ecolocoパーソナルインタビュー

この人に会いたい!

北原 まどかwritten by

森ノオトが横浜の真ん中に出張! 子育て中の女性たちが、地域で生き生きと働く戸塚区のNPO法人こまちぷらすの代表・森祐美子さんに会いに行ってきました。インターネット上の「情報ひろば」と子育て支援拠点を運営し、そしてママと子どもで賑わうひろばカフェ「こまちカフェ」を運営する森さんに、これからの地域での子育てについてうかがいました。

 

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地域を耕す母さんVol.4 _ NPO法人こまちぷらす代表 森祐美子さん

私がNPO法人こまちぷらす理事長の森祐美子さんと初めて会ったのは、昨年の夏、「みんなで話そう横浜での子育て ワイワイ会議」のキックオフワークショップの場でした。横浜で長年、特に子育て分野の市民活動支援に携わってきた米田佐知子さんに誘われて、横浜市で子ども・子育て新制度が横浜で本格的にスタートした今年、各区のキーパーソンたちで「子育て当事者の声を集めよう!」と、ワークショップを開催する活動に森ノオトを混ぜていただいたことがきっかけです。

場をとりまとめる森さんの知的な進行とユーモアたっぷりの語り口に、すっかり魅了されてしまった私。森さんは横浜市の子ども・子育て支援会議の市民委員として、子育て当事者の声を行政に届けようと、「よこはま子育てワクワク作戦」で市内の仲間たちと一緒に集めた1562件のアンケートをまとめたことがきっかけで、このワークショップが生まれました。

 

頭脳明晰で、行動力決断力にすぐれ、豊かなアイデア、とびきりチャーミングな笑顔の持ち主の森さんは、スタッフから言わせると「びっくりするくらいおっちょこちょいで、抜けているんです」とのこと!

頭脳明晰で、行動力決断力にすぐれ、豊かなアイデア、とびきりチャーミングな笑顔の持ち主の森さんは、スタッフから言わせると「びっくりするくらいおっちょこちょいで、抜けているんです」とのこと!

 

「子育てをまちでプラスに」を合言葉に戸塚区で始まったこまちぷらすでは、子育て世代の女性たちがイキイキと活躍しながらコミュニティカフェ「こまちカフェ」や、子育てひろばを運営しながら、子育て世代の女性たちがまちづくりに積極的に関わっています。同じく横浜のNPOの代表として、森さんのお話をじっくり聞いてみたいという気持ちが日増しに強くなり、思い切って戸塚を訪ねたのは2月の最後の日。この日もこまちカフェは、たくさんの母子で賑わっていました。

 

<子育て情報がほしい人に届ける仕組みをつくる>

 

トヨタ自動車の第一線で活躍していたキャリアウーマンの森さんが、通算4年間の育休と職場復帰を経て、社会起業家としてこまちぷらすを立ち上げたのは2012年2月のことです(NPO法人になったのは2013年。森ノオトと一緒ですね!)。第1子を出産して4カ月の2006年、社会と隔離されての子育てに孤独を感じ、社会との関わりに飢えていたという森さんは、保健師さんに手渡された「子育て支援拠点をつくるための意見を募集します」という1枚のチラシに導かれて「地域デビュー」を果たします。

子ども以外の誰とも会話しない、一人で鬱々と子育てにのみ向き合い日々が、その日から一変しました。「会議に出れば、地域のたくさんの方が、子どもを代わる代わる抱っこして、“かわいいね、かわいいね”と言ってくれる。“**ちゃんのお母さん”ではなく、“わたし”として発言できる場ができた」と感じ、「一人ではなく、誰かと子育てを分かち合う経験に、肩の力が抜けた」といいます。

 

レンタルスペースではリトミックやヨガ、ワークショップなど、さまざまな教室やひろばとして活用できる。取材の日は親子の音楽遊びがおこなわれ、賑やかな音が響いていた

レンタルスペースではリトミックやヨガ、ワークショップなど、さまざまな教室やひろばとして活用できる。取材の日は親子の音楽遊びがおこなわれ、賑やかな音が響いていた

 

また、森さんは、「子育て中のお母さんと出会いたいと思って、情報を探していたけれども、インターネットで自分の興味関心にひっかかる情報は県外や海外など、遠くのものばかり。戸塚の子育て情報に出会えなかったんです。ところが、一歩外に出たらたくさんのチラシがあって、そこに子育てサークルの情報が書かれているのに、それが必要な人には届いていないことがわかったんです」と、「情報を必要としている側と届ける側のミスマッチ」に気づきました。

「それらをつなげる何かができれば」と生まれたのが、こまちぷらすのホームページで発信している「地域子育てカレンダー」です。地域の子育て関連のチラシを100枚近くスキャンしてアップロードし、キーワードを打ち込んで、インターネットを通じて誰もが情報にアクセスできるようにしています。

 

こうした「子育て情報の見える化」から、さまざまな事業に発展し、2012年から2016年まで毎年発行してきた冊子『こまちぷらす』や、戸塚区役所の中にある子育て応援ルーム「とことこ」の情報スペース運営など、こまちぷらすの「情報事業」という柱ができています。これらの口コミ情報を集めたり、冊子の制作や編集、情報発信の運営は、子育て当事者たちがおこなっています。

 

<「責任」の範囲に応じた、多様なはたらきかたを創造する>

 

こまちぷらすのもう一つの主軸事業が、コミュニティカフェ「こまちカフェ」の運営です。「人と人をつなげ、情報を発信する公的な“ひろば”と、誰もが集える民間の“カフェ”が一体になった機能をもつ場をつくりたい」との思いから子育て中の親子向けの「ひろばカフェ」としてこまちカフェを2013年にオープンします。

 

こまちカフェのランチは、乳製品や卵アレルギーのお子さんに配慮した野菜中心のメニューで、とてもヘルシー。一番人気の「こまちの畑プレート」は、スープがついて1250円(税抜)。ドリンクとスイーツ付きで1500円(税抜)

こまちカフェのランチは、乳製品や卵アレルギーのお子さんに配慮した野菜中心のメニューで、とてもヘルシー。一番人気の「こまちの畑プレート」は、スープがついて1250円(税抜)。ドリンクとスイーツ付きで1500円(税抜)

 

飲食店経営の経験ゼロ、資金もない、そんな「ないないづくし」の中で、カフェの立ち上げは苦難の連続でした。場所や形を変えながらも、「ひろばカフェ」のコンセプトだけは譲らず、今の場所でこまちカフェが軌道に乗るようになっても、試行錯誤は続いています。

 

キッチンではスタッフがテキパキとはたらいている。ランチを1時間半の2交代での予約制にしたことで、来客数も時間も読めて、ロスが少ない

キッチンではスタッフがテキパキとはたらいている。ランチを1時間半の2交代での予約制にしたことで、来客数も時間も読めて、ロスが少ない

 

戸塚駅から歩いて7分ほどのこまちカフェは、ビルの2階にあって、自然素材のぬくもりあふれるカフェとボックスギャラリー、音楽教室や体操などができる広々としたレンタルスペース、打ち合わせ・事務所ワークスペースがある、とても広い空間です。子育て現役世代の女性を中心とした50人ほどが関わり、3名の常勤スタッフ、11名の非常勤スタッフと、有償・無償のボランティアがいます。

「ボランティアとスタッフの違いは、運営に責任を持つかどうか。企業での働き方は1か0しかないけれども、人によっては0.3や0.7など、多様な働き方があってもいい。その受け皿をつくりたいと、責任の度合いに応じた賃金と働き方のペースをつくってきました」と森さんは言います。

例えば、カフェの運営では、キッチン、ホール、こまちカフェ独自の子どもの見守りスタッフなど常時4-5名ほどのメンバーが働いていますが、「地域の仲間として参加したい」「子育て中でも社会と接点を持ちたい」という動機で加わった人から、「お客様に必ず食事やサービスを届けなければならない」という責任感をもった人まで、さまざまなグラデーションの働き方を選べる仕組みになっています。

 

有償スタッフがこまちぷらすの屋台骨になり、毎月、人材育成の時間を設けて、個人と団体のミッションの接点を持ち、組織としての成長を目指しているとのことです。

 

カフェの窓際のベンチは、お子さんが自由に絵本を読んだり、巨大な立体パズルで遊んだり、秘密の隠れ家スペースがあったり。子どもの見守り担当スタッフがついているので、お母さんたちも気兼ねなくおしゃべりができる

カフェの窓際のベンチは、お子さんが自由に絵本を読んだり、巨大な立体パズルで遊んだり、秘密の隠れ家スペースがあったり。子どもの見守り担当スタッフがついているので、お母さんたちも気兼ねなくおしゃべりができる

 

こまちぷらすでは、こまちカフェ運営の経験、ノウハウをすべて注ぎ込んだ冊子『ひろばカフェをつくろう』を今年2月に出版したばかり。詳しくは本書に譲りますが、「何もノウハウがなかったからこその失敗、紆余曲折があったけれども、それでも居場所をつくっていけるんだということを知ってもらえたら。行政に施設をつくってもらうのを待つばかりではなく、地域ごとにみんなが歩いて行ける場所にひろばが生まれるようになれば、子育てしづらさが変わってくるかもしれない」(森さん)との思いが込められています。

 

『ひろばカフェをつくろう』の執筆、編集を手がけたスタッフの山田顕子さん。冊子『こまちぷらす』の編集など、情報発信事業を一手に引き受ける

『ひろばカフェをつくろう』の執筆、編集を手がけたスタッフの山田顕子さん。冊子『こまちぷらす』の編集など、情報発信事業を一手に引き受ける

 

 

<子どもや母親をあたたかく包み込む、そんな社会をつくりたい>

 

そんなこまちぷらすでは、今年、新しく「ウェルカムベビープロジェクト」という活動をスタートしました。こまちカフェを立ち上げるときに、横浜市都市整備局の「ヨコハマ市民まち普請事業」を活用したことがきっかけで企業マッチングの機会を得て、ヤマト運輸神奈川主管支店との結びつきが生まれました。

「宅配や見守り支援という形で地域貢献を考えているヤマト運輸さんと組むことで、場にしばられる拠点事業の限界を突破する可能性がある」と、北欧の事例を参考に、出産後間もない地域のお母さんに出産祝いのギフトを送る取り組みを始めます。ギフトボックスの中には、メッセージカード、地域の方が手縫いしてつくった「背守り」と、親子遊びが楽しくなるグッズ、地域の情報やお母さんのリフレッシュサービスのチケットなどが梱包される予定とのことです。

 

「ヨコハマ子育てワクワク作戦」で集めた1500以上のアンケートに、「地域で子どもを産み育てやすい、社会のあたたかな目が必要」という、切実な声がもっとも数多くありました。まずは、地域の企業・商店会・自治会の方々の応援を集め、「子どもの誕生をみんなで祝福する文化」を横浜・戸塚から始めていくといいます。

 

ボックスギャラリーでは地元の手仕事作家さんの作品を手頃な価格で手にいれることができる。小さな家賃収入を積み重ねることで、組織基盤の安定をはかっている

ボックスギャラリーでは地元の手仕事作家さんの作品を手頃な価格で手にいれることができる。小さな家賃収入を積み重ねることで、組織基盤の安定をはかっている

 

このように、先駆的なモデルになるような事業をたくさん立ち上げて、運営している森さんですが、「わたしは、社会を変えよう! という動機からこまちぷらすを始めたわけではなく、自分の身の回りから子育てがハッピーになっていけばいいな、という思いが最初にあるんです。わたしたちの子どもが大人になる頃には、子育てを周りから支えてもらえる社会になることを目指しています」と、あくまで自然体です。

「参加のしやすさが、わたしたちの原点です。子育て世代が、社会とのゆるやかな関わりを持ち続けられるよう、さまざまな入り口をつくっていきたい」

そう話す森さんと、多彩なスキルと責任感を持って場を育み生かしていくスタッフのみなさんに、同じ横浜のNPOとして心からのエールを送り、今後もお互いに切磋琢磨しあいながら良き仲間として、楽しくあたたかな社会をともに作っていきたいと感じました!

インタビューを受ける時もつい手が動く森さん。ファシリテーション技術に長けていて、チームの力を高める手腕がうかがい知れる

インタビューを受ける時もつい手が動く森さん。ファシリテーション技術に長けていて、チームの力を高める手腕がうかがい知れる

インフォメーション

地域を耕す母さんVol.4 _ NPO法人こまちぷらす代表 森祐美子さん

NPO法人こまちぷらす

(こまちカフェ)

URL: http://comachiplus.org

住所: 横浜市戸塚区戸塚町145-6 奈良ビル2F

営業: 11:00-14:00(ランチタイム)、14:00-17:00(ティータイム)

予約専用電話: 070-5562-9555

ウェルカムベビープロジェクト

http://welcomebabyjapan.jp

ライター紹介

北原 まどか

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山形出身で月山から名前を受ける。2004年より青葉台暮らし。地域新聞記者・エコ住宅雑誌の編集部を経てフリーに。地球温暖化対策専門メディアの取材班、生協の広報、地域情報雑誌の編集など、暮らし・食・子育て・地球環境・エネルギーをテーマに執筆活動を行う。2009年に長女を出産後、地域で仕事をつくり、つなごう!と、『森ノオト』をスタート。3.11を機に足下からのエネルギーシフトを目指す市民団体「あざみ野ぶんぶんプロジェクト」を立ち上げ、活動は市民電力会社「たまプラーザ電力」へと続く。著書に『暮らし目線のエネルギーシフト』(コモンズ刊・2012年)がある。  ■オフィシャルサイト「http://tecology.strikingly.com

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