
自然農を追求していくと、日本の村の環境が自然農に適した環境であったことがよく解る。畑の近くには森や林があり、枯れ草や落ち葉が豊富にあった。里山とは、現在のような杉やヒノキが植樹された森ではなく、広葉樹が適度に植わった雑木林のことだ。
最近、生物多様性という言葉をよく耳にするが、何事においてもいき過ぎや偏りがその環境を変え、生態系を壊す結果となる。寺家ふるさと村と、隣接する三輪の森の環境は、都心にありながら奇跡的に残された里山の環境と言える。
以前、自然農の稲の発育を見た地元の農家の方が、「肥料のやり過ぎじゃないか? 穂が重たくて倒れそうだ」と、忠告をしてくれたことがある。もちろん無肥料なのだが、三輪の森を透して流れ出る水は豊富な天然の肥料を含んでおり、それが1日の雨で、10日間の水が染み出てくる。これが天水田の素晴らしいところだ。
また、用水路がU字溝やコンクリートでないことも、田んぼの環境をよくしている。水路に適度な堆積物や草があることで、栄養分が流れず、そこに多様な生物が生息する。天水の田んぼでは年々ホタルが増え、ふるさと村で減っているのは、用水路の堆積物や草をきれいに取り除き、常に水が流れるようにしていることも原因の一つと言える。
水田は読んで字のごとく「水」の田だが、畑は「火」の田と書く。天から降ってくる栄養を含んだ水を土中に留め、余分な水は排水されるという土(保水性がよく水はけのよい土)が、畑の理想の土である。この理想の土にするために、私は山土で埋め立てられた畑に50tもの完熟堆肥を投入しているのだ。
今、耕作面積を減らしてでも、畑に小さな林をつくり、自然農に適した環境をつくろうと試みる生産者がいる。自然の恵みを無視し、農業の近代化を推し進めた代償は大きい。しかし、もう後戻りはできないなどと、諦めてはいけない。まだ間に合う。頭を切り替えることだ。生産者と消費者の垣根を超え、ともに生活者として智恵を出し合い、力を合わせれば、必ず、本来の自然に順応した農業のかたちを確立することができると、私は信じている。
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木村広夫(きむら・ひろお) |
| NPO法人農に学ぶ環境教育ネットワーク理事長。グラフィックデザイナーとして活躍後、1988年に岡田茂吉氏の「自然農法」に出会う。1995年、横浜市青葉区の「寺家ふるさと村」の休耕田で稲作を開始、自然農法農家として独立する。生命の学びの場として自然農の田畑を地域の人と共有すべく、2008年NPOを設立、現在に至る。 | |
| http://www.nounimanabu.net/ | |




