

6月5日(日)に、アートフォーラムあざみ野で開催される「放射能だけじゃない! タネの遺伝子汚染を考える映画祭inあざみ野」。講演者として招かれている安田節子さんは、日本消費者連盟で反原発運動、食の安全を検証し呼びかける運動を展開してきました。世界で遺伝子組み換え食品がつくられた1996年からは、市民団体「遺伝子組み換えいらない!キャンペーン」事務局長として、表示や規制を求める運動を全国展開。食の安全に取り組む活動家として第一線を走ってこられた方です。青葉台在住の安田さんに、私たちの食の今後についてお話をうかがいました。

「青葉区では絶対に遺伝子組み換え作物を植えない、持ち込まない、食べない」。青葉台がGMOフリーゾーンになればいいのに、と盛り上がった
ーー日本では遺伝子組み換え作物は栽培されているのでしょうか?
安田: 一時期遺伝子組み換え大豆の作付けの動きがありましたが、反対運動
にあって頓挫しました。
農林水産省の旗振りで遺伝子組み換え米の研究が進んでいます。代表的な例が花粉症緩和米です。杉花粉のアレルゲンを作る遺伝子を入れた米を食べることで減感作療法的に症状を緩和するというものです。厚生労働省が食品としてではなく医薬品としての安全性審査を必要としたので、たくさんの臨床研究を重ねなければなりません。効果があるかどうかもわからないし、花粉症でない人が食べたらむしろアレルギーが引き起こすリスクがあります。家で花粉症の人とそうでない人用にお米を炊き分けるのも現実的ではないので、うまくいくかどうかはわかりません。
ーー遺伝子組み換えを少しでも減らしたい、ということは、日本の食糧自給率を上げることとつながっていくのでしょうか?
安田: まさにその通りです。そして、国内での遺伝子組み換え作物の作付けを許さず、国産の食べ物を選んで食べていくことが大事です。国産のものを選ぶ判断基準は「安全」を求めてのことですから、大量の農薬や化学肥料を使わない農産物や、有機農業を支援していくことも必要です。
ーー環境への影響も甚大ですよね。
安田: 遺伝子組み換え技術は、近代工業的農業の延長線上にあるものです。開発企業が種、機械、農薬、肥料など全ての資材を提供して成り立つ農業で、農家は支配されたうえ、環境影響が出れば破滅させられるということです。特許のかかった遺伝子組み換えの種は、農家がタネを採取することができなくなります。タネの特許権を払い、タネ会社から直接技術指導を受け、言われた通りにつくるしかない。農家は主体的な農業の権利を奪われます。
除草剤耐性の遺伝子組み換え作物の場合、タネの販売会社は除草剤とのセット売りでますますもうかります。同じ除草剤を大量に散布していると、いずれ耐性をもった雑草がはびこり、それを駆除するためにますます多くの、より強い除草剤を使うことになります。そのため連鎖的に土壌や水汚染が起きたり、耐性害虫や耐性雑草がでてきたり人体への健康影響も起こります。遺伝子組み換えのタネがそうでない作物のタネと交雑し、遺伝子汚染を広げていくことにもなります。
ーー放射能汚染に日本が揺れている間に、遺伝子組み換え作物の輸入を広げていくような動きが見受けられ、またTPPへの参加で日本農業が今後大きな打撃を受けることが予想されます。消費者はどう自営し、賢くなっていけばいいのでしょうか。
安田: とにもかくにも「確認」して「主体的に選ぶ」、その一言に尽きると思います。「つくっている人と食べる人の関係が近いこと」が、いちばんの安心ですよね? 私が地元の農家さんから直接食べ物を買うことができれば、素性確かで心配はない。どこの国でどんな農薬を使われてどのようなルートでやってきたのかわからない食べ物たち。安さの裏でコスト削減、高い環境負荷、人権侵害が行われている場合もあります。
そして、家庭では加工品にあまり頼らず、自分で料理をつくること。現代は便利になった分、食べ物をつくる技や知恵を伝えることがおろそかになっていると感じます。栄養価がもっとも高くなる旬の作物を選び、調理して食べる、なにをどう食べたら健康を保てるのかの知識は独り立ちするまでに与えられ、獲得されなければならないものです。また、食べ物がどうやってつくられてくるのかを知ることが大切です。
今、経済的や物質的には豊かになったけれども、人間がひ弱になって壊れかけている。生き抜く力は食べものから与えられます。そして人との絆です。地域の中で人と人が助け合って生き、エネルギーも食も地産地消が実現できれば……それこそが人の幸せに結びついてくるのではないでしょうか。
■取材を終えて……(一言)
安田節子さんの論理的で明快、非常に力強いお話に、同席したecoloco実行委員のメンバー全員が心打たれました。社会を変えていくための力、情熱、行動に、私たちも地域からそれを始めていきたいと感じました。
一方で、放射能汚染を引き起こす原子力エネルギーと、タネの遺伝子汚染と環境破壊のもととなる近代工業的農業の共通点が多々あることがわかりました。政治と産業の癒着、ガンやアレルギーを発症しても因果関係を証明できない、環境中に一度放出されたら暴走する、地方の第一次産業を疲弊させる、大量生産大量消費、遠隔地からの輸送……。私たちはこれまであまりにも「科学」を過信し、グローバリゼーションに突っ走りすぎました。その揺り戻しが今起こっているのだと思います。
今こそ「地産地消」「顔の見える経済」の大切さを、ていねいに訴えていくべきだと感じました。
(取材・文・写真/キタハラマドカ)
| 安田節子(やすだ・せつこ) | |
食政策センタービジョン21主宰。情報誌「いのちの講座」発行人。NPO法人に本有機農業研究会理事、埼玉大学非常勤講師。1990年より10年間日本消費者連盟で反原発運動、食の安全と食糧農業問題を担当。1996年〜2000年、市民団体「遺伝子組み換えいらない!キャンペーン」事務局長として、表示や規制を求める全国運動を展開。2002年〜2004年、環境政党「みどりの会議」副代表委員。著書に『自殺する種子―アグロバイオ企業が食を支配する』(平凡社新書)、『消費者のための食品表示の読み方──毎日なにを食べているのか』(岩波ブックレット)など多数。 |
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| http://www.yasudasetsuko.com/ | |




