種籾を授かることから、お米を育てる1年は始まる。
地元中学での稲作の体験授業のスタートは、種籾の「伝授式」から始まる。毎年、オープニング・セレモニーで、3年生が2年生に種籾を授ける。渡した種籾は、3年生が、昨年2年生だった時に育てたお米から取り分けて保存しておいたものだ。3年生もまた、種籾を先輩から授かってきた。これが毎年、伝授式として続いている。単に種籾を受け渡すと言うよりは、大袈裟だが、生命を授かると言ったほうが正確なのではないかと感じた。(寄稿:田中)

伝授式の翌日、中学校で自然農のお米の育て方の説明を行った後、実行委員の生徒10名ほどと、種籾の「塩水選」を行った。昨日受け渡されたばかりの種籾から、苗を育てる種籾を選別するのだ。

この作業は理科の実験のようだった。水の中に塩を少しずつ混ぜていき、生卵の浮き具合で塩の濃度を調整する。うるち米の場合は、生卵が立って水面近くに浮かんだ状態が最適な濃度のようだ。中学生たちが少しずつ種籾を塩水の中に入れていく。充分な生長力を持たない種籾は浮かび、それをアミなどですくい除いていく。種に適した籾は静かに沈んでいき、最後、中学生たちに優しくすくい取られる。そして、種まきの時を、しばらく待つ。

その日の夕方からは、「米を作ろう2009」のメンバー向けの苗を育てるため、種まきをした。苗床がある田んぼの両脇は、森に囲まれ、森に抱かれている感じだ。苗床は、泥で表面を整えられ、長方形に、きれいにつくられている。粘土でできた陶器のようだ。そこへ種籾を蒔いていく。種籾を持った手を揺すりながら、パラパラと種を振りかけていく。蒔きき終ったところは、水に濡らしたへらを使い、土がかぶるかかぶらないかという微妙な加減で土をかけていく。かがんで手を伸ばし、うっすらと、ゆっくりと。腰が痛くなる。農の作業は、腰に負担のかかるものが、つくづく多いと思う。

辺りはすっかり暗くなっていた。月の明かりに気づいた。森があって、田んぼがあって、月が辺りを照らしている。その中に、自分もいた。同化? 音は、蛙の鳴き声? 少しの間、時代や時間が、とんだ。タイムスリップ。神聖な気分だ。種まきの晩の出来事。

それから1週間後ぐらいだろうか。苗床に、小さな水っぽい緑色の芽が、生えてきていた。田植えまでの50日間ほど、3分刈りの丸坊主の苗が伸びるまで、見守ることになる。

籾が種になる、種籾のことをはじめて知った。

自然農は、自然の力を、存分に生かすんだなぁ。

 

木村さんにより自然農法の概念図

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