シンポジウム「原発」今こそ考えようリポート。3人の賢人によるパネルディスカッション。あざみ野に230人が集い、話し合いました
リポーターの東海林かおりです。9月半ばの3連休の中日、日曜日。日差しが暑く残暑の厳しさを感じたこの日、あざみ野に近隣の市民が集まりました。
3.11の地震からはや半年。地震があって、原発事故があって、その被害があって、私たちの暮らしは? これから先の未来は? その未来に生きる子どもたちは?……会場に集まった人々の数だけ、たくさんの声を感じた一日でした。

シンポジウムで登壇した3人の賢人は、衆議院議員で以前から核燃料サイクル政策への提言をしてきた河野太郎氏、元東芝で原発の設計に関わり事故後は技術者の立場から事故解析を行ってきた後藤政志氏、元西武百貨店の社長で参議院議員を経て現在は市民活動でも活躍する水野誠一氏。コーディネーターは地元青葉区・緑区の前衆議院議員の福田峰之氏。「原発や現在のエネルギー政策には、どこに問題があり、何を考えたらいいのか、この会を考えるきっかけにしよう」と福田氏から呼びかけがあり、森ノオト編集長キタハラマドカの進行でパネルディスカッションがスタートしました。

 

 

第一部は、原発と放射能について。

第二部は、これからのエネルギー政策について。

各部の後半には、入場の際に各自がもらっている付箋に質問や感想を書くことで、来場者とパネリストとの間で意見交換をするというのが今回のシンポジウムの構成でした。

第一部では、まず、なぜ原発事故が起こったのか、原発の安全性についての認識や、日本という地震が多い土壌で原発が立地する危険性などについて、後藤氏から語られました。

続いて河野氏から、これまでの政治の世界での原子力政策がどのように議論されてきたのかについて話がありました。安全性を疑問視する声はなかったとのことに驚きました。

水野氏からも、浜岡原発の例を挙げながら原発の危険性が語られました。当初は原発を容認してきた水野氏が、浜岡原発の危険性を知り、知事が原発を停止する権限があるということで静岡知事選に出馬したという話は、会場の皆さんへの説得力がありました。

また、後藤氏は、原発の被害はもっと壊滅的であった可能性が高かったと指摘。原発のような危険と隣り合わせのエネルギーに私たちの将来をかけることはできないとコメントし、安全性への考え方が完全に欠如している原発を維持していく選択肢はあり得ないと力説しました。自然エネルギーへのシフトは難しいものの、社会がそういう方向に向いたら必ず実現できると会場を勇気づけます。

 

 

第一部を終わって、会場の皆さんへ、疑問や意見を募ります。正直、声を上げる方は少数では? と思っていましたが……。

集まった付箋が、これだけありました。その数に圧倒されました。

質問から浮かび上がるのは、やはり人々が十分議論できるだけ、不安を行動に変えられるだけ、人に伝えることのできるだけの情報を得ていないとうこと。自分自身で判断できるだけの情報を得ていれば、クリアできる問題も多いはず……その現状を痛感しました。

ならば、これからどうすれば? 第二部はまさに、未来へ向けての話し合いになりました。

 

 

まず水野氏から、暮らし方を見直す方法の一つとして、江戸時代からの日本の暮らし方・生活の文化の知恵についてのお話がありました。夏ならば、風鈴、打ち水など、味わい深い日本の習慣。聞いているだけで生活の豊かさが感じられます。この夏、グリーンカーテンや打ち水を行った家庭も多いことと思います。文化的豊かさを思い出すこのような生活は、人の温かさも感じられます。

後藤氏からは、技術者の視点からのエネルギーについてのお話がありました。化石燃料への依存を下げながら徐々に自然エネルギーへと移行していけば、最終的には自然エネルギーで日本のエネルギー需要をカバーすることは可能であるとのこと。その時に重要なのは、電力をたくさん使わなければ成り立たない現在の仕組みをそのまま維持するのではなく、省エネを行い、ライフスタイルを変えていくことを考えなければいけない、との提案がなされました。

河野氏からは、政治が路線を明確に出すことの重要性が訴えられました。耐用年数が来た原発を廃炉にし、これまでのあらゆるエネルギー政策の仕組みを見直すことが提案されました。

 

 

この日は、会場にキッズスペースが設けられていたことがあり、子連れの家族でも参加することができました。

子どもがいる家庭では、放射能の問題は軽視できないことですが、子ども連れではなかなか話を聞くチャンスがないのが現実。この日は家族で参加できたことで、今後の参考になった方も多かったのではないでしょうか。

また、パネリストのテーブルにはWaveよこはまのリユースカップがさりげなく置かれていました。こんな小さなエコが、とても心地いい暮らしにつながっていくと感じました。

白熱した議論が最後まで盛り上がり、あっという間の2時間が過ぎました。

最後に賢人から送られたメッセージはこちら。それぞれのメッセージを受け、会場からは大きな拍手が送られました。

水野氏は、「20世紀は人間が文明を信じ、科学技術の進歩が著しかった時代。化石燃料の8割を使い切った私たちは、今こそ謙虚な生き方をしなければいけない。原発事故はその時に何かが起こるのではなく、20年30年が経過してその影響が現れる」と話しました。

後藤氏は、「環境にやさしい原子力はあり得ない。放射能をいったん放出したら、もとに戻せない。科学技術は倫理的な要素が大切で、その一環として、原子力をとらえることが重要」と話しました。

最後に河野氏は、「利権構造があるのは、原発だけではない。今日会場に集まったのは、エネルギー政策に興味関心があり、行動した方々。今日話し合った事柄をぜひ周りに伝えてほしい」と締めくくりました。

まだまだ、議論はこれから……。会場の誰もが、そう思ったのではないでしょうか。この日のこの時間を、ここだけにとどめずに、周りに伝え、進める。この先にある可能性を、ひとつずつ構築して、未来を築いていきたい。そう思った一日でした。

自然エネルギーに移行しながら、これまで私たち日本人が見失ってきた文化や風習をまた生活の中に息吹かせることができたらそれは素敵なこと。新しい未来へ、こどもたちと希望をもって進んでいきたい……そんな風に感じました。

森ノオトからも、地域、地元ができること……私もリポーターの一人として、発信を続けます。

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この記事を書いた人
東海林更央莉ライター卒業生
山形出身で、元日本語教師、3児の母。森ノオトでは2011年より兄弟の成長と重ねた絵本の連載を続け、妹が増えた今は女子らしい視点が加わり多くの母親の心をつかんでいる。家族の趣味は旅行、食べ歩き、自然のなかで過ごすこと。編集長の中学校時代の同級生でもある。
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