「北極」というと何を思い浮かべますか? シロクマ、アザラシ、そして氷の世界……。ぼんやりとしたイメージはあっても、実際どのような場所なのか、そこで何が起きているのか、私たちにはなかなか知る機会がありません。まして、近年ささやかれている地球温暖化の影響についてはなおさら。

そこで今回、横浜市の市民参加型プロジェクトYES(※)の一環として開催された、北極冒険家・荻田泰永さんによるトークイベント「北極徒歩冒険で見た、北極の今」に参加。荻田さんの目から見た北極の姿とその変化を伝えてもらいました。

(取材・文 中島まゆみ)

 

※ YES(イエス)とは? ヨコハマ・エコ・スクールの略称。『横浜で地球を学ぼう』をキャッチフレーズに、市民・市民活動団体・事業者・大学・横浜市が実施する市民参加型プロジェクト。様々な学びの場が提供されている。平成21年度に開校し、初年度は114講座を開催、約5千人が参加している。

横浜YES講座、北極冒険家・荻田泰永さんのトークイベントに参加

2011.03.04

初めてづくしの北極の旅が自分を変えた

 

にいはる里山交流センターの拠点・旧奥津邸で、和室に座布団というアットホームな雰囲気のなか行われた今回のイベント。トーク自体も、荻田さんが北極で撮影してきた写真をもとに体験を紹介し、質問は随時受け付けるというフランクなスタイルで進行した

 

荻田さんが初めて北極を訪れたのは、2000年。大学中退後、何をすればいいか迷い悩んでいた時にテレビで偶然、冒険家の大場満郎さんが大学生を連れた冒険の旅を計画していることを知って、手紙を出したことがキッカケです。その勢いで、700㎞を35日かけて徒歩行する「北磁極をめざす冒険ウォーク2000」に参加。思い切りの良さに敬服してしまいますが、実は荻田さん、これが初めての飛行機、初めての海外旅行、当然、初めての北極……と、初めてづくしだったというから驚きです。

 

「最初は自分を変えたい、人と違うことをしたいという思いで訪れた北極ですが、とてつもないカルチャーショックで、次第にその魅力に飲み込まれていきました」と荻田さん。

 

 この時をキッカケに荻田さんの人生は180度変わり、今日の、10年にわたる北極冒険記へとつながることになるのです。

 

北極を冒険できるのは、季節や天候などの条件が合致する2月~4月頃のみ。平均気温は-30℃、夜には-40℃にもなる過酷な世界だ(写真提供:荻田泰永さん)

 

荻田さんの基本的な冒険スタイルは、自分の体と同じくらいの大きさのソリに、水や食糧、テントなどの必需品を詰め込み、一人でひたすら引いて歩く無補給単独徒歩行。1日に平均20㎞進み、2~3カ月かけて数百㎞の距離を往復します。2010年には、1400㎞を3カ月かけて冒険しています。食料や水は徐々に消費するため旅が進むほど荷物も軽くなりますが、出発当初は荷物の重さが70㎏近くもあり、向かい風やブリザードの時はとても苦労するのだとか。

 

また北極は、一面真っ白な雪と氷の世界で目印などほとんどありません。磁極に近すぎるため方位磁石も無意味です。そんななか荻田さんは、風向きや太陽の移動角度などから勘で方向を判断。携帯しているGPSは、夜、テントの中で移動距離のチェックに使うのみに留めます。

 

移動の最中、広い氷の世界でも生き物たちと出会う機会は少なくありません。アザラシやカリブー、時には、白い地面が真っ赤に染まった、ホッキョクグマの狩りの痕跡に出会うことも。

 

「ヤツらとの遭遇には特に気を付けなければいけません。ただ、人間が珍しく興味本位で近づいてくることの方が多いんです。よほどの時はライフルで発砲しますが、それ以外は何もしなくても去っていくことのほうが多いですね。それに、こちらも注意深く相手を観察すれば、危険な状態かどうかわかります。例えば、前足や口元が茶色く汚れていたら、エサにありついてから日数も経っていない証拠。おなかがいっぱいなので、さほど危険ではありません」

 

常に危険と隣り合わせの状態が続く単独徒歩行。でも、自分の力ではどうにもならない厳しい自然の中だからこそ、「生きている」という、存在の本質を再認識できると荻田さんは言います。

 

森ノオト編集部:中島まゆみ

横浜市緑区在住の環境ライター。雑誌やweb、新聞などで、環境・エコロジーに特化した取材・執筆活動を行っている。プライベートでは、土と緑が大好きな、ゆるベジタリアン。最近のマイブームは里山遊びで、新治地区にある旧奥津邸によく出没している。共著に『ちょっとエコわざ55』(中経出版)がある。

「なかじまゆ」http://nakajimayu.petit.cc/

▲ページTOPへ

編集室ノオトその他の記事

2011.07.12
650名の羽音が「ぶんぶん」と鳴り響いた!
鎌仲監督の話は、来場者の心にすーっと染み込んでいった   2日間で650名。下はゼロ歳の
2011.07.06
スローミュージックとスローフードのキャンドルナイトin青葉台
「でんきを消して、スローな夜を」 100万人のキャンドルナイトと連動する、このイベントの仕掛人は音楽
2011.06.29
川崎のあじさい寺へようこそ。
「川崎のあじさい寺」と言われている妙楽寺。そう呼ばれるだけあって、カメラ片手に沢山の方がいらっしゃ
2011.06.22
動物とふれあえるのんびり施設「こどもの杜」
藤が丘からクルマで10分弱でしょうか。「こどもの杜」、場所はちょっとわかりづらいのですが、中里学園前
2011.06.16
子どもたちの心のケアを アートセラピー体験記
広い空間に突然現れた大量のトイレットペーパー。集まった6名ほどの親子が好きなだけほぐしたりぐるぐる

完熟バックナンバーもおいしくいただけます!

読み込み中

  • 森ノオトとは
  • 森の仲間アドレス帳リンク集

旬のとれたて記事

2011.07.18
優しい響きに包まれて〜ライアーコンサートのご案内〜
ライアーという楽器はご存知ですか? 映画「千と千尋の神隠し」の主題歌の伴奏でも知られている竪琴の一
2011.07.14
『捨てない贅沢 東京里山発暮らしのレシピ』
『捨てない贅沢 東京里山発暮らしのレシピ』 著:アズマカナコ 発行:けやき出版 発売日:2011年
2011.07.13
Vol.12 いのちの糧となるパン、いただきます。......鶴川・CAFE UTOKU(カフェ・ウトク)
UTOKUの店内。コンクリートブロックの内装に、有機的なアンティークの家具が絶妙にマッチしている
2011.07.12
650名の羽音が「ぶんぶん」と鳴り響いた!
鎌仲監督の話は、来場者の心にすーっと染み込んでいった   2日間で650名。下はゼロ歳の
2011.07.11
カラダの要を整える「骨盤体操教室」
照りつける強い日差しにちょっと疲れが出てくる頃ですね。「なんだかだるい」「肩こりや腰痛がつらい」そ
  • ウィズの森
  • 農に学ぶ環境教育ネットワーク
  • WAVE YOKOHAMA BLOG