料理のレシピに著作権はあるの?公道での写真撮影はOK? 著作権って何だろう? 弁護士 長谷見峻一さん
「地域をつむぐローカルメディア講座」第5回のテーマは法律! 著作権や肖像権、引用など、取材をし、記事を書くときに気になることはいっぱいありますよね。弁護士の長谷見峻一さんに、著作権について教えていただきました。(写真:堀篭宏幸)

 

弁護士の長谷見峻一さん。真面目で難しい話になるだろうという大方の予想を裏切り(?)、笑いにあふれた和やかな講義となった

 

今回の講師は、北・長谷見法律事務所の弁護士長谷見峻一さん。「著作権と個人情報保護 メディアで知っておきたい法律の基礎知識」と題してお話しいただきました。

 法律と聞いて、「難しい話なのかな」と身構えていたワタシ。ところが講義は、名探偵が出てくるアニメ作品についてや、横浜がロケ地になっているドラマで話題のダンス、今年大流行したお笑い芸人のネタなどを例に挙げながら進み、会場からは時折笑いも。「えっ、この場合は著作権を侵害しているの? 大丈夫?」と、自然と考えてしまう内容でした。

 講義の冒頭で、長谷見さんに「著作権」とはなにか、ということを教えてもらいました。

 著作権は「著作物」を保護する権利です。著作権法によると、「著作物」とは「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」。絵画や音楽など、明らかにすぐわかるものもありますが、「これは著作物だろうか?」と悩むものに関しては、これまでの判例に基づき事案ごとに解釈されるので、安易に判断できないというのが実際のところのようです。

 その判断基準の一つとして、「アイディアは著作物ではない」ということを教わりました。たとえば、推理トリックや料理のレシピは、「アイディア」になるので、著作権はないそうです(その説明を書いた文章や料理の写真などには、それぞれに著作権が発生します)。

 長谷見さんいわく、「著作権は、著作者を保護することで創作活動を推進していく保護の面と、著作権を制限することで創作活動を推進していく制限の面」があり、「アイディアは、それ自体を保護するよりも、それを利用した創作活動を許す方が、文化の発展につながる」という考え方なのだそうです。

 著作権は登録したり申請したりしなくても、創作し生み出した瞬間から発生するものです。また、著作権以外にも、商標登録・意匠登録など、制作者の権利を守る制度もあります。今後私たちがさまざまな情報を発信していく中でも、「これは著作物だろうか」「だれかが登録したものではないだろうか」と、立ち止まって考えることは大切です。

 また、文章を書いたり、写真を撮影したら、自分自身が権利者になるということもあります。「ものを生み出した人にきちんと敬意を払う」という基本的なことを念頭においておくことが重要ですね。

実践的な内容に、参加者の集中度も高く、一言も聞き漏らすまいとメモをとる姿がみられた

 

 また、キャラクター弁当や、仕事で交わすメールにネットの文章をコピペする慣行(仕事は私的利用にあたらない)などは、実は限りなく著作権侵害に近いという話がありました。著作権の侵害はとても重たい罪ですが、親告罪になるため、権利者からの訴え(告訴)があることが前提です。現行法上では、著作権者がいちいち訴えないので表には出にくいというのが実情だそうですが、時代が進んで、個人が簡単に情報をコピーでき、写真に撮って発信できる社会に法律が追いついていない部分もあるのだそう。

 長谷見さんからは受講生に対し、「永続的に事業をしていくのならば、法律的な解釈について日常的にメールなどで相談できる弁護士がいると安心」とアドバイスがありました。今では弁護士による無料相談などもあるので、活用するのもいいですね。

 講師の長谷見さんの終始軽快なトークで進んだ今回の講義。長谷見さんが用意してくださった資料自体が、安易に固有名詞や引用文を載せることなく、著作権に配慮された内容になっていたことがとても印象に残りました。

 中でも一番のハイライトは、某ドラマで話題のダンスを例に挙げて話す際のこと。「こういう踊りです」といきなりマイクを置き、受講生にわかるよう長谷見さん本人が無音のなか、手振りで踊りを披露! 思わず身を乗り出してしまいました。音楽をかけたり映像を流したりすれば、伝わりやすい話かもしれませんが、音楽や映像には著作権が存在するので配慮されたのですね。「ダンスの振り付け」は、よほど個性的だと認められない限りは著作物と認められにくいという点から、自ら踊ることで例示されたのだと思います。

「このために覚えてきました」と語り、お茶目な面を見せる反面、長谷見さんの真摯な姿からも、著作権は取り扱いに注意であるということを知らされた講義でした。

ダンスのシーンを写真でおみせできないのが残念!

 

「地域をつむぐローカルメディア講座」の最終回は、1214日(水)。関内イノベーションイニシアティブ代表の治田友香さんによる「ローカルメディアの事業計画」についてがテーマです。個人で自己完結できるブログとは違い、ローカルメディアは地域と様々な関係をつくり事業として展開していきます。運営に避けて通れない「お金」のこと、きちんと考えてみませんか。

 皆さんのご参加をお待ちしています。

長谷川さんの講義のあと、コーディネーターの北原まどかさんによる、森ノオトを例にした事業計画についての実例紹介があった。最終回では森ノオトの収支決算書をみながら事業計画について考えるワークも

 

Information

エントリーはこちらから。ご参加をお待ちしています。

http://massmass.jp/project/local_media02/

<主催のマスマス関内・治田友香さんと、北原まどかの対談はこちら>

http://massmass.jp/project/localmedia_talk/

単発受講、会期途中からの申し込みも可能です。

<今後のスケジュール>
第6回?1214() ローカルメディアの事業計画

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この記事を書いた人
船本由佳ライター
大阪出身の元TVアナウンサー。横浜市中区のコミュニティスペース「ライフデザインラボ」所長。2011年、同い年の夫と「私」をひらくをテーマに公開結婚式「OPEN WEDDING!!」で結婚後、自宅併設の空き地をひらく「みんなの空き地プロジェクト」開始。司会者・ワークショップデザイナー。
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