
幼稚園ではまだ珍しい太陽光発電を、いち早く導入した「みたけ台幼稚園」。その効果は、単なる光熱費の削減だけでなく、未来の地球環境を担う人材を育てるという大きな役割にまで波及しています。期待に応えるかのうように、園児たちもエネルギーの不思議に敏感に反応し、行動にも変化が出てきました。そんな、ほほえましくも頼もしい、みたけ台幼稚園での取り組みをご紹介します。

「そら」と「べあ」と、すっかり仲良くなった園児たち。とびきりの笑顔がまぶしい。
2011年1月13日。澄み渡る青空の下、みたけ台幼稚園の園庭で子どもたちが、まっ白な2頭のシロクマの着ぐるみと楽しそうにたわむれています。その中に、ポケットからハンカチを取り出して着ぐるみの頬を一所懸命ぬぐう園児の姿が……。見れば、着ぐるみが涙を流しているではないですか。彼らの名前は、「そら」と「べあ」。再生可能エネルギーの普及・拡大を目指して活動する「NPO法人そらべあ基金」のメインキャラクターです。地球温暖化によって北極海の氷が溶解し、お母さんと離れ離れになってしまったホッキョクグマの兄弟、という設定で、お母さんを探して旅をしながら、太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及を呼び掛けています。
この日は、同基金による太陽光発電の寄贈式典の日。みたけ台幼稚園は、保育園や幼稚園に太陽光発電を無償設置するという同基金の「そらべあスマイルプロジェクト」に見事当選し、はれてこの日、最大出力3kWの太陽光パネルが設置されたのです。

応募総数265件、約88倍という高倍率を勝ち抜き、園舎の屋根に設置された太陽光パネル。ホンダソルティック社製
太陽光パネルが設置されたのは、職員室のある園舎の屋根。同じ建物の玄関には、発電量や送電の仕組みが一目瞭然のモニターが置かれました。太陽光の強さや発電した電気の量、自給率などをリアルタイムでチェックすることができます。
「エネルギーの話は、小さな子どもには難しい内容です。しかし、そらべあ基金の方々が、環境に関する絵本の読み聞かせをしたり、プロジェクターを使って太陽光発電の解説をするなど、わかりやすい環境教育を実施してくださったおかげで、設置直後から“今日は曇りだから電気ができないね”“もったいないから電気を消そう”“あたたかいから暖房はいらないよ”などの変化が子どもたちにあらわれています」
そう語るのは、みたけ台幼稚園で主事を務める木下泰さん。小さいながらも精いっぱい考え行動する子どもたちの様子を、うれしそうに話してくれます。
そらべあ基金の事務局からは、「みたけ台幼稚園のお子さまがそらべあをとても気に入ってくださって、“そらべあを応援したい”とお子様の名前でそらべあ基金の個人サポーターに加入してくださったんですよ」という心あたたまる話も聞こえてきます。そらとべあが運んできた太陽光発電は、園児たちの心に確実に変化をもたらしているようです。

人懐っこい笑顔が印象的な木下さん。みたけ台幼稚園の卒園生でもある。園長のお嬢さんと結婚してお子さんにも恵まれ、子どもたちに託す未来や地元青葉台のことを真剣に考える頼もしい存在だ。
みたけ台幼稚園はもともと、環境への取り組みにとても積極的な園。ビオトープの観察や田植えなどの自然体験に力を入れる一方で、2トン近くの雨水をためられるタンクを設置して水やりや散水に利用して、資源の大切さも伝えています。
エネルギーに関しても、今回の太陽光発電設置に先駆け、5年ほど前にNEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業で10kWの太陽光発電を導入しています。
「当園は、園児数約360名と青葉区では中規模の幼稚園です。自前の給食室などもあるため電力使用量は決して少なくありません。5年前に設置した10kWと今回の3kWを足しても、まかなえる電力量は全体の10分の1程度です。それでも長期的に見れば園にとってメリットがありますし、子どもたちの成長にもプラスに働くと信じています」と、木下さん。
環境への取り組みに前向きなのは、その教育方針と関係しているようです。“社会性や自主性及び協調性を育み良き友人となれるようにする”、つまり、相手の気持ちを思いやって行動できる人間になるということ。地球環境に対する取り組みも、それを伝える手段のひとつと考えています。
「幼稚園は、今後小学校などに進んで様々なことを学ぶための、階段の1段目。とても大切な最初の教育の場です。もしかすると成長するにつれ忘れてしまうかもしれませんが、大人になった時にどこかで覚えていて、地球環境や社会に貢献できる人に成長してくれればうれしいですね」(木下さん)
みたけ台幼稚園では今後もできる限り環境への取り組みを行っていきたいといいます。周辺には立派な並木も多く、秋から冬には落ち葉の量も膨大に。それを堆肥にして園児たちと野菜作りに活かすなど、具体的なアイデアもたくさん用意されているとのこと。そしてもちろん、太陽光発電の増設も。
園児たちの明るい声が響くみたけ台幼稚園の今後の取り組みが楽しみです。

園庭にあるビオトープ。放したメダカが卵を産んだり、秋にはヤゴの姿がみられたりと、小さな循環ができている。「園児たちには、小さな生き物の生き死にを含め、自分たちも自然の一部なんだと感じてほしい」(木下さん)

開園38年のみたけ台幼稚園。当時は周囲にたくさん残っていた自然も宅地化ですっかり消えてしまった。環境に配慮した園づくりで、自然を身近に感じ大切にする気持ちを育んでいる。
*Link*
学校法人原田学園 みたけ台幼稚園
http://www.kidslink.jp/mitakedai/
青葉区みたけ台1-1
Tel 045-973-0817
NPO法人そらべあ基金
再生可能エネルギーの普及拡大や子どもたち向けの環境教育を行うNPO法人。東日本大震災では被災地に、車体に太陽光パネルを敷きつめたソーラーパワートラックを派遣し、物資運搬や炊き出し、子どもたちへの絵本読み聞かせを行うなど、臨機応変な活動も精力的に行っている。
取材を終えて
震災や原発事故の影響で電力問題が深刻化している今、どんなエネルギーを選んでいくのか、私たち一人一人が真剣に考えるべき時が来ています。大規模集中型の電源に頼りすぎず、再生可能エネルギーのような分散型のエネルギーを増やしていくことも解のひとつかもしれません。
環境教育を考えたとき、じかに触れる生き物などの自然ももちろん大切ですが、小さな頃からエネルギーを身近に感じられる環境を用意していくのも大人の役目。みたけ台幼稚園はまさにそれを実践している場だと感じました。環境アンテナの高いみたけ台幼稚園が次に何に反応して取り組むのか、私のほうもアンテナをはって見守りたいと思います。
| 森ノオト編集部:中島まゆみ | |
横浜市緑区在住の環境ライター。雑誌やweb、新聞などで、環境・エコロジーに特化した取材・執筆活動を行っている。プライベートでは、土と緑が大好きな、ゆるベジタリアン。最近のマイブームは里山遊びで、新治地区にある旧奥津邸によく出没している。共著に『ちょっとエコわざ55』(中経出版)がある。 「なかじまゆ」http://nakajimayu.petit.cc/ |
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