第30回:城南信用金庫が”脱東電”。原発を使わない電力会社へ契約変更
地域金融がエネルギー社会を変える? 城南信金の挑戦
(環境ビジュアルウェブマガジン「ジアス・ニュース」での連載より)

東日本大震災直後の4月8日に「原発に頼らない安心できる社会へ」というメッセージを掲載し、地域に密着した金融機関として「脱原発」を表明した城南信用金庫。自社での徹底した節電や、省エネ投資への金利優遇などの行動に移し、吉原毅理事長自らが積極的にメディアに出てメッセージを発するなど、保守的と言われる金融業界で脱原発をリードしてきた。

 

その城南信用金庫が12月2日、原発を推進する東京電力との契約を解除し、2012年1月より原発を使わない特定規模電気事業者(PPS)の再大手「エネット」へ契約を全面的に切り替えると記者発表した。

 

「原発を止めるためには東電の供給負担を減らすことが契約変更の目的」と語る吉原理事長

 

■書面のみでの切り替えが可能

 

城南信用金庫は2012年1月から、本店および各営業店で使用している電力について、東京電力との契約を解除することを発表した。天然ガス火力発電を中心に展開し、かつ太陽光や風力発電など自然エネルギーに力を入れている特定規模電気事業者(PPS)のトップシェアを持つ「エネット」(東京ガス、大阪ガス、NTTファシリティーズが出資)に契約を全面切り替えすることを発表した。城南信金では、同金庫と同じように各企業などがPPSへの切り替えを推進し、日本全体のPPSによる電力供給が増えれば、東電などが主張している今後の電力不足が解消されること、原発を使わない電力の供給が増えて原発を維持する必要性がなくなるとしている。

 

今回、城南信金のなかでPPSをエネットに切り替えるのは、全国85店舗のうち77店舗。テナントや高圧契約でないなどの理由で技術的に難しいところをのぞいて全店舗で実施する。

 

東電からエネットへの切り替えによって、電力料金は2010年度実績の2億円から同年対比で1億9000万円に下がり、5.5%の電気料金を削減できる見込み。50kW以上の高圧受電での電力ユーザーであれば、切り替えは書面の契約だけで済むため、一般のビルオーナーやマンション、中小企業でも容易に契約変更が可能だという。吉原理事長は、「環境にもやさしく経営面でもメリットがある制度なので、営業活動の中で地域の中小企業などに呼びかけ、国民運動という形で展開していきたい」と語った。

 

「我々が率先して地域の事業者などに脱原発を呼びかけ国民運動を展開したい」(吉原理事長)

 

 

■PPSの需要家を広げて健全な電力市場を

 

会見に同席したISEP(環境エネルギー政策研究所)の飯田哲也氏は、「城南信金が選択肢を示すことで、現在はわずかに3%のシェアにすぎないPPSの需要家を広げることにつながる。電気料金が安くなり、健全な競争環境が広がることで、電力の安定供給と経済合理性、需要家の利便性と選択肢が広がることが今後期待される」と同金庫の取り組みを評価。一方で、「電力の供給と送電網の独占が続いているなかで、発送電分離と電力市場改革の道筋が何よりも必要である」と解説した。

 

城南信金では今年4月8日に「原発に頼らない安心できる社会へ」というメッセージを発表して以降、全店舗を挙げて徹底した省電力、省エネ活動、高効率設備への更新などを行ってきた結果、今夏の電力使用量は前年対比で3割以上の削減を達成した。

 

また、金融商品の面でも、省エネ投資への借り入れ者に対して当初1年の金利を無利息(2年目以降は年利1%)にする「節電プレミアムローン」や、10万円以上の省電力投資をした個人に1年ものの定期預金の金利を1%にする「節電プレミアム預金」などのサービスを展開。再生可能エネルギー固定価格買取制度の法案成立後、自然エネルギーへの投資やファンドなどの支援なども見越したサービスの展開も検討していくという。

 

ISEPの飯田哲也氏は「自然エネルギーへの投融資に地域の金融機関が新たなモデルをつくることを期待したい」と語る

 

会見の最後に吉原毅理事長は、「原発は最大の環境問題で、地域の安全を脅かす。脱原発を発表した後、多くの地域の方々に応援のメッセージをいただいた。地域で生き残るためには脱原発がどうしても不可欠だ」と訴えた。

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/編集長/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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