子どもの創造性を発揮できる社会に!NPO法人ミニシティ・プラスの10年【後編】
子ども自身の自由な発想と創造性を「まちづくり」につなげていく。「ミニヨコハマシティ」「つづきジュニア編集局」「特命子ども地域アクター」の3本柱で事業を展開してきたNPO法人ミニシティ・プラス。NPO設立以降の10年を振り返り、これまでの知見やノウハウを未来に生かしていくために、NPO理事長の三輪律江さん、事務局長の岩室晶子さん、理事の杉山昇太さんの3人がトークセッションをおこないました。聞き手は、NPO法人森ノオト理事長の北原まどかです。

NPO法人ミニシティ・プラスの立ち上げ秘話、「子どものまち」で大人口出し禁止の理由など、<前編>の記事はこちらからご覧いただけます。

※文中でミニヨコハマシティをミニヨコと略する場合もあります。

 

■ミニヨコ出身者のその後

北原: 

ミニヨコハマシティをこれまでに経験してきた子どもたちはその後、どうしていますか?

 

岩室:

1年目に運営市民だった子どもたちはすでに大学生や社会人になり、そのうちの何人かはミニシティ・プラスのNPO会員になってお手伝いに来てくれています。そのころ小さかった子どもたちは中学生や高校生になり、現在特命子ども地域アクターに参加して活躍してくれています。

 

ミニヨコではごみを少なくするために、リユース食器を使っている。「シャボンズ」という名前で活動(写真提供:ミニシティ・プラス)

 

三輪:

ミニヨコハマシティに参加する子どもは、必ずしもお店屋さんをやりたいという動機だけで来るわけではないんですね。子どもたちが自分の今暮らしているまちで実現したいこと、例えばゴミのないきれいなまちにしたいなどといった、“こうだったらいいな”、“ここがおかしいな”と思うことを、自分たちがつくるまちで実現したいと言ってくる場合もありました。それって子ども自身がまちを知っているからの発案であって、関心がなければそんなアイデアは出てこないんです。
つづきジュニア編集局はミニヨコより後にできたのですが、自分の住む地域のまちづくりにはいろんな人が関わっていて、このまちが成り立っていることを知る入り口になっています。ジュニア編集局から入ってきた子どもがミニヨコにも顔を出すようになり、ミニヨコの運営市民になっていくこともあります。
そしてその子どもたちが何年かミニヨコを続けていくうちに、だんだん仮想のまちでは満足できなくなり、現実のまちでも課題解決や理想実現のために何かできないかと思ってくるのを見てきました。
しかしそれを実現するためには、現実社会で色々口出しする大人とその子どもたちとの関係をどうフォローするかを考えてやっていかなくてはいけないなと思っていました。その頃、神奈川県の政策審議のなかでも子どもの社会参画がテーマになっていたので、提言するだけでなく、実際に県の協働事業を提案しました。
つづきジュニア編集局でまちを知ることから始まり、ミニヨコハマシティの仮想のまちで体験し、特命子ども地域アクターで実際に自分が住む現実のまちに関わっていく、というステップを踏めるステージをミニシティ・プラスでは用意しています。子どもとまちと関わるチャンスを増やしていくきっかけづくりができるようになっています。

 

■子どもの「こうやりたい!」を実現できる社会に

トークセッション当日は、「子どもとまちづくり」に関心のある人がおおぜい訪れた

北原:

ミニシティ・プラスの事業には、三輪さん、岩室さん、杉山さんといった、関わる大人一人ひとりの願いが込められているのかな、と感じます。これから、子どもと地域社会の関係は、どうあってほしいと思っていますか?

 

三輪:

私は常に俯瞰して見ているのですが、子ども自身が遊びの中で気づいたり、失敗したことを通して、自分で実行してみようと思うことや、それを実現して自信につながっていってくれればいいなと思っています。
大きな事故でも起きない限り、参加してくれた子ども一人ひとりが満足してくれるのであれば、それで100パーセントOKだと思います。
その経験が子どもたちにとって、いつかまちを変える機会であったり、まちの中で大人に出会った時の接し方であったりとか、自分のまちとの親和性の持ち方の入り口になってくれることを願っています。

 

つづきジュニア編集局の編集会議の様子。ジュニア編集局は各地に広がり、今年は横浜・みなとみらいにも展開(写真提供:ミニシティ・プラス)

 

岩室:

私はそもそも「仕事は楽しくしなければ」と思っています。私自身は音楽の仕事をしているのですが、音楽というものは自分の気持ちを高めて、楽しんでなければ、いいものをつくれないんですよね。
大人がよく「仕事は大変なんだよ、毎日苦しくてつらくてさ」みたいなことを言うのを耳にすることがあるのですが、それは違うんじゃないかなと思います。努力していくうえでもちろん大変ことはあるし、挫折することも山のようにあるけれども、どんな仕事でも楽しまなければいいものにならないと私は思っています。
子どもたちにはぜひミニヨコで「楽しんで仕事をする」という経験をしてもらって、失敗したとしてもまた次にチャレンジしていってほしいと思っています。
特命子ども地域アクターにおいては、いろんな面白い大人がいるんだな、たくさんの大人がこの土地に関わっているんだな、楽しそうに仕事をしているな、ということを知ってもらいたいです。

2017年には横浜市都筑区中川のまちを舞台に展開されたミニヨコハマシティ。子どもたちの屋台には長蛇の列ができていた

杉山:

僕はミニシティ・プラスの活動で、子どもたちが自分で考えたことを、自分自身で実行できるお手伝いをしていると思っています。実現できる形は人それぞれだと思いますが、結果的に自分でやったということこそが自己肯定感につながっていくのだと思います。
現在の社会では、大人が既存の発想で「これが成功の形だ」と決めてしまっていて、その枠に当てはめて「どうしても成功しなくてはいけない」「進学や就職を最短距離で決めなくてはいけない」というような風潮があり、そのことが社会全体の息苦しさにつながっているような気がします。
でも実際、世の中は違っていて、いろんな回り道から面白いことが始まったり、アイデアがうまれてくるのではないでしょうか。そういう回り道をする機会を子どもたちに与えられたらいいなと思っています。
特命子ども地域アクターを5年間やっているなかで、子どもたちが一番いきいきしていたのは、高齢化して活気がなくなった商店街のおじさんたちと一緒になって活動していたことです。今の子どもたちはサラリーマンでない大人とつきあう機会はほとんどない。商店街のように地元ではたらいている、つまり「まちづくり」をしている大人たちと子どもが本気で付き合ことは、今までまったくイメージしてこなかった大人の姿を見ることになり、気づきが多いんじゃないかなと思います。

特命子ども地域アクターでは子どもたちが実際にイベントを企画、運営までしていく。子どもの視点がまちづくりに反映させていくことで、地域活性化につながっている(写真提供:ミニシティ・プラス)

 ■社会変革装置としてのミニシティ・プラス

 

北原:

ミニシティ・プラスの10年間の経験を、これからの未来にどう生かしていきたいと思いますか?

 


岩室:

今年度のミニヨコハマシティは横浜市に対して市民協働事業を提案していて、市民局とこども青少年局と区と協働で実施できるといいなと思っています。
その一つの理由として、今期のミニヨコハマシティの市長が「かながわ子ども合衆国」の大統領に当選したことがあります。かながわ子ども合衆国とは、神奈川県で開催されている「子どものまち」が集まってサミットをしたり憲法をつくったりしているプロジェクトなのですが、今回その子ども合衆国の大統領がいるまちとして、ミニヨコに他の神奈川のいろんな「子どものまち」が集まることになっています。
この規模となると、もう我々のキャパシティを超えてしまっているのと、多くの人に知ってもらえるチャンスなので、市役所の人たちにも理解を深めてほしいと思い、市民協働事業を提案しました。

ミニヨコハマシティの草創期から、店舗や市役所などの空間のフレームを建築の専門家と共同開発し、それを「ミニヨコキット」として今でも活用している

杉山:

私は、子どもが社会参画する意義や意味を、もっといろんな人に考えてもらいたいと思っています。
子どもを「子ども」としてみるのではなく、まちづくりを一緒にしてくれる一員として、当たり前のように仲間として考えられるような社会になっていってほしい。実は意外と簡単なことで、どんなに小さい子どもでもちゃんと一人の人間として接すればいいのだと思います。そうやって子ども一人ひとりを尊重し、一緒に楽しいことをしようと思えば、どんどんこのまちが楽しくなってくると思います。
ミニヨコを始めた当初は、職業体験とかキャリア教育とかいうイメージをもっていたんのですが、今ではそれは違うなと感じています。例え子どもであっても、大事なものは既に一人の人間として持っています。そして成長過程の子どもだからこそ、その中に持っているものを発揮することが必要で、そのお手伝いをずっとしていきたいと思っています。

ジョブセンターに張り出された求人案内。子どもたちの発想力で新しい仕事や働き方が臨機応変につくられていく

三輪:

ミニシティ・プラスの特徴は、リアルなまちづくりをベースにした子どものまちを展開しているところです。全国にある様々な「子どものまち」の活動をしているところでは、児童館や子育て支援施設や学童保育など、まちづくりをベースにしているところもあれば、子どもの健全育成、教育効果で閉じてしまっていて他者を入れる視点がない団体もあります。

それを否定するつもりはありませんが、まちづくりという観点からすると、いろんな人たちをつなげたり、相手にとっての意味などを提示しながら対話していかないと、地域の団体や企業などから共感を得られないし、寄付ももらえないと思います。町のステークホルダーに対して場を開いて巻き込んでやっていく視点が必要なんですよね。

だからミニヨコハマシティを開催する時には地元企業に協賛をお願いするし、お金がなかったら「物でもいいです!」「人でもいいです!」「場所を貸してください!」など、なりふり構わず協力を要請してやってきました。そして、協力相手に対して、ミニヨコの成果をきちんとフィードバックしています。

ミニシティ・プラスはたまたま、研究者、NPO、行政の経験者が集まっています。事業を進めていくうえでは、行政のいろんな部署と関わっていかなくてはいけないし、企業にも声をかけていくし、相手によってミニシティ・プラスでやろうとしていることの意義の伝え方を工夫する、つまり翻訳のしかたを変えるノウハウもあります。

それは実は私たちの大きな財産だと思うし、そうしているからこそ事業が続いていくし、社会実験をやっていく意義があるのかなと思っています。

 

特命子ども地域アクターの成果発表会。子どもも地域の大人も真剣勝負でまちづくりに取り組んできた成果をアピールする(写真提供:ミニシティ・プラス)

 

北原:

三輪先生はまた、「まち保育」という観点で、子どもとまちの関係を、次のようにとらえていますよね。子どもがまちのモノ・ヒトを活用するステージの「まちで育てる」、子どもが「まちで育ち」、住民が子どもに関心を持ってまち全体で子どもを育てる「まちが育てる」フェーズ、そして最終的にともに暮らすまちにつながっていく「まちが育つ」というステップを、まさにミニシティ・プラスでも実現しているように感じます。

 

三輪:

私は「まち保育」を研究するなかで、未就学児の頃からの社会参画をやりたいと思っています。ミニヨコも4歳からお姉ちゃんなんかに連れられて一人で動いている子もいるので、その時期からまちのことを知ることもやろうと思えばできるかもしれません。
ミニヨコの中では「まち保育」をキーワードとしては入れていませんが、未就園児の社会参画の可能性も含めて、色々な世代でのまちとの関わり方をどういう風にデザインしていくかを考えたい、再整理していきたいと思っています。
それから私がもう一つやりたいことは社会における「子どもの権利」についてです。日本ユニセフ協会がおこなっている「子どもにやさしいまち(Child Friendly Cities)事業」では、子どもの社会参画を推奨しています。たとえば「子どもがまちの決定に影響を与えることができる」という条項がありますが、これが欧米ではとてもすすんでいて、本当の公共事業に対して子どもの声を聞く仕組みが実際にあります。でも日本はすごく遅れていて、さらに日本より遅れていた韓国や台湾、中国に追い越されているのが実情です。
「子どもの権利」については、残念ながら反対論があったりするのですが、それでもやっぱり子ども自身の可能性を大人が認めて、社会の中でどう生かせるかを考えていくのはとても大事なことだと思うので、どういう風に制度化していくかをユニセフと一緒に調査研究しようとしています。
それから、全国の「子どものまち」を経験している子どものその後、つまり彼らがどのように社会的影響力を持っているのかをきっちり把握していくことが、社会変革のためには大切だと思っていて、その評価にも着手しようとしています。ミニシティ・プラスの活動が社会の動きに対して変革を与えられるような可能性について、客観的に評価していけたらいいなと思っています。

まち保育」の領域で、子どもとまちづくりの新機軸を確立しつつある三輪さん

 

杉山:

事業を進めていくうえで外せないのが、お金の流れです。我々のステークホルダーは子どもたちなので、彼らからお金をいただくのは難しい。まちに関わる子どもが増えることは、まちを想う大人を育てることに直結するので、多くの方にミニシティ・プラスへの共感をいただき、寄付で支えていただく仕組みをつくりたいと思っています。難しさは、ミニヨコの事業で親からお金をいただくと、親の意を汲む形になってしまうので、それはあまりやりたくない。だったらどうお金を循環していけばいいのかというアイデアを、いろんな方との対話を通じて生み出し、それを実現していきたいですね。
子どものクリエイティビティが発揮される社会は、実は大人の社会の中でも居心地がよく、閉塞感から解放される効果があるのではないかと思っています。まさにこれは新しい公共の一つのノウハウだと思っていて、それに投資してくださるような、そんな大人の参画も募っていきたいですね。

 

北原:

「寄付」という、サービスに対する対価を求めないお金を投じることによって、自分の子どもの周りや社会に対して未来を一緒に描いていける大人をどれだけ増やせるかが大事なのかな、と感じています。大人も一緒に、子どものまちを楽しむ、自分の子ども時代を取り戻すなど、いろんな作用を私たち自身が考え、その可能性を発信しつつやっていかなくてはと思います

 子どものまちの存在は大人の社会を豊かにすることにつながっていたり、大人だけでは解決することができない社会課題を解決しうる処方箋にもなることを、ミニシティ・プラスの10年がまさに体現していますよね。これから新たなお金の流れをつくり、社会システムへの変革の一石を投じることを期待しています。

トークセッションの進行を務めたNPO法人森ノオト理事長の北原。2009年生まれの長女を抱っこしながらリユース食器ブースの運営を手伝ったことをきっかけにミニヨコを知り、今はその長女がミニヨコの参加者として子どものまちを楽しんでいる

 

<登壇者プロフィール>
三輪律江さん:㈱坂倉建築研究所、横浜国立大学VBL、地域実践教育研究センター准教授などを経て、横浜市立大学准教授(国際総合科学部まちづくりコース、大学院都市社会文化研究科)。市民参画型のまちづくりや、子どもの社会参画などが研究テーマ。共著書の『まち保育のススメ』(萌文社)でこども環境学会賞を受賞。

 

岩室晶子さん:NPO法人I Loveつづき理事長、NPO法人ミニシティ・プラス事務局長、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ理事、NPO法人テレワークセンター横浜理事、日本ナポリタン学会副会長など、横浜のまちづくり活動のキーマン。本業は音楽家で、TV番組のバックミュージックや有名アーティストへの楽曲提供、編曲などを手がける。

 

杉山昇太さん:ニッカウヰスキーを経て横浜市役所に転職、中区役所で選挙啓発を担当している時にNPO法人ミニシティ・プラスの立ち上げに関わり、現在理事。市役所を退職して横浜市立大学の三輪ゼミで修士号を取得。大学の事務職にも関わりながら、ミニシティ・プラスを本職にしている。

 

北原まどか(聞き手):NPO法人森ノオト理事長・未来をはぐくむ人の生活マガジン「森ノオト」編集長。リユース食器貸し出しのNPO法人Waveよこはまでの活動を通じてミニヨコハマシティに参加し、取材。今年度より森ノオトで三輪先生を招いて「まち保育」にも関わる

Information

NPO法人ミニシティ・プラス

http://minicity-plus.jp/

中西るりこ
この記事を書いた人
中西るりこライター
静岡県出身、横浜在住歴20年以上の2児の母。広告制作会社でWEBデザイナーとして働き、出産後はフリーでロゴ、パッケージデザインなども。旅行、自然、映画、音楽、古いものが好きで、キャンプや野外イベントに目がない。にぎやか兄妹に振り回されつつ、休日は家族と各地を飛び回る。
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