安らぎのひとときを、柔らかな音色と共に。ライアー奏者・みやたよしたけさん
会社員やベーシストという異色の経歴を持ちながら、現在、ライアー奏者として活躍中の、みやたよしたけさん。柔らかく包み込むようなライアーの調べもさることながら、みやたさんの独特な雰囲気や温厚な人柄に惹かれるファンも多数……。そんなライアーと、みやたさんの魅力を探りました!(text:安藤暁子)

雨がしとしと降るある日、ライアー奏者・みやたよしたけさんを青葉台のカフェ「Rin5Life(リンゴライフ)」に訪ねました。みやたさんは、Rin5Lifeで月に一度、投げ銭制のライブを行っています。こちらでは普段のライブの時とは異なり、MCはなく生演奏BGMのような感覚で、お客さんの雰囲気に合わせて演奏しているのだとか。

以前から、みやたさんのライアーの音色に魅せられている私。みやたさんの魅力を探りたいという思いが募り、取材を申し込むと、快く引き受けてくださいました。

 

この日のライブ会場のカフェ「Rin5Life」。青葉台駅から徒歩3分

 

私が、みやたさんのライアーと出会ったのは4年ほど前のことです。とあるライブ会場で、偶然耳にしたライアーの調べ。その柔らかく、透き通る音色は、限りなく心地よく、会場全体をすっぽりと包み込みました。

まるで春の日差しのような温かさと懐かしい気持ちが、胸いっぱいに広がったことを、今でも鮮明に覚えています。

 

演奏直前のみやたさん。この後、キャンドルの灯る空間にライアーのひそやかな音が優しく響いた

 

みやたさん自身がライアーと出会ったのは、2008年頃のこと。映画『千と千尋の神隠し』でお馴染みの『いつも何度でも』を聴いた時で、その出会いは、衝撃的だったようです。

「何だこの音は!?」と、今まで聴いたことのない音色に「凄くシンプルな音なんだけど、わーっと惹きこまれた!」と、みやたさんは、はじけるような笑顔で語ります。楽器の名前すら分からず、パソコンで検索して知ったライアーは、楽器屋でも見たことのないものだったといいます。

その頃みやたさんは、会社員として働く傍ら、ベーシストとしてもバンド活動をしていましたが、バンドではなく一人でも演奏できる楽器を探していました。ライアーとの出会いは、そんなグッドタイミングでやってきたのです。

 

これが、みやたさんのライアー。Manfred Joecks製のソロソプラノライアー、2008年製。ライアーの起源は、古代メソポタミアや古代エジプトから伝わる竪琴

 

すぐに、ライアー奏者の三野友子さんに奏法を習い始め、そのわずか1年後には、あるイベントでソロ演奏と歌の伴奏を……と、めざましい勢いでライアーを自分のものにしていったみやたさん!「ライアーを始めた当初から、ステージに立つことを考えていたんですよ」

「“これだけできるから人前に立つ”ではなく、人前に立つという気持ちが先にあった」と、みやたさん。言い換えれば、「遠くにボールを投げられるようになったから投げるのではなくて、まず、先に投げていたのかな」と。会社員として働いていたので、練習時間もそれほど多く取れなかったはずですが、とにかく弾きたいと思ったら時間の許す限り、できるだけ弾いていたと、みやたさんは和やかな笑顔を浮かべました。

 

ときおり、演奏しながら微笑むみやたさん。ライアーに頬ずりするかのように、愛しそうに奏でる

 

「どこにいても、森にいるのと同じような感覚がある」というみやたさんは、演奏中、「“森”と“お客さんがいる会場”が重なるような、もういっこ深い感覚の所……場所を超えちゃった世界」で演奏しているといいます。

みやたさんは、日頃から森が好きで、ライアーと一緒に森へ行っては、気の向くままに奏でる「森の竪琴弾き」。そんな風に森好きの様子から、自然豊富なところで生まれ育ったのかな? と思いきや「実は、森とは縁もゆかりもないんです」と、はにかみます。

横浜市青葉区在住のみやたさんの出身は、東京都世田谷区。子どもの頃は、いわゆる街の中で遊んでいたといいます。路地や空き地があれば、野球や追いかけっこ。「ここがホームベースで、あそこが一塁ねって! 街の中でも、そこら中が野球場になっていた」と、みやた少年の活発な姿が目に浮かぶような話しぶりに、こちらも思わず微笑んでしまいます。

自分の中に潜む“森好き”を発見したのは、ちょうどライアーを始めた頃だと、記憶を探り探り話してくれました。

会社勤めで、毎日オフィスの中にいる生活を送っていたある日、「大人の遠足に行こう」と思い立ち、地図を見て緑の多そうなところへ……。「何もしなくてもいいところに行きたいと思って。厚木の奥のほう、丹沢の端っこの辺りに電車とバスで行って、宮ヶ瀬ダムのふちに座って……。1人でぼんやりしていたんです」。気分の赴くままに過ごすうちに、みやたさんが感じたのは、「森には全てがある」ということ。「“森好き”を発見したのは、大人の遠足がきっかけだけど、いずにれしても、ライアーを弾き始めたことで、“森”の感覚が自分の中にできたのかな」。そう語るみやたさんは、はっとするほど、真っ直ぐな眼差しをしていました。

 

お客さんは、食事や飲み物を楽しみつつ、くつろぎながらライアーの音色に耳を澄ます

 

ライアーの音の魅力を、みやたさんは、こう語ります。「柔らかい音。邪魔にならない音。聞き流すこともできるけど、耳を澄ますとそこに何かを感じることのできる音」。また、自然の音にも近いと感じているのだとか。波や風の音……。普段は聞き過ごしてしまうような音も、意識して聴いてみると、グッと心に響く時があります。

そしてライアーは、「強いメッセージを伝えるというより、ふわっと柔らかく包み込むのが向いているのかな」と、みやたさん。「受け取り方はたくさんある。その人の“今”で受け取ってくれればいいな。自分で感じて気づいてくれたものは、確かなものだから……」

みやたさんを知る人ならば、誰もが、みやたさんとライアーのもつ柔らかなイメージを、重ね合わせているのではないでしょうか。みやたさん自身がそんな風に柔和な雰囲気になったのは、「ライアーによって引き出されたのかもしれない」。

 

2013年4月にリリースした、2nd CD “Sora-Oto”。ライアーの音色に、川のせせらぎや波の音、虫の音が調和して……。うっとり。リラックス効果は絶大!

 

取材中、特に印象に残る、みやたさんの言葉があります。

「夢を追いかけたいならば、徹底的に追いかけなければいけないと思う。雨乞いの儀式を成功させるには、雨が降るまで続けるわけですよ。つまり夢っていうのは、叶うまで続ければ必ず叶うわけです。継続は力なりという言葉も、確かに真実みたいな、ね。でも一方で、そんなに頑張らなくても、自然と自分のやりたいことに状況が固まっていくこともあるとも思う。自分の感じたままに進んでいけばいいよって。“感じる”っていうのが、僕は、キーワードのような気がするなあ」

この日のライブの締めくくりは、多面的で哲学的な歌詞が心に響く名曲、ジョニ・ミッチェルの『Both Sides Now』でした。

ライブが終わった頃、雨は止んでいました。家までの帰り道、夜の空気がいつもより清々しく感じたのは、雨上がりの魔法でしょうか? それとも、ひそやかなライアーの響きに耳を澄ましているうちに、私の心のなかの森に、そよ風が吹き抜けたからなのかもしれない……、そんなことを、私は感じました。

安らぎのひとときを過ごしたい方、ライアーの音色に興味のある方は、みやたさんの奏でるライアーの調べに触れてみてはいかがでしょうか。

Information

みやたよしたけ(Leier/ライアー)

ライアーの美しい音色に魅せられて、長年弾いていたベースより転向。それまでの音楽経験と融合させて、様々なジャンルの音楽を独自のスタイルで演奏する。ライアーソロでの演奏、他の楽器との共演だけでなく、朗読や講演との共演、空間音楽としての演奏など、多岐にわたる形で活動中。2013年4月には、2nd CD “Sora-Oto”をリリース。

■オフィシャルウェブサイト「Leier in the Forest」

http://leier-in-the-sky.jimdo.com/

■オフィシャルブログ「Leier in the Forest」

http://leier-in-the-sky.blog.so-net.ne.jp/

■Facebookページ

https://www.facebook.com/miyata.yoshitake

※ライブ情報や、2nd CD “Sora-Oto”のご注文は、オフィシャルウェブサイト「Leier in the Forest」でご確認下さい。

Avatar photo
この記事を書いた人
ライター卒業生ライター卒業生
未来をはぐくむ人の
生活マガジン
「森ノオト」

月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる

森のなかま募集中!

寄付についてもっと知る

カテゴリー

森ノオトのつくり方

森ノオトは寄付で運営する
メディアを目指しています。
発信を続けていくために、
応援よろしくお願いします。

もっと詳しく