「農に学ぶ。」への幸運なる導き。
2004年の6月。知人から、田植えの援農の案内をいただいた。横浜市青葉区の寺家ふるさと村内の田んぼでの作業だという。援農の呼びかけ人は木村広夫さん。寺家ふるさと村で10年来、独自の自然農法で田畑を耕している人だった。
(text:田中英司)

2004年の6月。知人から、田植えの援農の案内をいただいた。横浜市青葉区の寺家ふるさと村内の田んぼでの作業だという。援農の呼びかけ人は木村広夫さん。寺家ふるさと村で10年来、独自の自然農法で田畑を耕している人だった。 当時の私は、仕事に忙しく心身の調子を崩して通院中の身。病気は好転、悪化を繰り返していた。そんな時にいただいた案内だった。その時は意識しなかったが、今となっては運命的な出会いだったと思える。

 

さくらの咲くこの時季がすべてのはじまりだった

 

私を含め、友人、知人ら7、8人で連れ立って田植えに参加した。全員が東京、川崎に住む都市生活者で、田植え初体験。慣れた人なら1時間半程度で終わる作業が、3時間半もかかってしまった。その間、みんな田んぼに浸かりっぱなし。暖かい日だったが、はじめの一歩はヒャっとして冷たかった。田んぼの土はとろとろの状態。身体のバランスを保つのが難しく、よろけそうになる。苗の間隔の目印が付いた紐を、畦から横に引っ張ってもらい、4〜5本ずつ植えていく。みんなが植え終わると紐は前に移され、次の横列を植えていく。その繰り返し。植え方に性格が表れてくる。大胆派、慎重派、時間優先派……などなど。私は何派? と思いながら、意外に面白いと感じる。

 

複数人で同じ作業を同じ時間にやるということは、他の人とのペースの調整も必要になる。誰かが終わっていないと、前には進めない。呼吸を合せながら、段々とスピードも上げていく。運動会のムカデ競争のようだ。楽しみながら田植えをする余裕はない。そうこうしているうちに、水の冷たさはまったく気にならなくなってきた。それどころか時々、汗が田んぼに落ちる。腰も痛くなってきた。うーんと、腰を伸ばすと、大きな青空が広がっている。黒澤明監督の「七人の侍」の「平和」を象徴するラストシーンが想い出される。気分はいい。

 

ゴールの畦に着いた時は、自然と倒れこみ仰向けになった。ほうじ茶をいただきながら、達成感の様なものを感じた。たかが一度の田植えである。今ではほとんどの農作業が機械化されているが、遠い昔の人は、ずーっとこのようにやってきたのだ。

それと木村さんが7年ほど前から携わっている、地元中学生の稲作体験授業も気になった。中学生に「農」をどう教えているのか。中学生は「農」に何を学んでいるのか。それを知りたくて、授業の初日となる「稲作説明会」に参加した。自然農の米づくりの説明にじっと聴いている子、よそ見している子、隣の子とじゃれる子、と、さまざまだった。この子たちと一緒に「農に学ぶ。」に弟子入りしょう。この時の軽い決意によって、時空間を越えた、途方もなく奥深い世界へと導かれることになった。

 

 

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