ひと粒に詰まった“物語”を味わう SOCORAの本格チョコレート
「青葉台から寺家ふるさと村に抜ける通りの一角に、チョコレートの専門店があるらしい」。「ガラス張りの窓から白衣の男性が見えるけれど、何を作っているの? 入ってもいいのかな……」。そんな噂を耳にし始めたのは昨年の夏頃。今回はその正体(!?)を探るべく、取材をさせていただくことになりました。(写真:北原まどか)

こちらのオーナーはパティシエの西山浩平さん。経歴を辿ると、ミシュラン2つ星レストラン「レフェルヴェソンス」にてデザートを担当し、レストラン開業の立ち上げなどにも携わった後、マンダリンオリエンタル東京でバンケットやレストランのスイーツ全般を担当してきました。製菓部門のリーダーとして、多数ブランド企業のイベントを手掛けてきたという華麗なる経歴を持つ西山さんは、2016年、ご自身がプロデュースするチョコレート専門のラボ「SOCORA」を青葉台にオープン。現在はハイブランドのギフトやホテルへの卸をメインに、店頭でもボンボンショコラ(ひと口サイズのチョコレート)や、手軽に楽しめるショコラショー(チョコレートドリンク)などを販売しています。

 

バス通りの一角にあるSOCORAの入り口は、小さな看板が目印。ラボの様子が見える大きなガラス窓側にはベンチがあり、ショコラショーを飲みながらホッとひと息つくこともできる

 

 

ショーケースに並ぶ18種のチョコレートは一粒200円。高級チョコレート好きならその価値がすぐに分かるものの、よく知らない人にとってはちょっと敷居が高い感じも……。しかも有名なレストランやホテルで活躍していたパティシエさんと聞くと緊張してしまいますが、西山さんに実際にお会いすると物腰がやわらかく、語り口はいたって庶民的で軽やかでした。

 

チョコレートの道を選んだきっかけは……とお聞きすると、中学時代に遡ることに。私立の学校で中学3年間は油絵、高校3年間は日本画を学んだといいます。大学では文学部の芸術学科に入学し、情報デザインを専攻しました。
「絵って自己満足の世界なので、人に受け入れられるのがなかなか難しくて。大学では情報デザインを選んだので、ユニバーサルデザイン、つまりすべての人に受け入れられるデザインということで、それがチョコレートへつながるひとつのきっかけになりましたね」。

 

好きな絵だけを描くのではなく、ビジネスとして、対お客さんとして、どういうデザインをしていくか。そのうち、子どもからお年寄りまで幅広くカバーするのは、“食べてすぐなくなる”ものが一番いいのではと思い始めたといいます。
「絵って残るので、それが嫌になってきたんですよね。中学から大学までの絵を全部捨てて。結局ゴミになるなあって。写真も全然撮らないんですけど、きっと、何かを残すという執着がないんですよね」。もともと料理の最後に出てくるデザートのお皿が好きで、そこに芸術性を感じていたことから、フランス料理の世界に足を踏み入れることになりました。

 

「チョコは嗜好品でもあるけれど、日常品でもあるもの。余計なものを使っていないので身体にいいですし、子どもにも安心して食べさせられます。白砂糖は入っていないので歯に悪いわけでもなく、歯医者の常連さんもいるほど」と西山さん。小学1年生と1歳のお子さんの父親でもあります

 

その後、デザートをメインでやりたいという想いが募り、フランスへ行く計画をたてていたところに留学会社が倒産。それがきっかけでジャンポール エヴァン(高級チョコレート店)で働くことになり、ボンボンショコラに出会います。

 

「あぁ、ボンボンショコラってすごいな。一粒は小さいけれど、あんなに高級なのはなんでだろうって。もちろんカカオ自体も高いし、うちのチョコも工程を3日かけて作っていますから、かかる手間賃もすごいですよね。そこからですね。チョコレートは魅せられる仕事だと気づきました。デザートの一皿よりもっと小さく、たった一粒に凝縮できる。レストランのデザートは2万円以上するコース料理の中の一皿で、ごく限られた人しか食べられないけれど、チョコレートなら一粒200円で子どもからお年寄りまで楽しめる。より手軽なところもいいなと」。

 

18種のボンボンショコラは一粒200円。洗練された苦みと香りの「グアナラ70%」、岩手・サンファーム吉田さんの木苺と赤すぐりが入った「ラズベリーグロゼイユ」、静岡カネロク松本園富士山古種を使った「燻製紅茶りんご」など、どんな味がするのだろう? と好奇心をかきたてられるものばかり

 

ご自身プロデュースのラボをオープンするにあたりこの地を選んだのは、西山さんのお祖母さんが住んでいた家が青葉台にあり、そこに移り住んだことから。「昔からよく遊びにきていて、ご近所さんとも顔見知りだし、勝手知ったる場所ですね」。ほどなくして、ご自宅の近くにちょうどいい物件が見つかり、2016年10月にラボをオープン。ブランドのギフトやホテルへの卸の仕事がメインだったため、当初、店頭販売はしていなかったそうです。

 

「特に看板も出していないですし、周りの人からしたら得体の知れない場所で白衣を着て仕事をしているのが窓から見えるけれど、入っていいのか分からないっていう(笑)。それでも何人かお客さんが入ってきて、『何屋さん?』とか『味見させて』という人がいたので、もうちょっと広く一般の方に、一粒で食べてもらえたらと、店頭でも売ることにしたんです」。

 

ボンボンショコラを作る工程は、シンプルなものでいうと、クーベルチュールと生クリームを溶かして乳化させて(生クリームの代わりにレモン汁やパッションフルーツの絞り汁を使うことも)生チョコを作り、それを24時間、結晶化に最適な16度で保存して結合させ、3日目に裁断。機械を通してコーティングしたあと、さまざまなデコレーションを施して完成させていくという、手のかかる一品です。どのような味やデザインに仕上げるのか、パティシエの技術とセンスがぎゅっとつまった宝石のような一品。クーベルチュールになる前のカカオ豆の発酵や天日干しといった作業まで遡ると、とてつもない手間がかかっているだけに、一粒が高くなってしまうのも頷けます。

 

とはいえ、ボンボンショコラの試食はフランスでは当たり前、と西山さん。
「うちも駄菓子感覚で、こんなに食べていいの? っていうくらい渡したりして。だから近所の子どもたちはいっぱい集まったりしてね。なんだか、敷居が高く思える商品を置いてあるんですけど、意外にフランクな感じでおばあちゃんもお子さんも入ってくるし、若い世代の人がインスタグラムで調べてきてくれたりもしますね。男性も来てくれて、お酒好きな人って甘いものが好きな人多いんですよね。間違いなく美味しいですからね、うちのチョコは。ぶれたことはしていないので」。

 

近所には小銭を握りしめてくる中学生の常連さんもいるのだそう。
「その子は、『ボンボンショコラ同じものを二つください、ここで一つは食べていきます』と。しゃれていますよね」。本物のチョコレートを子どもの時から身近に味わえる環境にいるとは、なんともうらやましい限りです。

カカオの自然な甘みが美味しいショコラショー。「Vege&Fork Market」では豆乳で作ったショコラショーを出したところ、「こんなにスローガンに合った美味しいものはないと言ってくれた外国人の方が何人もいて。母国のお母さんが入れてくれたチョコレートドリンクとよく似てる、本当に安心する味だと。ヨーロッパのお母ちゃんと同じ味なんて、すごく作った意味ができましたね」

 

最近は青葉台の建築事務所「古今」でのイベントや、「Vege&Fork Market(動物性食品・乳製品・白砂糖・食品添加物を使わないのがコンセプトの野外マルシェ)」への出店など、地域に密着した活動もしている西山さん。「Vege&Fork Market」への準備段階では、コンセプトを満たすために色々と調べていくうちに、高知で自然栽培の農法でみかんを育てている「しあわせみかん山」と出会います。

 

 

「フルーツはだいたい、傷ついたらジュースにして、搾りかすは捨てるんですけど、自然栽培のみかんの皮は“陳皮”になるんです。これを捨てようとすると産業廃棄物なのでお金がかかる。そこで、その陳皮をうちに売ってもらい、チョコと組み合わせて商品にしたんです」。品質の良い陳皮を有効活用できないものか。そんな西山さんの想いと、みかんを大切に育ててきた農家さんの想いが詰まったボンボンショコラができあがり、マーケットでの販売にとどまらず、今年からは農家さんのギフトにもジュースとともに陳皮入りのチョコが入り、消費者の手に渡っていきます。

 

 

「しあわせみかん山を知ってもらい、チョコレートを買ってくれる人と高知がつながるような、そんな仕事がこれからどんどん増えていけばいいなと思っています」と語る西山さん。ほかにも、伊勢志摩で80歳の漁師さんがとった絶品“あおさ”を入れたチョコもあります。「高級リゾートに来る外国人の方があおさを使ったボンボンショコラを食べて、それをきっかけに海産物が豊かなところだというのを知ってもらえたらいいなと」。

 

お話の中で印象的だったのは「一粒の中にいろんな物語を詰められる」という言葉。食べる側もチョコレートの美味しさとともに生産者の歴史や背景に想いを馳せることで、より一層深い味わいが生まれるような気がします。「ここは僕の仕事、趣味の延長というか表現の場になっている。まさに実験ラボ的な感じですね」。

 

「基本的に一人が好きでネガティブ、自分の工房にこもり、ずっと研究しているのが性にあっている」と自己分析する西山さん。朝から晩まで何時間でもひたすら作ることができ、同業者からも「すごいね」といわれるほどだとか。「身体はバキバキなんですけど、全然苦じゃないんですね。ただ、そんな時はやっぱり人恋しくなりますね。口をずっとあけていないから、急にガコーン!ってアゴが外れそうな気がする(笑)」

 

チョコレートには捨てるところがなく、カットする際に切れ端が出ても、やわらかくしてクッキーにサンドするなど加工して食べられ、生ゴミが出ないのもいいところ。SOCORAではキズものコーナーを作ってお手頃な価格で販売もしています。「さすがに仕事が多くなってキズものが出るときは、うちの奥さんだけでは食べきれないので(笑)。お年寄りの方が買っていったり、隣の美容室はそれを買ってパーマをあてている人が食べるとか。ホテルはそういうのはブランドイメージが損なわれるって結構いやがるんですけどね。キズはついていても味は同じだし、喜んでもらえるお客さんがいるんだったらね。ロスをなくすっていうのもポイントですよね」。

 

「しあわせみかん山」のように生産者さんとつながり、そこのおじいちゃんがチョコを食べて、「うめえなあ、兄ちゃん」「そうですよね、うまいですよね」といったやりとりをしている時が一番楽しいという西山さん。生産者さんでも子どもでも、目線が同じになるとハッと気づくことが多いといいます。そのほかにも、近所の幼稚園のお母さん達からの「忙しいと思うけれどバレンタインチョコを作りたいから教えてほしい」という要望に応えたり、友人からの「奥さんにバースデーケーキをあげたいから作ってくれ」というオーダーでグルテンフリーのチョコレートケーキを作ったり、とフットワークも軽やかにすぐに実現してしまう西山さん。親しみやすい雰囲気の中に隠された情熱を感じます。

 

「きっかけはやはり“人”ですよね。自分がいいと思ったことをやれるのがオーナーで、それを表現する場がある。それが受け入れられなければ潰れるわけだし。海外から空輸される高級チョコレートも美味しいですけれど、本質を見て、SOCORAは1から10まで僕が手がけていて、どんな人にも納得してもらえるものを作っている。よっぽど美味しいよね、と奥さんとも時々話しているんです(笑)」

 

取材後、陳皮が入った「ミカン」と伊勢志摩でとれたあおさ入りの「アオサ」を食べてみました。半分食べて、質のいいチョコレートの味ってこういうことなんだ、甘いけれど、それはベタッとした甘さではなく、後味もさわやかなんだ、と実感。「一粒を大事に食べる」という行為にも、満足感が湧いてきます。じわじわ、ゆっくりと広がるカカオの甘み……。目をとじて食べると、より繊細な味が感じられて、幸せな気持ちがこみあげてきます。チョコってやっぱりすごいなあ、とその威力を改めて感じました。

 

SOCORA初のバレンタイン・ホワイトデーアイテムは、2/1から3/14まで販売(事前予約はありません)。ハート型の器もすべて食べられる「グラン・クール・ルージュ」は2500円。丸いフォルムが可愛らしい「プティ・クール・ルージュ」は1200円

 

最後に耳よりなお知らせ。森ノオトのアップサイクルブランド「AppliQué」もぜひSOCORAさんとコラボしたい! と西山さんに相談し、オリジナルのバレンタインチョコを企画しました。ご家族や大切な人への贈り物、自分へのご褒美として、ぜひお買い求めくださいね。

 

AppliQuéとSOCORAがコラボしたオリジナルのバレンタインチョコ、2800円。AppliQuéのケースは、メガネケースやモバイルギア入れなど、用途は万能。詳しくはAppliQuéのオンラインSHOPをチェック

Information

SOCORA(ソコラ)

住所:横浜市青葉区若草台5-58 青葉台アベニューII 1F

徒歩/東急田園都市線青葉台駅下車徒歩15分

バス/青葉台駅バス停2番乗り場(青30・青31)乗車、ガーデンハウス前下車後すぐ

電話:045-482-5745

営業時間:10:00〜18:00

定休日:不定休

http://socora.co.jp

団 桃子
この記事を書いた人
団桃子ライター
編集の経験を経て、森ノオトライターに。森ノオト編集部内では圧倒的にエコ度が低いことに引け目を感じつつ、“はぐれ森ノオト”目線で書ける記事もある、と開き直って記事をお届け。エネルギー源は、ヨガ、キャンプ、音楽、読書、コーヒー、美術館でのんびりすること。男子と女子、二児の母。
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