兄と弟の絵本棚 Vol.35 『ペレのあたらしいふく』
涼やかな日も増えてきました。日差しに合わせて、半袖を着たり長袖を探したり、今日も母さんたちは大忙しですね。もう少しすると、秋の新しい服も楽しめるでしょうか。今月の絵本は『ペレのあたらしいふく』です。

9月とは思えない日差しの日もあるかと思えば、雨の日も多く、半袖では涼しすぎるほどの日もあったりと、この秋のはじまりの日々は、お天気に悩まされました。夏の間に、子どもたちもずいぶん大きくなったものです。夏休み明けにお友達と久しぶりに会って、お互いぐっと成長している姿にうれしい驚きを感じました。

 

そして、わが子の成長を実感するのは、衣替えのとき?! 秋物を引っ張り出してみて、あれもこれも小さくなっていて、次の季節の服の調達に大慌てです。特に、長男の服はそのつど真新しいものをお買い上げ(そして汚される……)。次男の服は、お下がりがあればそれを着まわします。

 

でも、『ペレのあたらしいふく』での新しい服の手に入れ方は、私たちのそれとはまるでちがっています。

 

この本のはじまりは、こう。これで、みなさんはどうやって服を手にするか、想像がつくでしょうか?

 

ペレは、こひつじを一ぴきもっていました。

 

そうです、ペレの服作りは、羊の毛刈りからスタート!

 

ペレの新しい服が仕上がるまで、ペレの小さなしごとが続いてく、森ノオトにぴったりな一冊なのですが、草木染め(台所にあるアイテムでできる!草木染初挑戦)など、ハンドメイドと手仕事の記事が並ぶ森ノオトの記事でも、毛刈りはなかったな、と思い返します!!

 

さて、ペレはこひつじの毛刈りを済ませると、その毛をすいてもらうべく、おばあさんを訪ねます。おばあさんはにんじんばたけの草刈りという交換条件を出して、仕事を引き受けてくれます。それから、もうひとりのおばあさんのところで糸に紡いでもらい、ペンキ屋のおじさんのお使いをしては染め粉を分けてもらい、糸をそめるのは自分でこなし、お母さんにその糸をきれに織ってもらいます。お母さんに仕事をお願いするときも、自分の妹のおもりをしています。

 

ペレは一つひとつ、仕事を返しながら服を作ってもらいます。仕立て屋さんの家では、メガネの奥がきらりと目が鋭いおじさんに、服を縫ってもらいます。小さい子どもが家にいて、テーブルの上にあぐらをかいて仕事をすすめるおじさん夫婦。こどもたちはテーブルのしたでうまく遊んでいますが、忙しそうな生活が垣間見られ、このおじさんに共感してしまいます。

 

おじさんも、最初は断りますが、いくつかの仕事を頼み、ペレのお願いを聞いてくれ、ペレの服が完成するのです。

眼光鋭い職人のおじさんともみごと交渉成功のペレ!

これでようやく一枚の服が出来上がり!

 

服がない! といっても、お店にいけば簡単に手に入る私たちから比べると、このペレの服には膨大な手間がかかっています。長い旅をして仕上げたペレの服、彼はきっとほつれてもつくろって、大事に大事に着るでしょうね。以前紹介した絵本、『ヨセフのだいじなコート』にも少し似ているかもしれません。

 

この絵本は、1ページ1ページの挿絵も素晴らしいのですが、

 

作者のエルサは、ピーターラビットのおはなしの作者に匹敵するといわれるほど、スウェーデンを代表する絵本作家だそうです。

 

暖かく柔らかい色使いと、人々の表情の細部までじっくりと味わえます。そして、部屋の調度品から農村の風景、人々の服装まで、まるで写真のように、当時の生活を映し出しています。

 

少しばかり不便だけど、きっと手間暇かかって、生活の実感がこもっていて人と人とのふれあいも感じる生活。

 

この絵本を通じて、親子でいろいろな話も尽きない気がします。

 

ペレが洋服を作るに欠かせなかった、交渉、そして町の人々の協力と、自分で払った労働。生きる力いっぱいの少年ペレも魅力的!!

 

我が家にも働き者の兄がいますが、買い物、宅急便の受け取り、布団を敷いたりお風呂を磨いたりと、ずいぶんできることが増えました。去年はあおばを食べる収穫祭でも活躍し、地域で働くこともちょっとだけ体験させてもらいました。

 

子どものできることって実はたくさんあるんですよね。

 

もうすぐ秋本番ですが、今年もまた収穫祭を楽しんだり、畑仕事をしたり、親子ともども秋を楽しみたいと思います。

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この記事を書いた人
東海林更央莉ライター卒業生
山形出身で、元日本語教師、3児の母。森ノオトでは2011年より兄弟の成長と重ねた絵本の連載を続け、妹が増えた今は女子らしい視点が加わり多くの母親の心をつかんでいる。家族の趣味は旅行、食べ歩き、自然のなかで過ごすこと。編集長の中学校時代の同級生でもある。
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