ecolocoレポート

新着エコニュース

梅原 昭子written by

よこはま里山研究所(NORA)主催により2週にわたっておこなわれた、都市近郊の里山で現代的かつ持続可能な共生社会をつくるためのプラットフォームをつくろうというワークショップの後編、1月20日の様子をまとめたレポート第2弾です。

 

mixiチェック

若者の発想で里山に楽しい風を! 「まちの近くで里山を生かす仕事づくり」ワークショップ 取材レポート2

一口に「里山」といっても様々なイメージがありますね。よこはま里山研究所(NORA)の説明によると、里山とは、暮らしのそばにある「樹林地(主に燃料や材料を得る場)」と「農地(食べ物を得る場)」のことだそうで、人が手を入れることで永続的に利用が可能になります。

 

青葉区で言えば、寺家ふるさと村や、保木の里山が有名なところでしょうか。どこか昔懐かしいようなあの風景は、ただほったらかしにされていたわけではなく、心ある人々が数々の葛藤を抱えながら、守り、育ててきたから残っている大いなる遺産です。

 

また、今度は視点をちょっと変えて、空高くから眺めてみると、東京の多摩丘陵から、川崎、横浜を経て三浦半島まで抜ける地帯は、都市部であっても起伏に富み、豊かな緑が残っている全国的にも珍しい地帯です。

「暮らしやすさ」と考えた時に田園都市線沿線がいいわ、などと、ついつい鉄道の路線に目がいきがちですが、野山や、川の沿線という地形のことをちょっと頭の片隅にいれておくと、まちをみる目が変わってきますね。

 

さて、前置きが長くなりましたが、今回の「まちの近くで里山を生かす仕事づくり」での2度のワークショップで話題提供者となったのも、ほぼ、このいるか丘陵周辺で活動している方々です。それぞれの活動は小さくても、つながることでみえてくるものがありました。

 

 NPO法人ナチュラルリングトラスト副代表の小出仁志さんは、世田谷を拠点に主に埼玉の里山へ行ったりきたりして仕事をつくりだしている。

NPO法人ナチュラルリングトラスト副代表の小出仁志さんは、世田谷を拠点に主に埼玉の里山へ行ったりきたりして仕事をつくりだしている。

 

ナチュラルリングトラストは、「ナショナルトラスト」という歴史的建造物を保護する活動としてイギリスで発祥し、世界に広まった環境保護運動であり団体の理念を基に立ち上げられました。日本では鎌倉からはじまり、世田谷に本部があり、都市のマンパワーと里山の知恵を掛け合わせて、持続可能な社会づくりをしようと活動しています。現在、小出さんたちが力をいれているのが「薪まきネットプロジェクト」といって、会員になった方に優先的に薪を販売するネットワークづくり。

 

これは、3.11後に薪ストーブを使う人が増え、特に裕福な方々も多い世田谷では増加傾向にあったため、彼ら薪ストーブユーザーに薪BANKに登録してもらい、里山の手入れに参加するとポイントがもらえて薪の購入時に換金できたり、薪の購入代金を里山の管理費用にする制度です。

 

どんな活動かもう少し詳しく知りたくて、すべての話題提供者のプレゼンテーション後に、私も小出さんのテーブルにお邪魔しました。薪をもっと広めるには、それを必要として購入するユーザーとの出会いが肝心で、薪ストーブの販売数自体を増やす工夫とか、薪をたくさん使う店舗(例えば、ピザ屋さん)との接点の持ち方が重要ではないかといった意見が交わされました。

 

各テーブルでは、話題提供者の抱えるシゴトの可能性について、また、そのために社会に必要なものは何かについて、興味を持った方が集まって話をします

各テーブルでは、話題提供者の抱えるシゴトの可能性について、また、そのために社会に必要なものは何かについて、興味を持った方が集まって話をします

 

認定NPO法人自然環境復元協会の伊藤博隆さん(左の黒縁メガネの方)のテーブル。「東急田園都市線」とのコラボ企画みたいなことができないか? なんて話が耳に飛び込んで思わず立ち止まりました

認定NPO法人自然環境復元協会の伊藤博隆さん(左の黒縁メガネの方)のテーブル。「東急田園都市線」とのコラボ企画みたいなことができないか? なんて話が耳に飛び込んで思わず立ち止まりました

 

自然環境復元協会では「レンジャーズプロジェクト」という活動を立ち上げ、里山活動に参加したい人と参加してほしい人とのマッチングを試みています。

興味はあってもはじめ方が分からない若年層側の参加の障壁を取り除き、保全活動をする団体側の人材の高齢化と、愛着ゆえの仕事の私物化、外部から人を受け入れる体制やノウハウがないという悩みを引き受けて、エリアと人をwebやスマホで登録できるシステムを用意して、保全活動をツアー化。参加者をつのり、現地での活動と保全方法を学び、片付けをして帰るまでをコーディネートする仕事をつくっています。専業とまではいかず、みなさん二足のわらじでの活動ではあるけれど、それなりの効果がでてきているとのこと。

 

伊藤さんは、多様な参加の仕方を可能にする仕組みづくりをすることで、日本の総住民レンジャーズ化を目指すという大きな野望を抱いているそうです。

 

NPOフュージョン長池、多摩市グリーンボランティア森木会の高澤愛さんは色白でとっても可愛らしい女性で、場をほっと和ませてくれます。女性らしい感覚を生かして活動の「見せ方」を工夫しているところは森ノオトとも通じるものがあります

NPOフュージョン長池、多摩市グリーンボランティア森木会の高澤愛さんは色白でとっても可愛らしい女性で、場をほっと和ませてくれます。女性らしい感覚を生かして活動の「見せ方」を工夫しているところは森ノオトとも通じるものがあります

 

多摩市内の小学校や長池公園をフィールドとして活動している高澤さんは、SATOYAMA+(プラス)スポーツ、SATOYAMA+塾、SATAOYAMA+カフェなど、活動する人の数だけ、里山に何かを足して関わることを勧めています。

例えば、スポーツでは、自然の中で走ったりヨガをするトレーニングの場として利用し、笹刈りをスポーツ化してしまうとか、タオル代わりの万能ファッションアイテムとして手ぬぐいを作って販売するなど、まちなかのジムでシステム化されて行われていることを、里山流にやっていって関わる人を増やそうよ、という発想です。保全第一で今まで活動をしてきた方と、新しい考え方で里山って面白い! 楽しい! いけてる! と感じる人とが、うまくつながっていく工夫が必要なのだろうなと思われました。

 

一般社団法人まちやま代表で、NPO法人神奈川シニア自然大学校理事である塚原宏樹さんも、町田の小山田の里山を拠点に、日々の労役だったものを、学びや癒しの里山体験サービスへと「発想の転換」によって、シゴトづくりをしています。里山で自分自身が何をしたいのかという志を明確にした上で発信作業をつづけること、全てを自分でやろうとせずなかまをつくること、無償の活動に甘んじないで本気で価値を生み出すことを里山のシゴトづくり三原則としているそうです。

 

塚原さん(写真中央)の、穏やかな雰囲気は、いるだけで女性や若者の参加障壁を取り除く役割を果たしているようで、一つの強みだと感じました

塚原さん(写真中央)の、穏やかな雰囲気は、いるだけで女性や若者の参加障壁を取り除く役割を果たしているようで、一つの強みだと感じました

 

シゴトづくりの一つの例として、参加者へのアンケートやヒアリングでニーズを探ると、「ティピで寝たい」「バームクーヘンをつくりたい」という声が聞こえてきて、それに必要な資源として、荒れ果てた裏山の笹があるというシーズを発見したので、刈った笹でティピをつくり、バームクーヘンをつくって食べるというイベントを企画したら、親子一組参加費3,000円で20名近くの人が集まった、つまりサービスが成り立ったのだそうです。現場のシゴトと、参加者との対話、両方ができる人材が求められているのだなと感じました。

 

最後の話題提供者、株式会社FIO代表取締役の舩木翔平さん(左の水色のシャツの方)は勢いのある若手農家さん。あまり難しく考えすぎず、やりたいことをどんどんやっていくスタイルに、集まった人々も引き寄せられて終始明るいテーブルでした

最後の話題提供者、株式会社FIO代表取締役の舩木翔平さん(左の水色のシャツの方)は勢いのある若手農家さん。あまり難しく考えすぎず、やりたいことをどんどんやっていくスタイルに、集まった人々も引き寄せられて終始明るいテーブルでした

 

里山の中でも、農業に重点を置いている舩木さんも、農業は生産だけじゃない、そこでただ「過ごす」ことが心地よい、という発想で、なかまと会社をつくって農業体験イベントと農産物の販売をおこなっています。もともとまちづくりに関わりたかったという舩木さんは、日々の食卓を支える「農業」からまちを変えていくことを目的にしています。

 

もともと農家だったわけではないため、大学を卒業して新規就農するまでの2年間に、良い地主さんとの出会があり、今では条件のよくない余った土地を含め、全部で合わせて8000平米ほどの農地を活用して、年間に80種類近くの野菜を育てています。広い土地があるのでイベントで100名を越す参加者が来ても受け入れることができるため、実際販売よりも体験イベントの方が大きな収入源となっているそうです。

 

林業の作業には危険が伴うので、なかなか100人規模のイベントは難しいけれど、農業ならばそれができるのだなと、妙に納得してしまいました。また、それは都市部のアクセスの良さ、人口の多さゆえの強みでもあります。直売所をつくったら、販売部門もだいぶ収益が伸びたとのことですが、収入の穴埋めとして、イベント開催の効果はまだまだ大きいのだとか。FIOというブランドの認知度を上げてファンを増やすことが、農地を守り、働き手を増やすことにもつながるので、販売とイベントの2本立てがうまく成り立っているモデルといえます。これからの農家のあり方の一つだと思いました。

 

5人の発表者がいて、ワークショップも! となかなか盛りだくさんな企画だったため、最後は時間目一杯で、テーブルごとの発表はありませんでした。物足りなかった人も、得るものがたくさんあったという人にも、里山を愛するこれだけの仲間たちがいる、ということは実感できたのではないでしょうか。

 

ここから何が生まれるのかは、それこそ参加した人の数だけあるのだろうと思います。とりあえず、私はもう少し俯瞰していろいろみてみたいと思うようになり、さっそく今週末、鶴見川流域ネットワーク主催のイベントに参加しようかなという気になっています!

ライター紹介

梅原 昭子

  • ライターのFacebookをみる

川崎市麻生区在住のキリエ作家。雑誌の表紙や挿画などを切り絵で手がける。2011年よりあざみ野ぶんぶんプロジェクトに参加、実行委員。芸術的才能を生かし、電気を文学的に表現。愛を込めて「エレキ」と呼び、エネルギーを身近にする「エレキ女史」。独立型ソーラーシステム講座(エレキラボ)を担当している。ほかにもアートユニット「wakusei」として縦横無尽に活動中。          ■ホームページ「WAKUSEI」

おもしろかった?

mixiチェック