古布」

「缶・びん・ペットボトル」

「小さな金属」

「プラスチック製容器包装」

「粗大ごみ」

 

……ごみの出し方、分別次第で、「燃やすしかないごみ」になるのか、資源として再使用、再生利用できるのか、この日の見学会と大野さんの「資源曼荼羅」でよく理解ができました。

そして、私たちが出したごみを、資源にするために分別するのは、人の目、手です。機械で自動的に分けられるものではないと知りました。

「この布1枚くらい、汚れていてもいいや」

「ホチキスが残っているけれど、まあいいや」

この、「まあいいや」が、次の人の負担になったり、資源にできるものがごみになったりする原因になります。「次の人」が気持ちよく仕事ができるよう、「次の人」が喜んで使ってくれるよう、きれいな状態で出す。つまり、ごみ分別に「思いやりの心」が生まれれば、人も、資源も、気持ちよく循環でき、私たちもその心地よい輪の一員として胸を張れるのではないか……そう感じました。

森ノオトは2014年度前期、たまプラーザ電力の立ち上げに向けたワークショップや勉強会に力を入れ、エネルギーアカデミーを開催しています。昨年度好評をいただいた「あおばECOアカデミー」は秋より再開するつもりです。ごみの分別や省エネ、暮らしのエネルギーといった、生活に密着した「エコ」を多様な切り口でお伝えしていきたいと思います。

そうした時に、地域密着の自治会組織などで培われてきた努力や経験を、若い世代がまた次に引き継げるような、そんな知恵やアイデアも生まれるように企画していきたいとも考えています。

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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