「メディア運営者としての責務とSNS」〜宮島真希子さん
NPO法人森ノオトが主催する「かながわローカルメディアミーティング」では、神奈川県内で活動するメディア関係者らが中心となって、メディア運営にまつわる情報交換や問題意識の共有などの公開会議をおこなっています。第2回目の様子をリポートします!(写真・文:柏木由美子)

<<かながわローカルメディアミーティングの様子は、Youtubeの「森ノオト ローカルメディアチャンネル」の動画でご覧いただけます!(動画公開まで今しばらくお待ちください)>>
 
「かながわローカルメディアミーティング」第2回は横浜コミュニティデザイン・ラボ理事で、神奈川新聞記者の経歴を持つ宮島真希子さんをゲストに招き、メディア運営者としての責務とSNS活用について、参加者それぞれの考えを深めていきました。コーディネーターはフリーアナウンサーであり森ノオトライターでもある船本由佳さんです。
 
宮島さんは「私の話を聞いて『本当かな?』『自分はそうは思わない』など、後半のディスカッションで自分の考えを引き出す呼び水にしてもらえれば」と前置きし、話をスタートしました。
 
日本の新聞社が運営するニュース配信サイトで初めてブログの仕組みを導入し、読者からのコメントを受け付けて双方向性のやりとりを始めたのは、神奈川新聞社の「カナロコ」でした。2005年2月のことです。宮島さんは当時、そのサイトリニューアルを仕掛けたチームのメンバーでした。
 
全国の新聞社から「記事に対するクレームを書き込まれるのが怖くないんですか?」と電話がかかってきましたが、そういうマスメディア特有の常識をなんとかしたいと思っての半ば“会社をだまし討ち”したリニューアルだったと言います。
 
「メーカーなら、商品に対するクレームを次の商品開発に生かしていくのは当たり前なのに、新聞記者は書きっ放しですんでいる。しかしブログを始めとするソーシャルメディアが拡がっていけば、そうはいかないだろうと私たちは考えていました」(宮島さん)

NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ理事。元神奈川新聞記者。地域の課題解決に取り組む市民を支援する「LOCAL GOOD YOKOHAMA」や、ソーシャルインクルージョン(社会的に排除された状況にある人々が現状から脱するための取り組み)のハブ拠点「アンブレラ関内」など数々の地域プロジェクトを推進している


 
カナロコは大反響を呼び、記事には読者からのコメントが次々と書き込まれていきました。それを見て宮島さんは、「そこに暮らす普通の人たちが自由に発言し合う言葉の中にこそニュースがある。自分たちが自治体や警察、商店会などの取材を通して見ていた“ローカル”はほんの一部だった」と感じたそうです。
 
「個の発信を捕まえたい」と強く思うようになった宮島さんが、2007年から活用しているのがTwitterです。宮島さんは、SNSに流れる情報が玉石混交であることを理解したうえで、主に情報を取得する目的でTwitterを使っています。政治なら右から左まで、原発なら賛成から反対まで。どのトピックも、いろいろな意見がタイムライン上に流れてくるように、そして専門的な知見が得られるように、フォロー相手を絶えずチューニングしています。
 
また、自分と異なる意見の相手には、説得の仕方を考えるのも自らの学びととらえ、あまり怖がらずコメントしてみる。デマを見つけたら可能な限り、根拠を示すURLを添えて正しい情報を知らせる。ヘイトスピーチをする人は、そういう人の存在も認めたうえで背景に考えを巡らせる。宮島さんはこうしたコミュニケーションを、匿名ではなく実名でおこなっています。
 
「一人ひとりがローカルであり、『個の発露』を一番大切にしたい。その人の視点で切り取った風景・解釈であり、それを原点として始まる議論や意見交換の中から新しい知恵が出てくると信じています」(宮島さん)
 
こう語る宮島さんはトークの最後で、メディアづくりの5つのルール「徹底的に」「正確に」「公平に礼儀正しく」「独立して考える」「透明性を保つ」を紹介してくれました。これは米国のジャーナリスト、ダン・ギルモア氏が、著書『あなたがメディア!ソーシャル新時代の情報術』(平和博・訳、朝日新聞出版、2011年)の中で提示したものです。
 
情報の発信と受信が双方向でおこなわれる「ソーシャルメディア」の時代に、私たちが個人メディアとは異なる、価値を持つメディアとして地域に根差していくための責務とは何か。自分に問いかける大きなヒントをくれたお話でした。

後半は、レイアウトをフィッシュボウル(金魚鉢)方式に変更し、中央の椅子に座って話す人の意見や持論を全員で共有した

さて後半の最初は、中央に椅子を円状に配置し、それを囲むように外側に参加者が座るフィッシュボウル(金魚鉢)方式でディスカッションを進めます。中央の宮島さんの席以外は空席で、参加者の中から発言したい人が出てきて自らの意見や持論を語ります。
 
発言者は、スタッフに情報発信してもらう難しさや、SNSにおける相手の見極め方、サイト炎上への取り組み方といった宮島さんへの質問のほか、ローカルメディアの印象操作に関する問題提起もおこなわれました。

フィッシュボウルの中央で語る発言者の考えを真剣に聴く参加者

最後は、前半の宮島さんの話を受けてのグループディスカッションです。テーマ型メディアが陥りがちな、狭いコミュニティに閉じてしまう「タコツボ化」を回避する方法や、情報の正確性を確保するために日頃から習慣づけていることについて、アイデアを交換。話す側も聴く側もみんな、真剣そのものでした。
 
宮島さんは、「失敗したことを次に生かしたり、足りない部分があったら本を読んだり専門家の話を聞いたりして、SNSに限らずあらゆるリソースを活用して欲しい。そういった情報が循環する状況の中で学べるといいと思います」と締めくくりました。
 
この日みんなで共有したアイデアを現場に持ち帰り、それぞれが新たな取り組みを始めます。
 
私は、ジモトにはネットや大手メディアに載らない面白い話がたくさんあると気づき、横浜市青葉区で小さなフリーペーパー「スパイスアップ」を仲間とつくっています。小紙がまちや人とのリアルな出会いのきっかけになれば、おじいちゃんおばあちゃんになってもジモトを楽しめるんじゃないか。そんな思いで2年半前に始めた紙媒体です(Webサイトもありますが別のコンテンツです)。
 
情報の正確性や多様な視点を持つ取り組みはしている、つもりでした。現状のリソースでこれ以上のことは難しい、とも思っていました。しかしこの考えがすでにタコツボ化(苦笑)。宮島さんや参加者のお話で、まだまだできること、優先順位を変えて取り組むべきことを整理できました。
 
小紙が、境遇や立場は関係なくジモトの人すべてに向けたメディアであり続けるために、そして信頼され頼りにされるローカルビジネスの一員になるために。ネットとリアルのバランスを取りながら、小紙の“情報の循環”をつくっていきたいと思います。
 
気づきの多かった今回のローカルメディアミーティング。次回はどんなヒントを得て、私たちの活動に生かしていけるか、非常に楽しみです。

それぞれが考えるタコツボ化回避策や、正確な情報を届けるために習慣づけていることをグループで共有する参加者


第3回目は8月30日(水)。環境ジャーナリストとして、世界の様々な課題を取り上げてきた木村麻紀さんを迎えて、いま話題のSDGs(持続可能な開発目標)をローカルメディア流に編集し、ローカルとグローバルな課題を結びつけていくコツなどについて語り合います。
 
かながわローカルメディアミーティングでは、メディアの最前線にいる人たち、これから情報発信を担う人たち、地域のクリエイターたちが、常に変化する時代の中でメディアが抱える課題を共有して、地域全体としての情報発信意識や、リテラシーの向上を目的としています。
 
メディア関係者の皆さん(新聞社・タウン誌・webメディア・紙媒体・テレビ・ラジオ……)、地域情報の発信を始めたい方、情報発信に課題を抱えるNPOや団体関係者、地域とつながりたいクリエイターの方、ご参加をお待ちしています!

Information

<ローカルメディアミーティング>

ゲストの活動紹介と話題提供、質疑応答や意見交換をおこないます!

3回:2017830日(水)13:00–15:00 木村麻紀さん(環境ジャーナリスト)

(以降、10月、11月、20181月、2月開催予定)

<ローカルメディア&クリエイター ミートアップパーティー>

ローカルメディア関係者、市民団体によるショートプレゼン、グループトーク

2017927日(水)19:00–21:00

12月はデザイナーやクリエイターのプレゼンパーティーを予定)

会場:mass×mass関内フューチャーセンター(神奈川県横浜市中区北仲通3–33

http://massmass.jp

参加費:一般2,000

主催:特定非営利活動法人森ノオト

TEL045–532–6941

Emailevent@morinooto.jp

共催:関内イノベーションイニシアティブ株式会社(mass×mass関内フューチャーセンター)

本事業は、神奈川県の「かながわボランタリー活動推進基金21」の平成29年度ボランタリー活動補助金を得て、特定非営利活動法人森ノオトが運営しています。

提供された個人情報は、今回の事業実施のみに利用し、その他の目的で個人情報を利用することはありません。

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