こども部屋をエコDIY! ホタテ貝殻の漆喰をみんなで壁塗り!
森ノオトのエコDIY番外編として、我が家のこども部屋リフォームを公開して、床張り編に続き、壁塗りをおこないました。有害化学物質ゼロ、ホタテの貝殻の焼成灰を主原料にした「貝てき漆くい」を使って、小学生の娘と森ノオトの仲間たちと一緒に、壁塗りを楽しみました。

 

一週間前は、KUMIKIプロジェクトの皆さんと一緒に、DIYで床張り体験をしたキタハラ家。国産無垢材のスタイリッシュな床タイルを張った部屋にふさわしい、自然素材の漆喰壁にしたいと思っていました。実は我が家、10年前に今のレトロ団地に引っ越す際に、リビング・キッチン・寝室・洗面所と玄関の壁と天井を、漆喰で塗り替える内装リフォームをしていました。左官職人さんによって精緻に塗られた漆喰壁は、清潔感があって空間が広く見え、気に入っています。北側の4畳半だけ物置代わりに使っていたのと、予算が足りなかったので、壁は一般的なエンボスタイプのビニールクロス、天井はモルタルむき出しの状態のままでした。

 

長女が小学校2年生になり、そろそろ自分の部屋が必要になるだろうということで、森ノオトでDIY仲間もできたことだし、みんなでワークショップ形式でやってみようと、2週連続の「エコDIYまつり」をおこなったのです。

 

望月さんが用意してくれた壁塗りの必需品。ローラー、はけ、コテ、バケツといった「塗り道具」から、養生テープに養生ビニール、そして塗り手必須なのが手ぬぐい、ゴーグル、スリッパ、割烹着、シャワーキャップ! いったい何に使うのか……?

 

DIY壁塗りを相談したのは、家族ぐるみの親友・望月伸子さん。化学物質過敏症の人にも対応できるほど安全性の高い建築材料を開発・製造している「素材工房」のスタッフで、2児の母でもあります。元々は藤が丘に住んでいて、ご夫婦で我が家によく遊びに来ていた、友達のような親戚のような間柄です。

 

現在は育休中の望月さん、結婚前からDIYが好きで、新婚当時に暮らしていた賃貸アパートに国産無垢材の床を張ってその部屋で自宅出産をするなど、かなりの自然派アクティブママさん。もともと建築雑誌の編集者なので、数多くの現場を見て、DIY体験を重ねてきたので、DIY壁塗りはお手の物! なのです。

 

元祖(?)DIYガールの望月伸子さん。偶然だが新入社員として入社した会社がキタハラと同じで、その後エコ住宅雑誌の編集部へ転身というキャリアまで一緒。その後、天然住宅用の住宅建材の製造元・素材工房に転職し、自宅のDIYをおこなうなど、DIY歴は10数年

 

望月さんが用意してくれた資材を使って、さっそく養生に取りかかりました。養生とは、漆喰を塗るところ以外をきっちりとおおうことで、窓、押入れ、鴨居や竿縁、床、コンセントカバーなどを、ビニールやテープで目隠しします。マスキングテープが曲がってしまったり、端の処理がきちんとできていないと、その部分に漆喰がきちんと食い込まず、仕上がりがガタガタしてしまいます。

 

壁塗りの仕上がりは養生がすべて! というほど、細やかな養生が求められる。この日は、森ノオトの梅原昭子さん、青葉台のDIYマダムの土志田祐子さんが手伝ってくれた

 

壁塗りは2日にわけておこないます。初日は養生と下塗り。1日おいて本塗りです。初日のメンバーは、森ノオトのDIY部長・梅原昭子さんと、青葉台のDIYマダム・土志田祐子さん、望月さん、キタハラ、そして学校から帰ってきた娘です。10:30から養生を始めて、お昼ごろまでかかりました。

 

まず、鴨居や竿縁などを養生し、窓をふさぎ、押入れの入り口をふさぎ、床をおおっていく。一週間前に張った無垢の床を、塗り壁材から守るため、床の養生は特に大切!

 

「あれ、ビニールクロスをはがさないの?」と不思議に思った方がいるかもしれませんね。実は、今回使う素材工房の「貝てき漆くい」は、クロスの上からそのまま塗ることのできる、下地材不要の漆喰です。言い方を変えると、貝てき漆くいはそれ自体が下地材を兼ねていて、一度塗って一晩乾かしてから、同じ材で本塗りをする、というわけなんですね。下地処理の手間がないので、DIYに向いていると言えるかもしれません。

 

床をビニールでおおった後は、段ボールを開いてさらに床を保護する。踏んでずらしても大丈夫なように、ガムテープで止める。ちなみに使った後の段ボールはリサイクルに出すのはためらわれたので、工務店さんが建築廃材として処理してくれた

 

貝てき漆くいは、主に北海道産のホタテの貝殻を焼成した時に出る灰が主原料で、産業廃棄物をリサイクルしています。ほかに麻スサ、FC剤(イオン結合促進剤)のみで、有害化学物質が含まれていません。製造元の素材工房は、化学物質過敏症や重度のアトピーの人にも対応できるほど、有害化学物質ゼロにこだわった建材メーカーで、自然界で循環できる材料を主に使っています。かつて、素材工房の製品や関連会社の「天然住宅」を取材していたことがあって、「オーガニックな建物」の最先端を走って挑戦を続ける会社の姿勢に、信頼感を持っています。

 

養生のきめ細やかさは縁に現れる。ちょっとでもずれがあると、そこがきれいに塗れず、凸凹の跡になってしまう。梅原さんと土志田さんのていねいで的確な仕事のおかげで、我が家の壁は美しく仕上がった

 

今回は、貝てき漆くいの元原料でもあるパウダーを、水で溶き撹拌するところからスタートしました。お昼すぎに頼もしい助っ人が合流。素材工房の相根冴人さんが、漆喰の調整係として、素人にも塗りやすい状態の漆喰をつくってくれました。

 

お昼すぎにやってきた素材工房の相根冴人さん。「貝てきパウダー」と水を混ぜて撹拌する。この調整に意外と時間がかかった

 

漆喰パウダーと水を工業用のハンドミキサーでブレンドしながら、何度も粘度を確かめては、水を足し……を繰り返す相根さん。「塗っていいですよ」と言われた時には、みんな「待っていました!」とばかりに喜び勇んで壁塗りを始めました。

 

やや水っぽいかな? くらいの粘度の方がモルタル天井や凹凸の壁には食いつきやすいそうで、さっそく娘も壁塗り開始。自分の部屋なので、張り切って壁塗りしていた

 

汚れてもよい服に着替えて、壁塗りにかかる女性陣。望月さんは割烹着に手ぬぐいをかぶって、重装備です。「なるべくゴーグルをかけてください」と言われたのですが、なにせ、室内をビニールでおおってあるので、暑い……。

 

しっかり養生してあるので、安心して大胆に塗っていく。鴨居の隅などは刷毛で埋めるように塗る。壁はローラーが便利

 

壁を塗るのは簡単だし、楽しいものです。ローラーで思い切り塗りたくっていけばいいのですが、きれいな仕上がりのためには、なるべく同じ向きに手を動かす方がよさそう。だけど、1日目は下塗りなので、雑でもよしとしましょう。

 

塗りの最難関は天井。むき出しのモルタルで、漆喰が食いつきにくく、何度も押し込むように塗り重ねていった。女性陣では天井までに手が届かず、背の高い梅原さんが活躍

 

望月さんがゴーグルを持参した意味がわかったのは、天井を塗る時でした。上を向いて天井を塗るのですが、ポタポタと漆喰がたれてくるんです……! 顔にも、手にも、服にも、髪の毛にも漆喰が飛び散るので、なるほど汚れてもよい作業着が必要なわけです。

 

段ボールを敷き詰めた床は、見事にドロドロになっていました。

 

約2時間、壁の色がひとしきり白くなったところで、下塗り終了。一晩乾かして、翌日、本塗りをすることになりました。

 

前の写真をFacebookに投稿したら、翌朝、ethnicaの田原さんがわざわざローラー用の長さおを持ってきてくれた。これで、背の低い女性でも、小学生の娘でも楽に天井を塗ることができた。この写真は楽しそうだが、この後、悲劇が……

 

翌日は、午前中のうちにまた相根さんが漆喰の調整をし、お昼ごろにワラワラと2家族が合流し、3家族12人でワイワイと壁塗りを始めました。

 

前日に苦戦した天井塗りでしたが、長いアタッチメントを借りられたので、一気に作業効率が高まりました。2日目は、男手が3人いたので、天井も壁も楽々。人口密度が高いと部屋の蒸し暑さ、暑苦しさは格別。

 

2日目は3家族12人でワイワイ壁塗り。和気あいあい、楽しそうに見えるが、実はこの部屋、ビニールで完全養生してあるので、ものすごく蒸し暑い……

 

望月さんが用意してくれた軍手やビニール手袋、シャワーキャップ、ゴーグルにマスク、ビニールのカッパなどを見て、最初は「過重装備だなあ」と思ったのも事実ですが、作業をしながら、どれも必需品であることがわかりました。

 

貝てき漆くいは、自然素材で、直接肌にふれても害がないものですが、漆喰はそもそもアルカリ性が強いので、人によっては手荒れしないとは言い切れません(実際、私も直接ふれましたが、強アルカリのセスキ炭酸ソーダ水にふれた後のような、ふやけ感でした)。何も防備せずに天井を塗り始めた長女は、途中で目に漆喰が入ってしまったようで、そこから心が折れてしまいました。

 

服も汚れるし、髪の毛に漆喰が落ちるとそこで固まって洗うのが大変なので、素人がDIYするには、プロのアドバイスにしたがう方が安心ですね。

 

完成! しっかりと乾燥させたいので、一週間くらいは家具をおかずに、ただの真っ白い部屋として余白の美を楽しみました。すっきりしていて、どこかもの寂しくもあるけれど……

 

2日目の本塗り作業は、男手もあり、1時間ほどであっという間に終わりました。意外と、女性よりも男性陣の方が、塗りの目に細かい執着があるのか? 本塗りがとてもきれいに仕上がっていたのに、驚きました。

 

最後の仕上げは、養生を外すこと! マスキングテープが気持ちよいほどペロペロとよくはがれて、壁と鴨居や襖の境目がくっきり、きれいに浮き出てきました。前日の、梅原さんと土志田さんの養生が、とてもよい仕事だったことがわかります。

 

漆喰を塗った直後はアルカリ臭が強いので、窓を開けて換気をしました。相根さんから「一週間は家具を置かないようにしてください。まだ完全に乾ききっていないと思うので」と言われて、娘の部屋づくりはもう少し先のお楽しみになりました。

 

最後の仕上げに、破れた襖(ふすま)にマスキングテープを貼って、ヨーロッパのヴィンテージの壁紙のオラウータンを重ねて、森ガール風の部屋に仕立てた

 

一週間後、相根さんがいらして、「とてもきれいに仕上がりましたね」と、確認をしてくれました。長女は「私の部屋ができた!」と、とてもうれしそう。その日、葉っぱ柄の太いマスキングテープを2本買ってきて押入れの襖に張り、6年前に買っていたヴィンテージの壁紙をアクセントに貼り付け、「森(ノオト)ガールの部屋」が完成しました。

 

みんなで楽しめるDIY、そして部屋に愛着が増すDIY。我が家のDIY壁塗りの後は、3家族でのパーティーになりました。DIYを通じた交流、コミュニケーションも、DIYの醍醐味かもしれませんね。

Information

素材工房

http://sozaikoubou.com

天然住宅

http://tennen.org

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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