失われた絆を地域に取り戻す! どんな時もつながりあえる「街の家族」
青葉区奈良町に空き家を利用して地域の人たちが集う場所があると聞いて、取材に行ってきました。赤ちゃんからお年寄りまでが自由に過ごせる「街の家族」。映画『3丁目の夕日』のような、地域での世代を越えた交流がそこにはありました。
(Text:松岡美和)

青葉区奈良町の住宅街の中にある一軒の白い家。門の横には椅子が置いてあり、そこに男の子の人形が座っています。これが「街の家族」がオープンしている印です。

午前10時すぎ、「おじゃましまーす」と玄関から入ると、すでにたくさん人が来ています。

リビングの大きなテーブルでおしゃべりをするお年寄り。台所からも何やら女性たちの賑やかな声がします。私の後にも、子どもを連れたお母さんが「こんにちは!」と入ってきました。

集まった方々はシニア世代だけでなく、赤ちゃん・子どもを連れたお父さんお母さんなど、年齢も様々です。あっという間に総勢15名ほどで家はいっぱいになりました。

この家、元々は、ご高齢の女性が一人で住んでいました。しかし、高齢になって一人で住むにはあまりにも大きすぎると、引っ越されたそうです。

そんな時、地域で交流の場所を作りたいと空き家を探していた「街の家族」実行委員会のみなさんが、大家さんのご好意を受けてこの家を借り受けて、地域で誰もが集まれるコミュニティスペースとして利用しているのです。週に3回(火・木・金)、10時から15時まで誰でも利用できます。利用料は1日100円、もしくは1カ月1000円です。

 

「今度別のところで発表するんだけど、ちょっと練習させて」とみんなの前で歌を披露した絵本作家の早川和子さん。その後、自作の絵本の読み聞かせが始まり、自然とみんなが聞き入る。1歳半の私の娘も手を叩いて大喜び

 

「街の家族」に来て何をするかはその人次第です。「家に閉じこもっていてもつまらん」と、ここでおしゃべりをするのが楽しみなのは近所に住む80代の男性。子どもたちと触れ合いたいと絵本の読み聞かせをするのは、同じくご近所の絵本作家・早川和子さん。1歳半になる私の娘も、動物がたくさん出てくる早川さんの手作り絵本に大興奮していました。

そしてみんなが楽しみにしているのが300円で食べられるランチです。この日は、「街の家族」の立ち上げメンバーの1人である長宗キミヨさんを筆頭に、女性陣がお昼ごはんを準備していました。長宗さんは管理栄養士でもあり、昔ながらの日本の伝統食や一汁三菜の食事法を大事にしています。庭でとれたトマトとレタスのスープ、ブリの黒酢煮、じゃがいもと人参の炒め物などがテーブルに並びました。「このらっきょうは先週漬けたのよ」「トマトは街の家族の庭でとれたの」などなど会話もはずみ、みんなで食べる食卓はとても賑やかで、お料理もとても美味しかったです。

 

一汁三菜のバランスのとれたおかずが大皿に並ぶ。みんなで取り分けるのが「街の家族」流で、本物の家族みたいな食卓の風景だ。このボリュームで300円は安い。普段はその日その日で集まった人でお昼ごはんを作っているそう。お弁当持参で食べる人もいた

 

実は、「街の家族」がうまれたきっかけは、2年前の3.11東日本大震災にありました。

「街の家族」代表の岩間千秋さんは、震災直後の2011年5月に東北の被災地へ向かい、大きな避難所だけではなく、小さな集落まで足を運びました。被害にあった方々へ花を贈るなどのボランティア活動をしながら、震災後の東北の町や村で復興を支えているのは、地域の人たちのつながりや助け合いだと感じたそうです。

いつ私たちの暮らす首都圏でも大地震が起こるかわからない昨今。自分たちの地域でも人と人がつながり合える街づくりがしたい! こう考えているうちに「街の家族」というアイデアへと形を変えていったそうです。

立ち上げメンバーの一人、小笠原弘さんは、いま「街の家族」が必要とされる理由をこう語ります。

「街には人が住んでいて、お店があって、地区センターのような公共施設がある。でも、縁側だとか井戸端だとか、地域の人たちが気軽に話し合いコミュニティをつくってきた、そういった場が失われている。昔は、住んでいる場所には多様な人間の層によって織りなされる厚みがあって、その中で人々が生活していた。現在は、豊かさを追求していく中で、中身が空洞になってきている。『街の家族』がその失われた世界を埋める役割ができるんじゃないかな」

 

街づくりについて熱く語る小笠原弘さん(写真中央)。地域の人たちが「街の家族」に集うことで、人間関係に厚みが出ることを期待している(撮影:北原まどか)

 

奈良町は1970年代から、ニュータウンとして団地や住宅が建ち並び、たくさんの人が移り住んできました。しかし、今では住んでいる人の高齢化がすすみ、独り暮らしのお年寄りや空き家が目立ってきているそうです。

自宅での生活はもちろん大切ですが、家庭に閉じこもってばかりいては地域の人とつながれません。料理や大工仕事、子どもの世話など、自分の持っている力で活動するきっかけをつくったり、情報交換をしたりする場として「街の家族」を活用してもらいたいのだそうです。

「『街の家族』が町の中にひとつでなく、もっと増えていって欲しいですね。今後、この取り組みが平面的に広がっていけば、失われた世界が現代風によみがえってくるのでは」と小笠原さんは言いました。

 

「家でテレビ見ているより、ここに集まるみんなの話を聞く方が、ドラマがあって楽しい」と話す、代表の岩間千秋さん。街づくりに意欲的で、これまで託児施設など数々の地域の拠点をつくりあげてきた

 

代表の岩間さんは、「街の家族」は災害への備えにもなるといいます。

「野菜を作ったり、保存食を作ったりして、食べ物を備蓄できたらいいなと思っています。地域のみんなが顔見知りになれば、何かあった時に助け合える関係性が生まれるでしょう」

課題は資金面です。地域のために役立てて欲しいというオーナー(元々この家に住んでいた女性の娘さん)の厚意で家賃は優遇されていますが、会費だけではすべての経費をまかない切れません。いろんな人の助けや力を借りて運営しています。

「街の家族に集まる人はみんな自由意志で来ているのよ。楽しいからお金を払う。この場所が続いて欲しいからお金を払う。自分のためだけじゃなく、誰かのために、協力し合える仲間が地域で増えていったら楽しいじゃない。1000円払う人が100人いたら運営できるって形は理想ですね。どうやってお金を集めて運営していくかはみんなで検討中です」と岩間さん。

「街の家族」は7月で活動を始めて、一周年を迎えました。これから、どんな風に地域コミュニティに厚みをもたらしていくのか、新しいコミュニティづくりのモデルになれるのか……今後も期待して、注目していきたいです。

 

【Miwa’s eye】

取材をしたこの日にも、病院に行きたいという方のために別の方が車を出したという話を聞きました。「○○さんが足腰を悪くしているのに、車が無くて困っている」「野菜が採れ過ぎて」「庭に雑草が生えているんだけど体調が悪くて……」こういったニーズは、日々の暮らしの中で絶え間なく生まれ、それをサポートしてくれる人たちがどこにいるのか、それも生活に根ざした身近なところから発信されるのです。暮らしの中で本当に必要で、役に立つ情報は、新聞やタウン情報誌などから得られるものだけではないのだと気付かされました。「街の家族」という場所で顔を合わせることで、支え合える人間関係が育まれるからこそ、困っている誰かのために動くことができるのかもしれません。

「街の家族」には決まった形があるのではありません。お食事会があったり、梅干しやらっきょうを漬けたり、ただお茶を飲んでおしゃべりをしたり……その日その日、集まる人によっても雰囲気は変わります。地域にこんな人がいたんだ!という発見もあるかもしれません。

「街の家族」実行委員の方々は50〜70代の方が多いのですが、とても意欲的で実行力があるのに驚かされました。若い世代の私たちも積極的に街づくりに参加しよう、そう思える取材でした。自分の身近なところにも「街の家族」を作りたいですね。

Information

街の家族

場所:横浜市青葉区奈良町1566−332

活動日時:火・木・金 10:00〜15:00頃

会費:一家族につき1回100円もしくは1ヶ月1000円

http://www.machinokazoku.info/

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