我が「街のパン屋さん」。地元住民に愛され続ける、青葉台・「COPPET(コペ)」
青葉台のランドマーク的パン屋さん「COPPET(コペ)」。桜台交差点の角で、風景に溶け込むかのように佇んでいます。毎朝早くからパンの焼けるいいにおい。子どもたちも大人も、みんな「コペさんのパン」が大好き。青葉台に根っこをおろして約30年。いまも昔も変わらない、懐かしくてほっとする味。コペさんがどうしてこんなに青葉台の人に愛されているのか、その秘密に迫ってみました。

コペの定番・ホワイト食パン(1,5斤450円)。最高級の小麦粉と国産バターで香り豊か、ふんわりとしたコクがある

 まあるい目と人懐っこい表情。朝4時に起きてパンを仕込み、焼き、7時過ぎには最初のお客さんがやってきます。「いらっしゃいませ」。明るい笑顔でいつも私たちを迎えてくれる「街のパン屋さん」、コペの奥山誠さん。小さな子どもから、開店当時からの常連のお客さんまで、みんなが「コペさん」と呼んで親しんでいます。

 

コペの2代目店主・奥山誠さん。人懐っこい笑顔で「コペさん」と呼ばれ街の人に愛されている

 いまからさかのぼること27年前、高校生だった奥山少年は、自分の進路について想いを馳せていました。将来、どんな仕事に就こうか。コックさん、消防士……あれこれイメージがふくらみます。その時左手に持っていたのが、コペのパン。「そうだ! パン屋になろう」。そう決めたら一直線、コペの門をたたきバイトを始め、高校卒業後はパンの専門学校で学び、朝から晩までパン漬けの日々を送っていまに至ります。

毎日50種類はつくるというパンにはそれぞれレシピがあって、使う粉や配合なども異なるという

 奥山さんも30歳を過ぎベテランになり、パン屋として独立を考え始めるようになったころ。コペの創業者で最も尊敬する師匠から「お店を継がないか」と打診されました。コペはこの地域の中では規模が大きく、何人ものスタッフが一日中パンを焼いています。「自分ができるのだろうか」と迷ったものの、街角にあるコペがこの先もずっと人々に愛される未来像が、奥山さんの心の中ですでに出来上がっていました。コペを舵取りするようになって9年。「ようやく街の子どもたちに“パン屋のおじさんだ”と認められてきたのかな」と、はにかみます。

 

奥行きのある店内。お昼時になるとお惣菜パンがずらりと並ぶ。地域活動を応援するウォールポケットも。情報の交差点?

 天然酵母やハード系など、本格的なグルメ志向のパンが人気の昨今、コペのパンはとても素朴で食べやすい。子どもが小銭をもって、一人でも買いにこられるような、やさしいパン。

 奥山さんのおすすめは「クリームパン」。一口目からクリームがこぼれ出てくるような、たっぷりとしたボリュームで、思わず笑顔までこぼれてしまいます。甘いパン、お惣菜パン、ベーシックな食パン、バゲット、雑穀などを練り込んだ日替わり食パン……1日に焼くパンの種類は、50は優に超えるそうです。

 

点内にはイートインスペースも。買ったパンを人数に応じて切り分けてくれるサービスもある。子どもたちはみんなコペさんのパンが大好き

 奥山さんがパンづくりで大切にしていることは、「なるべく手でつくれるものは、自分でつくる」ということ。カレーパンのカレー、クリーム、お惣菜、フルーツのトッピング……オリジナルレシピで様々な種類のパンを生み出しています。野菜はお隣の八百屋さんから。「八百屋のおじさんは目利きで、旬のいちばん美味しい野菜を集めてくる」。ハムやカツ、コロッケなどは、以前青葉台商店街に店を構えていたお肉屋さんから直接仕入れています。

 

 毎日たくさんのパンを焼いて、種類もたくさんあって、それでも毎日楽しくパンを焼き続ける奥山さん。パンは発酵が命で、気温や湿度、それからつくる人の経験で大きく左右されます。「こんなパンを焼きたいという理想を描き、長年の経験とカンでパンを形にしていく」と、パンづくりの秘訣を奥山さんは語ります。

 パンによって幾種類もの粉を変え、バターや水や塩の配合も変えていく。シンプルなパンほど粉が重要で、パンのボリュームや風味が変わります。経験の蓄積とイメージ力、そして常に挑戦する姿勢で生み出される様々なパン。毎日食べても食べ飽きず、食べるほどに発見があるのは、「変わらない安心感」と「よりよいものをつくっていく進化」がつねにあるから、かもしれませんね。

 

桜台の交差点にあるCOPPET。街の風景としてすっかり溶け込み、いまや青葉台のランドマーク的存在

 「変わらない、街のパン屋さん」が、最近、ちょっとだけ変わりました。震災ちょっと前から始めたTwitterFacebookを使って、自らお店の情報を発信するようになりました。

 Twitterで毎日、いま焼いている、あるいは焼きたてのパンのイメージを伝え、コペさんのファンのお客さんがその情報をキャッチして買いにくる。「美味しかった」とリプライがある。「ソーシャルメディアで、人と人とのつながりが目に見えてわかるようになって、とてもおもしろい」と、瞳を輝かせて語る奥山さんです。

 最近は、地元の異業種間でのつながりも増え、先日コペのカフェスペースでライブをやるなど、新しい取り組みも始まっています。

 「青葉台の街って、毎日どこかで楽しそうなことをやっている、そんな風に思ってもらえるといいですよね」

 パントマイムや路上ライブ、大道芸など、人が喜ぶような小さなイベントがあちこちで催されていたり、商店街のガードレールにオブジェが飾られていたり、歩道に絵が描かれていたり……奥山さんの目には、青葉台の街が賑やかに楽しく彩られ、人々が笑顔で往来する風景が浮かんでいるようです。

 「街のパン屋さん」は、誰よりも街を愛し、夢を語る、少年のような瞳をもった人。ソーシャルメディアを通じて、夢を一緒に実現する仲間が少しずつ増えてきています。これから、ますます青葉台が素敵な街になりますね!

 

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* キタハラ’s eye*

森ノオトで「食べある記」コーナーの記事を書くたびに、「オーガニックって、何だろう」と考えます。無農薬や無肥料、有機栽培(しかも認証されている)の野菜を使い、調理する。パンだったら有機小麦、海の塩、天然酵母……といったイメージが想起されます。そのポイントを追求することはもちろん大切なのですが、「オーガニック」という定義をもう少しおおらかにとらえたい、といつも思っています。

私が言葉として使う「オーガニック」は、「有機的な関係性を生み出すおこないそのもの」をさします。地域のなかで人と人が有機的につながり、地域の経済が活性化し、みんなが笑顔になれる社会。そこから徐々に、素材のオーガニックの裾野が広がっていけば、なおいい。クロスロード(交差点)で人と人が行き交い、すれ違った時にふっと笑みを交せるような、街。

それを生み出すパン屋さん、COPPET。だからコペさんは、わたしにとってスペシャルな「オーガニックな空間」。ムスメが大きくなって、そのまた子どもと一緒に、ずっと通い続けたい大好きなパン屋さんです。

 

おまけのサービスショット……すっかり青葉台の名物になった、奥山さんの海老フライ姿。よこはまハロウィンの時にはこの出で立ちで子どもたちにミニドーナツをプレゼント

Information

BAKEHOUSE COPPET

 

住所:横浜市青葉区青葉台1-29-3 

TEL045-955-2466

OPEN:パン販売7:3019:30、カフェ9:0018:00

定休日:毎週水曜日

アクセス:東急田園都市線「青葉台」駅より徒歩8分 →Google Mapで見る

 

http://www.coppet-nyon.com/

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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