旬の食材も人も地域もよみがえる藤が丘・REVEVE RECIPE TENZO
藤が丘の地産地消イタリアンの名店「ナチュラーレ・ボーノ」の植木真さんが、満を持して始めた地産地消デリ「REVIVE RECIPE TENZO」。地元の数十にのぼる提携農家が生産する旬の野菜は、時に傷つき、余り、商品として売れないものも。それを引き取り新しく惣菜としてよみがえらせ、地域の食卓を豊かにしています。植木さんの思いは、野菜だけでなく、「人」にも向いています。

REVEVE RECIPE TENZO(リバイヴ・レシピ・テンゾ、以下テンゾ)は、東急田園都市線藤が丘駅からもえぎ野公園方面に3分ほど歩いたところ、国道246号線の高架をくぐってすぐのところにあります。テンゾは横浜市の「平成24年度地産地消ビジネスモデル支援事業」にも選ばれ、オープン前から注目を集めていました。

 

夕暮れ時、仕事帰りと思われる女性たちがひっきりなしに訪れ、あれこれと立ち話をしてはお惣菜を何品か選んでいきます。

 

メニューは、車麩のカツ丼や、旬の彩り野菜がたっぷり入ったお弁当、おにぎり、ビスコッティ、筍のカポナータ(トマト煮)や青菜の白和え、クスクスのサラダ……「いまのところ毎日30種類は出しています。1日1、2品は新しいメニューを入れています。それこそ毎日いろんな野菜が手に入りますから」と、オーナーの植木真さん。

 

今後、パンの素材は地元・青葉区田奈産の小麦粉を使っていくそう

 

テンゾは、横浜の地産地消の名店として知られるイタリアンレストラン「ナチュラーレ・ボーノ」の姉妹店です。青葉区・都筑区・緑区・港北区を中心とした農家数十軒、そしてJAの直売所などから、毎日新鮮な旬の野菜を仕入れて、その日採れたばかりの素材と向き合い、その日のレシピが生まれます。

市場で販売される野菜は、見た目も形もキレイなものばかり。形が不揃いであったり、大きさがまばらであるもの、傷がついたものなどは「商品価値がない」と廃棄されたり、農家の方がかろうじて自家用で食したり、加工品にして販売することもありますが、すべて使い切れるわけではありません。

 

「旬の野菜がたくさん採れるのは当たり前。農業は自然が相手だから、傷がついたり、大きさが不揃いなものだってある。見た目だけの問題で味は変わらず、むしろ採れたてで美味しいのに、廃棄されるなんてもったいない」

 

こうした野菜を安価で引き取ってお惣菜にして売れば、野菜についた傷も不揃いの形も、まったく気になりません。つくり手がわかり、安心して食べられる美味しい野菜を、一つひとつていねいにレシピ開発し、手づくりしている「安心・安全」なお惣菜を提供して、廃棄される野菜を「よみがえらせる」コンセプトでスタートしたのが、テンゾなのです。

 

ほうれん草一つとっても、旬の時期はたくさん採れて、のびすぎなものも出てきます。定番の白和えや、ピビンバの具材、パンに練り込んだりして、様々に展開して、無駄なく余すところなくいただきます!

 

大人気の車麩丼(500円)やピビンパ丼(450円)、お弁当(700円)など、ランチにもぴったり

 

店名の「テンゾ」は、禅宗で食事を担当する修行僧の役職名「典座(てんぞ)」に由来します。禅宗の宗祖である道元師がいまから約1200年前にまとめた『典座教訓』にある教え……食材の効能や旬などの知識を兼ね備えた典座が、食べる人のことを第一に考え、食材一つひとつのいのちを大切に扱い、その時その人に最もよい食べ物を供する……その姿勢で、地域の人々に日々の食を提供したいという思いから名付けたそうです。

 

毎日、地元の農家の元に足しげく通う植木さんは、天候や土と対話しながら、大切につくられた野菜たちの尊さを知っています。いのちある野菜をなるべく早く、しかも素材が生きる形で、地域の人々の元に届けたい。テンゾのお惣菜は文字通り、現代版「一里四方」から集められています。地域で採れた旬のものを食べて、自然に心身をととのえる。まさに「身土不二」ですね。

 

お惣菜の販売は今後、量り売りや、タッパーの持ち込みにも対応していくとのこと

 

そして、お店の冠でもある「REVIVE RECIPE」。日本語に直すと「よみがえりのレシピ」ですが、これは植木さんが、捨てられるような野菜をよみがえらせたいという思いと、もう一つ、地域で自分らしくイキイキと働きたい人たちに、テンゾでその能力を生かしてもらうことで、眠っている才能をよみがえらせたいという気持ちが込められています。

 

テンゾのスタッフは、地元の主婦を中心にたくさんのメンバーが在籍しています。料理教室に通っていてプロ級の腕前を持つ主婦、毎日家族のために温かいごはんをつくり続けている主婦、野菜ソムリエの資格を持つメンバー、そして高校生もいます。

 

就職を希望する地元の高校生に、有給で職業体験のプログラムを提供し、研修を終了後はアルバイトとして採用するという、アルバイトとインターンシップを組み合わせた「バイターン」。卒業後の進路に悩む高校生たちの新たな人材発掘につながる制度として注目を集めています。

 

「テンゾの高校生スタッフは、とてもがんばっていますよ。料理の技術も覚えながら、学業と両立させようという一生懸命な姿を見て、私たちも励まされます」と、植木さん。

 

主婦や高校生が、1日2時間でも、3時間でも、テンゾという職場で自分の好きな「料理」という実業を通じて、人に喜ばれ、そしてきちんと収入も得ていく。レシピの開発は現在ナチュラーレ・ボーノのシェフが担当していますが、スタッフみんなで話し合って、様々にアイデアを発展させる場面も増えているそうです。

テンゾのオーナー・植木真さん。店頭でお話をしている1時間、街行く人たちに気さくに声をかける姿が印象的だった

 

テンゾがスタートしてまだ1カ月。やりたいことは次々に浮かんでくる、と植木さん。

 

「糖尿病対策のカロリー表示や、野菜をつくってくれる農家さん情報、アレルゲンの情報などを公開していって、さらにお惣菜のレシピや、時にはお店のお客さんと一緒にメニューを開発したり……。地産地消の料理教室なんかもいいですね」

 

野菜の生産者、お惣菜のつくり手、そして食べる人がとても近い藤が丘。食材のいのちが一直線に私たちのいのちに移り、カラダも心も「よみがえる」。今夜もそんなレシピを我が家に持ち帰り、家族みんなで笑顔で食いただきたい。そんな風に、毎日のようにふらりと立ち寄りたくなるお店です。

 

 

madoka’s eye

『よみがえりのレシピ』と聞いてピンときた人もいるかもしれません。山形県の農家に受け継がれてきた在来作物の種と、それを現代の料理によみがえらせる天才シェフの取り組みを追ったドキュメンタリー映画『よみがえりのレシピ』。
風土に眠る文化が現代の多様性のなかで新たな価値を身にまとい飛び立っていく物語は、横浜で食と農をつなごうと日々誠心で働く植木さんの心によって、いまここで新しい展開を生み出しています。

 

藤が丘がいま、とても面白い街に生まれ変わっているとわたしは感じています。森ノオトでも「藤が丘」のエリアで検索すると、新しい文化の発信、多世代の交流、ココロのバリアフリー、若手商店主たちのアクションなど、ユニークな試みがたくさん生まれているのを感じます。

 

食を通じて人を、そして地域をよみがえらせたいという植木さんの思い。今後は森ノオトで定期的に連載も始まりますので、みなさん、お楽しみに!

Information

REVIVE RECIPE TENZO(リバイヴ・レシピ・テンゾ)
住所: 横浜市青葉区もえぎ野1-18
TEL: 045-973-9933
営業時間: 11:00〜20:00
定休日: 火曜日・日曜日
駐車場: なし

https://www.facebook.com/Revive.Recipe.TENZO

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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