公園や街路樹などにめぐまれ、あちらこちらで緑を目にする機会の多い横浜市。剪定で出る生木や生草、落葉の量も半端ではありません。緑区長津田町に会社をかまえる造園業者(株)植照(うえしょう)では、ともするとごみとして燃やさされていた木くずに少し手を加え、自然循環に戻す緑のリサイクル事業を同社の付帯施設)「緑の再生工場フォレスト横浜」で行っています。建築廃材などを含まない生木・生草のみのリサイクルチップは、その質の良さと多用途なことから、近年密かに注目を集めているようです。

vol.2 生木・生草の100%リサイクル

2011.08.25

通りに面して配された大木が、パッと目を引く工場の看板。工場のまわりはいつも、生木・生草の粉砕で発生する強い緑の香りに包まれている。

 

リサイクルというと何を思い浮かべますか? ペットボトル、新聞、牛乳パック……再商品化されるものは様々ですが、リサイクルを上手に効率よく行うために必要なことはたった一つ。きちんと分別することです。フォレスト横浜が行う一般廃棄物のリサイクルでも、それは同じこと。受け入れる廃棄物を、いわゆる生木・生草と呼ばれる木くずに限定することで、質の良い木質チップへと再商品化しています。

「私たちが受け入れている木くずの種類は、枝葉、幹、根、草、竹などで、それらをすべて細かなチップに粉砕し商品としてご購入いただいています。リサイクル施設には、産業廃棄物と一般廃棄物の両方の許可を得ている施設が多いのですが、私たちは不動産上の分類で一般廃棄物処理しか取得できませんでした。でもそれが今となっては、不純物が混ざらない純粋な木質チップ作りの必要条件となって功を奏しています。チップをご購入いただいた先からも、質に関して太鼓判を押してもらっているんですよ」

そう胸を張るのは、株式会社植照 取締役総務部長の石川藤敏さん。造園業を営む植照と、木くずリサイクルを行うフォレスト横浜を一手に掌握しています。

 

枝葉のチップ。できたチップの山からは、樹木の発する深い香りと湯気が立ち上る。温度は40度ほどあるといい、手で触れるとほんのりあたたかい

 

チップの主な販売先はバイオマス発電所、果樹園、牧場などで、発電の燃料や樹木の根もとを保護するためのマルチング材、堆肥の原料などに使われています。特に堆肥は、家畜の糞尿と混ぜると良質のものができるといい、牧場などを中心に横浜市以外からの引き合いも多いとか。年間約1万トンもの木くずを搬入しても、季節によっては需要に追い付かずチップが不足するほどだといいます。

 

チップの質の維持・向上には、細かな廃材管理が欠かせません。搬入された木くずに金属や石などの不純物が混ざっていないか人の手でていねいにチェックし取り除いた後、粉砕機にかけてチップ化。しなりが強く破砕が難しく受け入れを拒否する施設が多い竹も、通常より細かく粉砕できるスクリーン(網目)を使って対応するなど、フォレスト横浜では受け入れた生木・生草の100%リサイクルを実現しています。

 

中央の建屋に覆われた電気式樹木破砕機を囲むように、種類ごとに分類された生木・生草がストックされている。搬入された木くずはその日のうちにチップ化され、顧客のもとへ送り出さされる

 

一方で、生木や生草の中にはリサイクルに向かないものもあります。フォレスト横浜工場長の石井義孝さんによれば、街路樹や学校敷地内に多く見られるイチョウの落葉がまさにそれにあたるのだそう。

「イチョウの葉には、微生物の活動を抑制するフラボノイド類やテンペル類という物質が多量に含まれているため堆肥にしづらく、多くの場合は焼却や埋め立て処分にされているのが現状です。環境対策に熱心なお客様からの依頼をきっかけに堆肥化に取り組んだところ、竹よりも細かいスクリーンで裁断しながら同時にチップ表面に細かな傷を加えるという独自の技術を開発し、特許(※)を取得することができました。米ぬかや石灰窒素を混ぜると、一般的な堆肥と同じように5~6カ月の発酵で堆肥化することができます」(石井さん)

 

※特許発明者は、植照の親会社ともいえる相模原の造園業者・植藤 代表取締役会長 石川龍二氏

 

工場敷地内外には、イチョウ堆肥を使ったガーデニングコーナーが。イチョウ堆肥は、その特性からバラや菊の栽培に効果が強く出るという。工場入口では、1袋(2リットル)100円でイチョウ堆肥の販売も行っている

 

イチョウ葉堆肥の効果は、日本大学生物資源科学部への委託研究で、水はけ・通気性ともに高いことが実証されています。pHもほぼ中性、植物の成長に大きく影響する炭素と窒素の比率も良く、堆肥としての質の良さはお墨付きです。

「目下の課題は、イチョウ葉チップや堆肥の知名度を上げて利用先を拡大することだと考えています。需要が増えれば、年間約20トンという現在の処理量を大幅に増やすことができ、やむを得ず焼却・埋め立て処分されているイチョウ葉をより多くリサイクルできるようになりますから」

石井さんはさらに、「学校や工場などは敷地内のイチョウ葉でできた堆肥を同じ敷地内で活用すれば、生物多様性や資源循環の学習・PRにもなるのでは?」と提案。植物の成長だけではない、堆肥がもたらす環境学習的な価値や可能性についても示してくれました。

 

トラックで搬入する木くずは、地面に埋め込まれた量りで計量し受け入れている(単価等の詳細は要相談)

 

木くずリサイクルに熱心に取り組むフォレスト横浜は、造園業者である株式会社植照のリサイクル部門として機能しています。植照は、相模原市で80年にわたり造園業を営む植藤からのれん分けし平成8年に設立。市内外の官公庁施設、事業所、工場、マンション、個人宅などの造園を行う一方、3年前に木くずのリサイクル事業として「緑の再生工場フォレスト横浜」を立ち上げました。

「事業所などの維持管理等で出る木くずは一般廃棄物に分類され、専門処理業者に持ち込むなど適正処理することが法令上義務付けられています。私たちも例外ではなく、造園業で出る木くずの処理に年間400万円ほどかけていましたが、当時は横浜市内で木くずを専門にリサイクルする民間業者がなかったので、それなら自分たちでやろう!と事業化したのがきっかけです」(石川さん)

工場設立にあたっては、運転音の静かな電気式樹木破砕機を採用し、それをさらに建屋で覆うなど近隣への騒音に配慮。廃棄物処理事業に欠かせない周辺住民との関係も、地元自治会の清掃ボランティアへの参加や見学会の開催などで円滑な関係作りを心がけているといいます。

工場周辺には、バーベキューができる大きな公園やショッピングモール、ホームセンターなどが隣接しているため通行人も多く、立ち止まって興味深く工場内を覗く人の姿も時折みられるそうで、「そんな時は、手がすいていれば木くずリサイクルの説明をさせていただくこともあります」と石川さん。工場敷地内や工場わきの歩道で元気に育つ草花を見ると、なるほど納得。工場で働く人たちのあたたかい人柄がにじみ出ているような気がします。

近くに寄った際には、草木の香りに誘われて、少し覗かせてもらうのもいいかもしれませんね。

 

朗らかな笑顔が印象的な取締役総務部長の石川藤敏さん(右)と、職人気質を感じさせる工場長の石井義孝さん(左)。

 

 

*Link*


株式会社 植照

http://www.ueshow.co.jp/index.html

神奈川県横浜市緑区長津田町3641-1

TEL 045-924-6211

造園設計・施工・緑地管理、樹木リサイクル事業を行う。一般建設業(造園)、横浜市一般廃棄物(木くず)処分業第1307号、横浜市一般廃棄物(木くず)収集運搬業第1818号、神奈川県再生事業者登録第G00286号、ISO14001・2004認証取得。



取材を終えて

生活者の意識の向上や技術の進歩でごみの分別・リサイクルが進むなか、まだまだリサイクルしきれていないものも多くあります。家庭や事業所から出る木くずもその一つです。木くずは本来放っておけば朽ちて土に帰るものですが、都市部では剪定等で大量に発生するため悠長には待っていられません。フォレスト横浜のリサイクル事業は、そんな自然のサイクルに少し手を加えて早めてあげるというもの。大規模な施設や薬品などを必要としない、効率の良いリサイクルといえるのかもしれません。

フォレスト横浜では主に事業者の木くずを有料で搬入していますが、家庭から出る木くずも、持ち込めば10kg程度(150円)から受け入れてくれるそう。燃えるごみに出して税金で焼却処理するより有効では?と感じました。小さいながら我が家にも庭に草木があるので、次の手入れの際は持ち込んでみたいと思います。

森ノオト編集部:中島まゆみ

横浜市緑区在住の環境ライター。雑誌やweb、新聞などで、環境・エコロジーに特化した取材・執筆活動を行っている。プライベートでは、土と緑が大好きな、ゆるベジタリアン。最近のマイブームは里山遊びで、新治地区にある旧奥津邸によく出没している。共著に『ちょっとエコわざ55』(中経出版)がある。

「なかじまゆ」http://nakajimayu.petit.cc/

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