青葉台駅からクルマで約10分。さつきが丘交差点近くの畑では、さわやかなグリーンの葉菜類が顔をのぞかせています。美しく整った畝にそうっと鍬を入れ、愛おしそうに野菜と対話する林英史さんは、丑年生まれの37歳。高校時代に自給自足を志し、農大に通いながら環境保全型農業を手伝い今に至るというから、キャリアは実に20年近くに及ぶそうです。
今でこそ「半農半X」という言葉は広く知れ渡るようになりましたが、林さんはそれを地でいきます。週のうち数日は公園関係の仕事に携わる兼業農家で、頭脳明晰・独自の哲学を持つユニークな御仁です。
「無農薬だからと言って田んぼや畑に雑草が生えているのは好きじゃない。昔の人は“稲に足音聞かせろ”と言いましたが、この地域を耕し続けてきた先人に恥じないようせっせと草取りに励んでいます。すると農薬を使わなくても稲が草に負けず生き生きとしてくるんです」
除草剤や殺虫剤などの農薬・化学肥料をいっさい使わず、天日干しで乾燥させたコシヒカリは、自然な風味とあまみが持ち味です。藤が丘の自然食品店マザーズでも「青葉米」として売り出し中。愛情を受け育ったお米です、美味しくないはずがありません。
畑では今、菜の花やフリルレタス、オークリーフなどの葉ものがなっています。畝と畝の間には青々とした小麦が植えられており、互い違いに作物を植えることで病害虫を防ぐそうです。
「菜の花を育てているのは夏に美味しい空豆をつくるため。近くに別の植物を植えることで病害虫を防ぐなど互いによい影響を与え合う“コンパニオンプランツ”という手法を試しています」と、林さん。現在年間で30品目くらいの作物を育てています。
林さんのテーマは「アタラシイムカシサガシ」。ブログのタイトルでもあります。昭和のゆるやかで牧歌的な雰囲気の中で田畑を耕しながら、この地で育ってきた在来作物について研究したり、農とともに生きる知恵を追求していきたい、と語ります。
この冬は太白イモというサツマイモを育て、干し芋にしておやつに楽しんでいたそう。実はこの地域では「イモと言えば太白」と古くから育てられてきた在来作物の一種だというのです。種を知ることは、地域の歴史や食文化を再発見することでもあるのですね。
「青葉台は都会でありながら農地が多く生産地という側面を持つ。この独特の地域性を生かした都市農業のあり方を探っていきたい」
農業は英語でagri-culture。新しい文化を担う若き農家の今後が楽しみです。
はやし農園
直売所:さつきが丘交差点そば
TEL:090-9102-5538
営業日:毎週土日
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