震災以降、私たちのエネルギーへの意識は大きく変わりました。これまで当たり前のように使ってきたエネルギーの大切さに気づくとともに、現在のエネルギーシステムの限界も思い知らされ、何ができるのか自問した人もいるのではないでしょうか。そうした中、港北区大倉山に誕生するマンションでエネルギーに関する新たな試みが導入されます。集合住宅では全国でも初のプロジェクトとのこと。もしかすると、私たちの今後のエネルギーとの付き合い方に解の一つを示してくれるかも……そんな期待を胸に、さっそく訪れてみました。

vol.3 エネルギーを地産地消する全国初のマンションが大倉山に誕生

2012.01.12

 

HEMS、MEMS、CEMSと連携しエネルギーを地産地消

 

さまざまな仕組みが用意されているパークホームズ大倉山。ここまで見ても、かなり先進的なエネルギーの利用ができるマンションであることがわかります。でもここからが、他にはない、このマンションの大きな特長。それは、省エネ設備を家庭でさらに効率よく使うための仕組み「HEMS*」と、マンション共有部の電力を上手にコントロールする「MEMS**」、そしてこれらを街全体のエネルギーをコントロールする「CEMS***」と連携している点です。一つずつ、具体例を挙げながら見ていくことにしましょう。

 

*ヘムス:Home Energy Management System

**メムス:Mansion Energy Management System

***セムス:Community Energy Management System

 

各戸に1台、タブレットが設置される。リアルタイムや日ごと、月ごとの消費電力量やCO2排出量がわかるほか、三井不動産レジデンシャルのサイト「すまいのECOチャレンジ」に参加すれば環境貢献ランキングなどにも参加できる。ポイントもたまり、エコグッズやららぽーと商品券などと交換することも可能だ

 

まずはHEMS。各家庭にあらかじめセットされているタブレット型のエネルギー表示機やTV画面で、エアコンなどの家電の消費エネルギーやCO2の排出量を具体的な数値として見ることができます。これがいわゆるエネルギーの「見える化」。見える化することで、節電意識が高まると同時に、「エアコンの暖房を使いすぎかな。早めにカーテンを閉めて設定温度を下げてみよう」などの具体的なアクションにも結び付けやすくなります。またHEMSでは、家庭内の家電をネットワークでつなぐため、タブレット型のエネルギー表示機や携帯電話などから遠隔操作することもできます。床暖房やエアコンの予約時間より帰宅が遅くなりそうな時などは、携帯電話から運転を停止させたり、設定温度を変えることなどもできてしまうわけです。エントランスの照明や空調、エレベーター、EV充電機など、入居者みんなで使うエネルギーはMEMSで見える化し、一部制御します。


左はHEMS対応型分電盤。10回路まで対応できるタイプ。右の小さな箱は、電力計測ユニット。HEMS導入には欠かせないアイテム

 

一方、CEMSは、夏場の日中や冬場の朝夜といった地域全体で電力使用が一気に増える時間帯などに、インターネット回線を使ってHEMSやMEMSに省エネを要請。すると、家庭ではHEMSがエコキュートの湯沸しタイミングをずらし、共用部ではMEMSが間引き照明やエアコンの省エネ運転への切り替えなどでエネルギー利用をコントロールします。小松原さんによれば、「パークホームズ大倉山は横浜市の行う〝横浜スマートシティプロジェクト″に参加している」そう。こうした一連のエネルギーマネジメントシステムの導入によって、「家庭単位だけでなく街全体の省エネにいかに協力できるかを、市民の方々に機会としてご提供できる」のだといいます。

 

横浜スマートシティプロジェクトは、平成22年4月に選定されたプロジェクト。横浜市と民間企業(アクセンチュア、東京ガス、東京電力、東芝、日産自動車、パナソニック、明電舎等)とで、再生可能エネルギーや未利用エネルギーの導入、一般世帯・事業者・地域でのエネルギーマネジメント、次世代交通システムなどのプロジェクトを行う

 

横浜スマートシティプロジェクトは、経済産業省の行う<次世代エネルギー・社会システム実証事業>の一環として、北九州市、けいはんな学研都市、豊田市の3都市とともに横浜市が採択の決定を受けて行っているプロジェクトです。それぞれ都市ごとに特長があるなか横浜市は、都市規模の大きさ、都市型・郊外型・工業型などのバラエティーに富んだ地勢を活かし、オフィスビルが多い「みなとみらい21エリア」、工場の多い「グリーンバレーエリア」、住宅が集中している「港北ニュータウンエリア」の3地域で、それぞれ最適なエネルギーコントロールを行いCEMSと連携させる計画です。パークホームズ大倉山は港北ニュータウンエリア内の一物件として今後、入居後の平成24年12月のから約2年間で電力使用のデータや入居者アンケートの収集・分析を行い、実証に貢献していくことになります。


三井不動産レジデンシャル 横浜支店 開発室 主査の小松原高志さん。パークホームズ大倉山の物件としての特長、エネルギー面での取り組み、デベロッパーとしてのビジョンなどを、流れるようにわかりやすく解説してくれる

 

大倉山をはじめ、森ノオトのカバーする田園都市エリアについて小松原さんは「文化度、コミュニティー度が高く、エネルギー関連への理解や重要度の認識の高い方が多いと感じています。成熟した地域という印象です」と語ります。今回、パークホームズ大倉山への関心も高く、第1期の販売はほぼ完売に近い状態とのこと。地域の商店街から「環境に配慮したマンションができるんだってね。期待しているよ」といった声が聞こえてきたり、港北区役所から地域情報誌での特集依頼があるなど、手ごたえを感じているそうです。「パークホームズ大倉山には最新の省エネ機器やエネルギーマネジメントシステムが入ります。ただ、それでも最後はやはり市民意識にかかっています。東芝さんのようなメーカーは技術革新で貢献し、弊社のようなデベロッパーはそうした技術を市民が取り組める場としていかに提供できるかが課題です。裏を返せば、それが地域や物件の特長にもなっていくので、今後もさまざまな業界と連携して価値を創造していきたいと思っています」

 

エネルギーを自ら創って、ためて、それらをITで相互にコントロールする時代――まだ先の話だと思っていたことが、すぐ手の届くところまで来ているんですね。パークホームズ大倉山の実証結果を楽しみにしつつ、追随するマンションやコミュニティーの登場にも期待したいと思います。

 

**LINK**

 

パークホームズ大倉山

http://www.31sumai.com/mfr/F0914/

三井不動産レジデンシャル

http://www.mfr.co.jp/

 

取材を終えて

人口増や経済成長などで世界的にエネルギー不足が心配されるなか、近年、「スマートグリッド」という、ITを介してエネルギーを効率的に使うシステムがにわかに注目されるようになりました。そんな折に起きた東日本大震災。これまで電力不足などの心配はほぼないとされてきた日本でも、スマートグリッド、スマートシティ、スマートハウスの実現が急務となっています。そう、急務なのです……が、周りを見渡すと実証実験レベルのものが多いこと。海外では実証を飛び越して運用レベルに入っているものも多く、「石橋を叩きすぎでは?」と思うこともしばしばです。

パークホームズ大倉山は、YSCP実証事業の一環とはいえ、事実上運用レベルに近いもの。入居後、入居者の方々の印象や、導入するエネルギーマネジメントの効果がどのくらい出るのか、とても楽しみです。

 

個人でできる省エネには限界があります。その壁を超えるには、企業の力や社会システムそのものの転換が不可欠。今後も企業や団体のエコビジネスを追いかけて、ご紹介&応援していきたいと思います。

森ノオト編集部:中島まゆみ

横浜市緑区在住の環境ライター。雑誌やweb、新聞などで、環境・エコロジーに特化した取材・執筆活動を行っている。プライベートでは、土と緑が大好きな、ゆるベジタリアン。最近のマイブームは里山遊びで、新治地区にある旧奥津邸によく出没している。共著に『ちょっとエコわざ55』(中経出版)がある。

「なかじまゆ」http://nakajimayu.petit.cc/

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