ワイン好きのための隠れた聖地、青葉台「エスポアしんかわ」
店内へ入ると、棚に所狭しと並ぶワインが目に飛び込んでくる。自然派ワイン以外のワインも厳選されたものばかり。棚上には、現地生産者との思い出の写真が並ぶ
青葉台駅から徒歩3分、ワインボトルの形をした看板とともに大きな“自然派ワイン”の文字が目立つ酒屋さんがあります。その何ともいえぬ佇まいから、入るまでに戸惑いながらも一歩足を踏み入れると、そこにはワインの魅力が詰まった世界が広がっていました。青葉台「エスポアしんかわ」にようこそ。

私は、ワインがとても好きです。畑から獲れたぶどうが酵母の力によって、ワインへと変化していく過程が神秘的であり、その結果として生まれた産物がこんなにも美味しいもの(ワイン)へと変化していくことにとても驚きます。

ワイン好きの方でなくても、“オーガニック”“ビオ”などといった言葉を聞く機会は多いと思います。いずれも有機農法を意味する言葉ではありますが、ワインの世界でも、オーガニックワイン、ビオワイン、そして、更には“自然派ワイン”と呼ばれる様々なワインがあります。

 

ところで、この“オーガニック”“ビオ(*)”には国や地域ごとに様々な認証制度がありますが、ワインでは原材料となるぶどうがオーガニック農法で作られていることを示すものであり、醸造については何ら規制するものではありません。

*ビオは、正確にはビオロジックとビオディナミに分けられます。ビオロジックはオーガニックと同じ意味で用いられ、ビオディナミはそこに月の満ち欠けで農業のスケジュールを決める農法のことを指します

 

一方で、自然派ワインというのは、その土地(ぶどう)にいる天然の酵母(野生酵母)を用いてぶどうを発酵させ、できる限り酸化防止剤(亜硫酸船)の添加を抑えるなどして造られたワインであり、ぶどう栽培はもちろんのこと、醸造においてもよりナチュラルに、より本来の素朴なワイン造りをめざしているものだといえます。

 

ワイン造りに限らず、チーズや味噌、日本酒などといった発酵食品の風味というのは、その地域に住む微生物(酵母)の力によって様々な味へと変化していくものだと思います。大量生産をする上で培養酵母を用いることがやむを得ない場合もありますが、やはり、ワインにおいても、その土地ならではの味わいを持つものにとても魅力を感じています。

こうした中、ワイン、特に“自然派ワイン”にこだわる酒屋が青葉台にあることを知り、時々、足を運ぶようになりました。それが、「エスポアしんかわ」です。

黄色い「ESPOA」の文字、窓越しにはワインボトルがずらりと並ぶ店内が見える。ただ者ではないその雰囲気に、美味しいワインとの出会いの期待が膨らむ

黄色い「ESPOA」の文字、窓越しにはワインボトルがずらりと並ぶ店内が見える。ただ者ではないその雰囲気に、美味しいワインとの出会いの期待が膨らむ

 

店内へ入ると、棚に所狭しと並ぶワインが目に飛び込んでくる。自然派ワイン以外のワインも厳選されたものばかり。棚上には、現地生産者との思い出の写真が並ぶ

店内へ入ると、棚に所狭しと並ぶワインが目に飛び込んでくる。自然派ワイン以外のワインも厳選されたものばかり。棚上には、現地生産者との思い出の写真が並ぶ

 

エスポアしんかわの店主である竹之内一行さんが、お父様からお店を受け継いでから約20年。もともと飲食店勤務の経歴もあり、知人を訪ねて渡仏した際に、いわゆるブランドワインではなく、“自然派ワイン”といわれるものを含めた、安くて美味しいワインがたくさんあることを知り、ワインに惹きつけられていったそうです。それ以来、機会があれば現地生産者を訪ね、交流を深めていきました。

竹之内さんにワインの現状についてお話を伺うと、残念なことではありますが、オーガニックワインやビオワインといわれる中には、認証を取ることだけを目的にし、醸造にはあまりこだわらない生産者もいることも確かだそうです。一方で、自然派ワインには特に認証制度もないため、逆に生産者からすると「昔からおじいちゃんがやってきたことを同じようにやっているだけ。これは私たちにとっては普通なことであり、逆に“自然派”といわれてもピンとこない」

という生産者が多いといいます。

“自然派”という言葉自体も、つくられた言葉であって、そこでは昔から変わらぬワイン造りを続けている、ただそれだけなのかもしれません。

「自然派と言われるワインは、畑で無理にぶどうをたくさん実らせようともしないし、色素を無理に抽出しようともしないので、淡く飲み心地も軽い、しかし、ぶどう本来の味わいはしっかりと残ったワインを造ることができる。だから、昔のワインは、たくさん飲めたし、悪酔いもしなかったのです」

竹之内さんの言葉に、深くうなずくばかりでした。

竹之内さん思い出のワイン「シャポー・ムロン」。あまりの美味しさに「脱帽した!」の意味と、ムロン・ド・ブルゴーニュ(ミュスカデ)という品種名、そして「山高帽」の意味をかけ合わせた名前。造り手は、純粋にワイン造りに取り組むマルク・ペノ。熱狂的なファンがいる自然派ワインのひとつ。エスポアしんかわの看板にもなっている

竹之内さん思い出のワイン「シャポー・ムロン」。あまりの美味しさに「脱帽した!」の意味と、ムロン・ド・ブルゴーニュ(ミュスカデ)という品種名、そして「山高帽」の意味をかけ合わせた名前。造り手は、純粋にワイン造りに取り組むマルク・ペノ。熱狂的なファンがいる自然派ワインのひとつ。エスポアしんかわの看板にもなっている

 

店主の竹之内一行さん。ワインアドバイザーでもあり、「分からないことは、なんでも相談してください」と頼もしいひと言

店主の竹之内一行さん。ワインアドバイザーでもあり、「分からないことは、なんでも相談してください」と頼もしいひと言

 

私は、ワインがとても好きです。だからこそ、選ぶのはとても難しく、新しい1本にチャレンジをしてがっかりすることもあれば、思いがけなく美味しいワインに出会えることもあります。

 

竹之内さんとお話をしていて、はっきりと分かったことがあります。大手企業が造っている大量生産のワインが美味しくないといったことではなく、逆にオーガニックやビオの認証を受けているワインがすべて美味しいのかといったらそうでもない。要するに、造っている人がどういうワインを目指して、誠実にワイン造りをしているのかといったことが知りたいのだ、と。

 

それは、ワインのラベルを見ただけでは到底わからず、だからこそ、話をしながらそのワインの見えない物語を聞くことがワインを購入する時に、とても大切なような気がします。その生産者がどんな方なのか、どんな思いでワイン造りをしているのか、もしそんな話が伺えたならより一層ワインの楽しみが深まるように思えました。

 

「エスポアしんかわ」では、時々、店内でもワインイベントを開催しているとのこと。竹之内さんのワインにまつわる話を聞きながら、ワインとおつまみを楽しむ酒屋のなかのワイン「居酒屋」が目に浮かびます。「エスポアしんかわ」のようなお店が、自宅から歩いて行ける範囲にあったらどんなに幸せだろうか……。

 

その軽く、素直で、ぶどう本来の風味を味わえる昔ながらの“自然派”ワインは、出汁(ダシ)のきいた和食ともとても合うとのこと。ぜひ、「エスポアしんかわ」で新しいワインとの出会いを楽しんでみてください。

Information

エスポアしんかわ

住所:横浜市青葉区榎が丘13-10

TEL:045-981-0554

FAX:045-981-5344

E-mail:shinkawa@msj.biglobe.ne.jp

営業時間:10:00-21:00

Facebook:エスポアしんかわ

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この記事を書いた人
清水朋子ライター卒業生
食べること、つくること、ワインとチーズ、焼酎を愛する食いしん坊。雑木林のような豊かな庭、愛するアンティークに囲まれた自宅の一角で、集会所+ときどき、喫茶として「Glänta(グレンタ)」を主宰している。小さな家の隅々まで愛おしみ使い尽くす、センスのよい暮らしぶりが注目を集める。
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