小屋を再生しみんなの居場所に 都筑区東山田町・チャコ村
2028年、日本の空き家は1770万戸、空き家率は25.7%にもなると言われています(NRI未来年表より)。もしこの先、住む予定のない家屋や土地を引き継ぐことになったら、あなたはどうしますか? 横浜市都筑区東山田町に使われなくなってしまった小屋をみんなの居場所に生まれ変わらせ、地域に開放しているところがあります。老若男女問わず誰だっていつだって温かく受け入れてくれる、そんな素敵な小屋「チャコ村」を紹介します。(ローカルライター講座修了レポート:取材・文・写真=安部尚子)

私は都筑区に引っ越してきて、ちょうど10年になります。都筑区の平均年齢は41.75歳(平成30年1月1日現在・国勢調査より)と、横浜市内にある18区の中で一番若く、子育て世帯の多い地域です。都筑区に住んでいると、日本の高齢化が進んでいること、将来日本の人口減少が進み空き家が増えていくことが想像しにくい環境です。しかし、私の生まれ育った千葉県のとある町では、高齢化が進み、実家の近所には空き家がちらほらと目立つようになってきました。この町はこの先どうなってしまうのだろう、私の住む都筑区でも空き家が増えた時、町に活気が失われていくのではないか、と漠然とした不安を感じていた私は、都筑区に使われなくなった小屋を活用して、地域の交流を生み出しているところがあると知り、早速尋ねてみることにしました。

 

横浜市都筑区東山田町は、30年ほど前に開発された港北ニュータウンとは一線を画し、昔からの地元の人たちが住む町です。この住宅地と農地の混在する一角に「チャコ村」はあります。「チャコ村」には、小屋と畑、そして小さな広場があります。小屋の当初の役割は、畑仕事の合間に休憩をとったり、野菜を売ったりする場所でした。小屋の持ち主だったチャコさん(故・小泉ヒサさん)は、小屋の前を通る人を中に入れて、一緒にお茶を飲むことが習慣でした。そこは、チャコさんの知っている人も知らない人も関係なく、子どもから大人まで“前を通った”というだけで歓迎してもらえる場所でした。

2017年のクリスマスでのチャコさん

3年前、チャコさんが高齢になり日常生活に不安が出始めたことから、小屋は使われなくなり、それから2年ほど閉鎖されてしまいます。この間、チャコさんの孫でいとこ同士である菊島景子さんと小室順子さんは、「小屋が好きだったし、このままではもったいない」と感じていたそうです。2017年9月、買い物の途中で会った二人は、「小屋で何かはじめよう」と思いつき、すぐに実行に移しました。多くの人たちの協力のもと2017年12月16日にチャコ村は開村します。二人が思いついてから、開村までわずか3カ月。この行動力に私は本当に驚かされましたが、「いろんな人が後押ししてくれたし、何よりチャコさんと小屋で一緒に過ごしたかった」と小室さん。

左から、小室順子さん、菊島景子さん。壁にはチャコさんとの思い出の写真がいっぱい

しかし開村から2カ月ほど経った2018年2月、チャコさんが亡くなってしまいます。普通ならチャコ村はしばらくお休み、となるところですが、亡くなった翌日も、菊島さんは小屋に出向き、畑を耕しました。チャコさんは畑が大好きだったから供養になると思ったのだそうです。小室さんは「チャコさんと一緒にいるためにチャコ村を始めたのに、開村2カ月で亡くなってしまった。だけど、チャコさんが生きているうちに始められてよかった」と、チャコさんの思い出とともに話してくださいました。

 

開村から1年経った今では、常連さんは年代問わず20名ほどいます。私が取材で伺った約1時間の間にも、ご近所のだれかが顔を出し、野菜を持ってきたり、お茶を飲んでいったり。チャコさんの温かく誰でも迎え入れる精神が、菊島さんと小室さんに受け継がれているように感じました。

気軽にご近所の人が立ち寄り、お茶を飲んだりおしゃべりしたりで、小屋の中は笑顔が絶えません

畑では小松菜、春菊、のらぼう菜など、様々な野菜を作っています。失敗して収穫できなかったものも少なくないとか

新たな交流も生まれています。二人は小屋で特技を持った知人に講師をお願いしてポマンダーやリース作りなどのイベントを開催するようになり、地元以外の人も来るようになりました。これまで農作業に触れてこなかったお二人が、ご近所さんに助けてもらいながら様々な作物を育てています。チャコさんが亡くなる前、「ここのことは任せたから好きなようにやれ」と言ってくれたことが、二人の挑戦の源になっているのかもしれません。

 

チャコ村開村から1年、まだ始まったばかりですが、今後は、育てた野菜を売ったり、かつてカフェを自営していた菊島さんが小屋で野菜を使った料理を提供するなどして、チャコ村を続けていけたら…と夢を語ってくださいました。

 

菊島さんも小室さんも子育て世代で、ご自身のお子さんの面倒を見ながらチャコ村を開いています。子育てしながら毎日続けるのは大変だろうと私は勝手に思っていました。しかし、イキイキと楽しそうにお話ししてくださる二人を見て、小屋を訪ねてくる人だけではなく、菊島さんと小室さんにとっても、ここは居心地のよい場所なのだなと思えてきました。「年齢関係なく友達になれたり、人情に触れることができたり、この小屋は得るものがいっぱい。無理をせず気楽にこの先も続けていきたい」と菊島さん。チャコさんの思いを継承しながら、この小屋はまだまだ新たな出会いを生み、みんなの居場所としてずっとそこに存在してくれるのでしょう。

 

「小屋を再生することは、一人ではできなかった。チャコさんとつながりのある人や親せき・地域ケアプラザなど、多くの協力があったからできた」とお二人は語ってくれました。すっかり人付き合いが希薄になってしまった現代で、昔ながらの顔と顔を合わせた直接の結びつきが、この小屋をただの空き家ではなく、居場所として生まれ変わらせる力になったのではないでしょうか。近い将来問題となる空き家再生のヒントを、このひっそりと佇む小屋に教えてもらったような気がしました。

Information

チャコ村

住所:横浜市都筑区東山田町1681

電話番号:080-4185-1840

開村時間:11:00〜16:00

定休日:水曜・日曜・土曜日は不定期

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