vol.3 エネルギーを地産地消する全国初のマンションが大倉山に誕生
震災以降、私たちのエネルギーへの意識は大きく変わりました。これまで当たり前のように使ってきたエネルギーの大切さに気づくとともに、現在のエネルギーシステムの限界も思い知らされ、何ができるのか自問した人もいるのではないでしょうか。そうした中、港北区大倉山に誕生するマンションでエネルギーに関する新たな試みが導入されます。集合住宅では全国でも初のプロジェクトとのこと。もしかすると、私たちの今後のエネルギーとの付き合い方に解の一つを示してくれるかも……そんな期待を胸に、さっそく訪れてみました。(text: 中島まゆみ)

濃い色調で落ち着いた雰囲気のS75Aタイプ。新工法の採用で梁がなくスッキリ。バルコニーの梁もないため高さ2200mmのハイサッシで解放感もある

 

■快適な暮らしと節電・省エネを両立

 

東横線大倉山駅から菊名方面に向かって6分ほど歩くと、目指すマンション、三井不動産レジデンシャル「パークホームズ大倉山」の建設現場が姿を現します。居室タイプは2LDKから4LDKまで、総戸数177戸の大規模マンションです。目の前にあるモデルルームでは、シックで落ち着いた雰囲気が魅力的なタイプS75Aと、白木調の明るく開放的なタイプS70Cの2タイプが用意され、訪れる人のライフスタイルに合わせた居室空間が提案されています。「ここはもともと、東芝さんの社宅があった土地なんです。時を経て大きく育った敷地内の樹木が周辺地域にとけこんでとても良い景観を形成していましたので、パークホームズ大倉山ではそれらを活かして、事業理念である経年優化の街づくりを目指した設計をしています」。そう語るのは、同社 横浜支店 開発室 主査の小松原高志さんです。もともとあったシンボルツリーのヒマラヤスギを土地の記憶として継承し、大木に成長していたサクラはそのまま残すなど、この土地でこれまで育まれてきたものを大切に受け継ぐランドスケープを考慮しているのだといいます。

 

既存樹のサクラのほか、季節ごとにさまざまな表情を楽しめる植栽を考慮。建物周囲にはそれらを配した小道も用意されている

 

小松原さんによると、このほか、パークホームズ大倉山には特徴が二つあるといいます。一つは、コミュニティーを大切にしている点。「活性化しているマンションでは、築後30年、40年でも、植栽クラブが自発的に生まれることで、とてもよいコミュニティーが形成されています。パークホームズ大倉山では、ガーデニングの専門家からアドバイスを受けることができる“グリーンプログラム”のほか、地元アーティストを招いて行うワークショップなどの仕組み、また、入居者が主役になって花壇の植え替えを楽しめる“コミュニティーガーデン”やワークショップ開催に適した“コミュニティカフェ”などの空間も用意します。最初こそ、仕掛けづくりという形で私たちがお手伝いしますが、いずれそれらが自発的なコミュニティーに成長していってもらえるとうれしいですね」

 

省エネ状態を簡単に目視確認できるエアコンが1台標準装備

 

もう一つの特長は、今回の取材の目的でもあるエネルギーについて。まず、各世帯の標準的な設備が高い省エネ性を誇っています。断熱性の高いエコガラスに加え、節水型トイレ、エネルギーの見える化機能を搭載した省エネエアコン、そしてダウンライトにはLED照明を採用しています。また空気中の熱を集めて高効率な給湯を行うエコキュートも標準装備するなど、現段階で導入できる最新の省エネ設備が勢ぞろい。快適な暮らしを送りながら、電気と水の両方を自然と節約できる仕組みが用意されている、そんな印象です。

 

高効率給湯器エコキュート。手前が、空気を取り込んで熱に変えるヒートポンプユニット、奥の大きな箱がお湯をためておく貯湯タンクユニット。大きなサイズだが、木製カバーのおかげであまり気にならない

 

マンションの共用部分では、エネルギーを創ってためる「地産地消」を目指します。屋上に20kWhの太陽光発電システムをのせ、エレベーターや照明、エントランス部分のエアコンなどの電力を一部まかないます。電力が余った場合は蓄電池にたくわえ、発電できない夜間の電力として活用。もちろん停電などの非常時にも使うことができるため、最低限の灯りや情報、セキュリティインフラの確保ができて安心です。

 

南棟「サニーコート」屋上に設置予定の太陽光発電システム。20kW。エントランスなどの共用部の照明、電気自動車の充電、空調、エレベーター、給水ポンプなどの電力に利用。余った分は30kWhの蓄電池に蓄え、電力利用の増えるピーク時や停電などの非常時に活用する

 

パークホームズ大倉山では、「持たずにシェアする」という選択肢も用意しています。必要な時に必要なだけ電気自動車を借りて使うEVカーシェアリングのほか、電動アシスト自転車のシェアサイクル、マンションでは初めての導入という、マンションまでレンタカーを届けて引き取りに来てくれる宅配レンタカーも利用することができます。電気自動車の充電には、屋上で発電した電力も活用される予定です。小松原さんによると、入居希望者の多くはこれらシェアリングへの関心がとても高いようです。みなさんはいかがですか?

 

電気自動車(日産リーフ)1台を入居者でカーシェアリングするほか、一般車をパークホームズ大倉山まで宅配し、使い終わったあとは引き取りに来てくれる「宅配レンタカー」、その他、電動アシスト自転車のシェアリングも導入

 

 

■HEMS、MEMS、CEMSと連携しエネルギーを地産地消

 

さまざまな仕組みが用意されているパークホームズ大倉山。ここまで見ても、かなり先進的なエネルギーの利用ができるマンションであることがわかります。でもここからが、他にはない、このマンションの大きな特長。それは、省エネ設備を家庭でさらに効率よく使うための仕組み「HEMS*」と、マンション共有部の電力を上手にコントロールする「MEMS**」、そしてこれらを街全体のエネルギーをコントロールする「CEMS***」と連携している点です。一つずつ、具体例を挙げながら見ていくことにしましょう。

*ヘムス:Home Energy Management System

***セムス:Community Energy Management System

**メムス:Mansion Energy Management System

 

各戸に1台、タブレットが設置される。リアルタイムや日ごと、月ごとの消費電力量やCO2排出量がわかるほか、三井不動産レジデンシャルのサイト「すまいのECOチャレンジ」に参加すれば環境貢献ランキングなどにも参加できる。ポイントもたまり、エコグッズやららぽーと商品券などと交換することも可能だ

 

まずはHEMS。各家庭にあらかじめセットされているタブレット型のエネルギー表示機やTV画面で、エアコンなどの家電の消費エネルギーやCO2の排出量を具体的な数値として見ることができます。これがいわゆるエネルギーの「見える化」。見える化することで、節電意識が高まると同時に、「エアコンの暖房を使いすぎかな。早めにカーテンを閉めて設定温度を下げてみよう」などの具体的なアクションにも結び付けやすくなります。またHEMSでは、家庭内の家電をネットワークでつなぐため、タブレット型のエネルギー表示機や携帯電話などから遠隔操作することもできます。床暖房やエアコンの予約時間より帰宅が遅くなりそうな時などは、携帯電話から運転を停止させたり、設定温度を変えることなどもできてしまうわけです。エントランスの照明や空調、エレベーター、EV充電機など、入居者みんなで使うエネルギーはMEMSで見える化し、一部制御します。

 

左はHEMS対応型分電盤。10回路まで対応できるタイプ。右の小さな箱は、電力計測ユニット。HEMS導入には欠かせないアイテム

 

一方、CEMSは、夏場の日中や冬場の朝夜といった地域全体で電力使用が一気に増える時間帯などに、インターネット回線を使ってHEMSやMEMSに省エネを要請。すると、家庭ではHEMSがエコキュートの湯沸しタイミングをずらし、共用部ではMEMSが間引き照明やエアコンの省エネ運転への切り替えなどでエネルギー利用をコントロールします。小松原さんによれば、「パークホームズ大倉山は横浜市の行う〝横浜スマートシティプロジェクト″に参加している」そう。こうした一連のエネルギーマネジメントシステムの導入によって、「家庭単位だけでなく街全体の省エネにいかに協力できるかを、市民の方々に機会としてご提供できる」のだといいます。

 

横浜スマートシティプロジェクトは、平成22年4月に選定されたプロジェクト。横浜市と民間企業(アクセンチュア、東京ガス、東京電力、東芝、日産自動車、パナソニック、明電舎等)とで、再生可能エネルギーや未利用エネルギーの導入、一般世帯・事業者・地域でのエネルギーマネジメント、次世代交通システムなどのプロジェクトを行う

 

横浜スマートシティプロジェクトは、経済産業省の行う<次世代エネルギー・社会システム実証事業>の一環として、北九州市、けいはんな学研都市、豊田市の3都市とともに横浜市が採択の決定を受けて行っているプロジェクトです。それぞれ都市ごとに特長があるなか横浜市は、都市規模の大きさ、都市型・郊外型・工業型などのバラエティーに富んだ地勢を活かし、オフィスビルが多い「みなとみらい21エリア」、工場の多い「グリーンバレーエリア」、住宅が集中している「港北ニュータウンエリア」の3地域で、それぞれ最適なエネルギーコントロールを行いCEMSと連携させる計画です。パークホームズ大倉山は港北ニュータウンエリア内の一物件として今後、入居後の平成24年12月のから約2年間で電力使用のデータや入居者アンケートの収集・分析を行い、実証に貢献していくことになります。

 

三井不動産レジデンシャル 横浜支店 開発室 主査の小松原高志さん。パークホームズ大倉山の物件としての特長、エネルギー面での取り組み、デベロッパーとしてのビジョンなどを、流れるようにわかりやすく解説してくれる

 

大倉山をはじめ、森ノオトのカバーする田園都市エリアについて小松原さんは「文化度、コミュニティー度が高く、エネルギー関連への理解や重要度の認識の高い方が多いと感じています。成熟した地域という印象です」と語ります。今回、パークホームズ大倉山への関心も高く、第1期の販売はほぼ完売に近い状態とのこと。地域の商店街から「環境に配慮したマンションができるんだってね。期待しているよ」といった声が聞こえてきたり、港北区役所から地域情報誌での特集依頼があるなど、手ごたえを感じているそうです。「パークホームズ大倉山には最新の省エネ機器やエネルギーマネジメントシステムが入ります。ただ、それでも最後はやはり市民意識にかかっています。東芝さんのようなメーカーは技術革新で貢献し、弊社のようなデベロッパーはそうした技術を市民が取り組める場としていかに提供できるかが課題です。裏を返せば、それが地域や物件の特長にもなっていくので、今後もさまざまな業界と連携して価値を創造していきたいと思っています」

 

エネルギーを自ら創って、ためて、それらをITで相互にコントロールする時代――まだ先の話だと思っていたことが、すぐ手の届くところまで来ているんですね。パークホームズ大倉山の実証結果を楽しみにしつつ、追随するマンションやコミュニティーの登場にも期待したいと思います。

 

 

(取材を終えて)

人口増や経済成長などで世界的にエネルギー不足が心配されるなか、近年、「スマートグリッド」という、ITを介してエネルギーを効率的に使うシステムがにわかに注目されるようになりました。そんな折に起きた東日本大震災。これまで電力不足などの心配はほぼないとされてきた日本でも、スマートグリッド、スマートシティ、スマートハウスの実現が急務となっています。そう、急務なのです……が、周りを見渡すと実証実験レベルのものが多いこと。海外では実証を飛び越して運用レベルに入っているものも多く、「石橋を叩きすぎでは?」と思うこともしばしばです。

パークホームズ大倉山は、YSCP実証事業の一環とはいえ、事実上運用レベルに近いもの。入居後、入居者の方々の印象や、導入するエネルギーマネジメントの効果がどのくらい出るのか、とても楽しみです。

 

個人でできる省エネには限界があります。その壁を超えるには、企業の力や社会システムそのものの転換が不可欠。今後も企業や団体のエコビジネスを追いかけて、ご紹介&応援していきたいと思います。

 

Information

パークホームズ大倉山

http://www.31sumai.com/mfr/F0914/

三井不動産レジデンシャル

http://www.mfr.co.jp/

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