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森ノオト編集部written by

【リポーター養成講座受講生修了レポート:及川佳代】青葉区の自宅を工房としている陶作家・川部知雄さん。彼の人柄を表しているかのように、ぬくもりとユーモアにあふれた作品が多くあります。そんな川部さんは、陶芸を通して地域との関わりを深め、中学生たちからは「先生」と呼ばれ親しまれています。

 

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地域のみんなの「先生」! 陶芸家 苫巣窯(とますがま)・川部知雄さん

青葉区荏田西の閑静な住宅街を歩いていると、遊歩道沿いの家の庭の一角に「苫巣窯」(とますがま)と書かれた趣のある緑色の小屋があるのが見えます。よくある○○教室と書かれた看板は見当たりません。実はここ、私の父母の友人である川部知雄さんのお宅です。何年も訪れていなかったのですが、陶芸を始めたということで、今回取材をすることになりました。

 

「ここは信州の山の中かしら」と錯覚を覚えてしまいそうな雰囲気。この工房は以前サンルームがあった場所で、その廃材も使用し、川部さんが一人で建てた

「ここは信州の山の中かしら」と錯覚を覚えてしまいそうな雰囲気。この工房は以前サンルームがあった場所で、その廃材も使用し、川部さんが一人で建てた

 

川部さんは、腎臓がんを発症したことをきっかけに2005年に長年勤めた会社を早期退職しました。退職前の2000年から陶芸教室に通いだしたことですっかりその世界にはまってしまい、その後世田谷にある祖師谷陶房で学びを深め、退職を機に陶芸の道へと本格的に進んだそうです。その後、横浜アマチュア陶芸展で入賞、札幌芸術の森の「クラフトで乾杯!」で入選、と活躍し、昨年の5月には、表参道で初の個展も開催しました。

 

広告代理店でバリバリ働いていた時代の姿は影を潜め、もうすっかり職人の顔

広告代理店でバリバリ働いていた時代の姿は影を潜め、もうすっかり職人の顔

 

川部さんは、昔からなにかと自分で作ってしまう人で、例えば、自宅の庭にBBQコーナーを作る際には庭を掘り起し、コンクリートを練り、レンガを積み重ねたり、サンデッキを作る際は木材を買ってきてサイズに合うように自分でカットし、ペンキを塗り、打ち付け、完成させたり、というこだわりの持ち主です。

陶芸の世界に入る際も、自宅の工房を手作りしたり、茶道具の制作のために茶道を、作品の筋書きに生かすため書道を習いに行ったりもしたそうです。そんなものづくりが大好きな川部さんにとって、陶芸は天職だったのかもしれないな、と私は感じたのですが、陶芸は川部さん本人も予期しなかった出会いをたくさんもたらしてくれたそうです。

 

この場所での作業と書道の墨をするときが、何ものにも邪魔されない唯一自分と向き合う時間だという

この場所での作業と書道の墨をするときが、何ものにも邪魔されない唯一自分と向き合う時間だという

 

モダンな作品から、伝統的な茶道具まで、多様な作風に、川部さんの懐の深さがうかがい知れる

モダンな作品から、伝統的な茶道具まで、多様な作風に、川部さんの懐の深さがうかがい知れる

 

ちょうど川部さんが陶芸を始めた頃、お子さんが通っていた市が尾中学校の地域開放の活動の一環で、「こねこね倶楽部」という陶芸活動が行われていました。当時の校長先生からのお誘いもあり、川部さんは、ご夫婦でこの倶楽部に参加するようになりました。それがきっかけで、中学校で年一回行われている「地域の人は先生!わくわく交流会」(地域の方が講師となり、生徒たちが自分の興味のある分野へ参加するという体験型授業)や美術の授業のなかで陶芸の講師をしたり、また、個別支援学級のクラスでも講師を務めたりしたそうです。

 

話している間に「ごはん茶碗でも作ってあげるよ」と、さっそく轆轤(ろくろ)を廻してくれ、あっという間に二作品を作り上げた

話している間に「ごはん茶碗でも作ってあげるよ」と、さっそく轆轤(ろくろ)を廻してくれ、あっという間に二作品を作り上げた

 

そんな話を川部さんとしていると、キッチンから「趣味でありながら人の役に立てることが嬉しいよね」と、奥さまの可愛らしい声が聞こえてきました。奥さまは、2人の子どもの子育てを終えて落ち着いた頃から、荏田西小学校の「はまっこふれあいスクール」で6年間活動をしていました。

「地域との関わりからどんどん輪が広がっていくのが楽しい」と川部さんは言います。「けれど、子どもたちから“先生”と呼ばれるのはなんだかね。“川部さん”て呼んでほしいのだけどなぁ」とも。こんな気さくな人柄が、きっと子どもたちから親しまれているのでしょうね。

 

最近では、あざみ野に住む会社の同期の方が実は苔玉作家になっていて、苔玉用の器を作ってくれる人を探しているということで、さっそくコラボレーションすることになったそうです。

 

苔玉の作品も工房の窓際に飾られていた

苔玉の作品も工房の窓際に飾られていた

 

最後に、私のような子どもがいる母でも「こねこね倶楽部」に参加することは可能ですか、と伺ったところ、「若い方も大歓迎です。ただ保育ができる場がないので、子連れは……」とのこと。週末の2時間くらいなら、父親に預かってもらえるかな、と、さっそく私も参加できる方法はないか考え始めてしまいました。

 

最初は、陶芸そのものへの興味があって取材したのですが、川部さんのお話をうかがっていると、地域との関わりってなんだか面白そう、私も地域の活動にもっと参加していきたいな、と思うようになりました。

 

退職しても、趣味を通して地域で新たな人間関係の輪が広がり、人生がさらに豊かになる。川部さんの生き方は、理想的だな、と感じました。川部さんのような、親でもなく先生でもない多様な価値観を持った大人に見守られている中学生も、幸せですね。

私自身も、地域との関わりを深め、新たな出会いを楽しんでいけたら、廻り巡って子どもたちの人生をも豊かにすることができるのかもしれませんね。地域との関わり方について陶作家である川部さんから学ぶことが、多くありました。

 

ライター紹介

森ノオト編集部

もりたろうは寺家ふるさと村に住むどんぐりの男の子。ひょうひょうとしたその風貌からもわかるように、根っからの風来坊。あくびをしたり、居眠りしたり、鳥の背中に乗って街に出て探検したり、レストランの野菜サラダに忍び込んでみたり。ひょっこりと画面のどこかに顔を出します。よろしくね!

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