コミュニティづくりから始まる温暖化対策 「あおばECOアカデミー第3回目」レポ
7月26日、NPO法人森ノオトが主催する「あおばECOアカデミー 第3回 私たちの未来をつくる井戸端会議」が開かれました。前半はゲストの佐土原聡氏(横浜国立大学地域実践教育研究センター長)による地球温暖化と都市防災についてのお話をうかがい、後半は講義の内容を受けて参加者同士で地域の中でどう行動していくか、語り合いました。あおばECOアカデミーも3回目となると、参加者の中には常連さんもいて、顔を見るだけで嬉しくなってしまいました。(Text:松岡美和)

2013年7月26日(金)。アートフォーラムあざみ野セミナールームで、「あおばECOアカデミー 第3回 私たちの未来をつくる井戸端会議」が開催されました。

前半は、横浜国立大学地域実践教育研究センター長 佐土原聡先生が「環境・防災・エネルギーの視点からの総合的な都市・地域づくりに向けて」という講演を行いました。まず、地球環境問題と災害とが深く結びついていることが話されました。

例えば、東日本大震災では津波で色々なものが流され、建物が倒壊し、たくさんのガレキの山ができました。このガレキを撤去・処分するのに、山を切り崩して埋め立てたり、廃材を燃やしたりすることで、地球温暖化の原因物質と言われているCO2(二酸化炭素)の排出にさらなる拍車をかけてしまっている現状があります。ガレキ処分の原因は自然災害由来だと思われますが、総合的な視点で見るとCO2排出(地球温暖化への影響)や新たな土地の開発といった環境問題へとつながっていることが分かります。

もうひとつの例では、森林の荒廃があげられました。戦中の木材の供出で日本の森がはげ山になり、戦後の拡大造林政策で針葉樹が大量に植林されていったのですが、木材の自由化以降安い輸入材が流入し、国産材はほとんど使われていません。日本の林業は後継者もおらず、森は手入れされずにどんどん荒れ、木漏れ日が差さず下草も生えず、生態系が乏しくなっています(農業も同じ状態だと言えます。後継者不足で耕作放棄地だらけ……)。

下草が生えずむきだしになった土壌はやせていきます。そこに雨が降れば、地面をいっきに流れ下ります。それが、がけ崩れや土砂災害を起こす原因ともなっているのです。

横浜市の水源でもある丹沢水系では、このような森林が顕著で、もし自然災害で大規模な土砂災害が起これば、私たちの水がめが失われ、横浜の都市機能がマヒしてしまう可能性がある、と佐土原先生は言います。つまり、私たちの都市生活は、森や川や地下水など、様々な生態系サービスによって支えられているのです。

講義では、次に、地球環境問題と災害への対策、これらが合わさった総合的な視点が必要だということが話されました。風の道、地下水脈といった自然環境を都市計画にうまく取り入れ、安心・安全でなおかつ質的にも快適な暮らしを送るためには、様々なリスクを減らしていくことが欠かせません。

最近では極端な猛暑や、都市の排熱による上昇気流が局所的な豪雨を引き起こす現象が頻発しています。地球温暖化対策におけるトータルでのリスク軽減のためには、平常時にいかに低炭素な(CO2の排出量が少ない)暮らしにシフトしていくのかといった「緩和策」と、自然災害などの非常時にどう生き抜いていくのかといった「適応策」を融合したアプローチが必要だということを、佐土原先生はおっしゃっていました。

こうした都市を支える新しいインフラとして期待されるのが、ICTを活用したネットワークのプラットフォーム(注:ICTとは、いわゆるITにコミュニケーションのCが加わった情報通信技術のこと。ネットワーク通信による情報の共有などが含まれる)。

森ノオトも小さいながらもメディアとして、どのようにデータを市民向けに翻訳し、伝えていくのかについて、考えさせられました(詳しくは佐土原先生のインタビューを参考)。

 

森ノオトではすっかりおなじみになったワールドカフェ

 

講義を聞いた後、休憩をはさんで参加者同士の意見交換へと移りました。普段、見知らぬ人としゃべり慣れていないと、意見交換だなんて難しそう……なんて感じてしまいがちですが、前回と同じ、ワールド・カフェ形式だったので、安心して参加できました。

ワールド・カフェ? 私も、あおばECOアカデミーで初めて聞くことばだったので調べてみました。ワールド・カフェとは、参加者が少人数に分かれ、カフェのような空間でオープンに会話を行い、時々メンバーを変えて話し合いを続けるというコミュニケーションの方法なのだそうです。

一人ひとりが4〜5人分の意見を聞いた状態で、さらに新しいメンバーと対話すると、内容も発展し、もっとたくさんの人と話したような充実感が得られます。

今回の参加者は、シニア世代のおじさま・おばさまを始め、地域で活躍する若い男性、子育て世代の女性など、様々な分野の人たちが集まりました。

 

佐土原先生もワールドカフェに加わってくださった

 

参加者はお茶とお菓子を持って、4つのテーブルに分かれました。簡単な自己紹介の後に、講義の中で感じたことや、私たちの暮らしの中でどんな問題があるかなどを発表します。最初のテーブルでは「どんなテーマで話し合うか」を決め、メンバーをシャッフルした後で、内容を深めました。

テーマと話し合ったことをもとに、環境問題を分かりやすく市民に伝えるための4コマ漫画をつくろう! ということでしたが、短い時間で絵を描くまでは至らず、テーブルごとで出た意見を発表して終わりました。

この話し合いが最終結論となるわけではありません。「もっとこうしたらいい」「こんな仕組みが欲しい」などなど、アイデアが出てくることを期待して、今回発表された内容をご紹介します。

 

自治会単位でエネルギーをシェアできる仕組みがあれば、災害時にも困らないはず。大手の電力会社に頼らず、地域でエネルギーを作り出す仕組みを設立したい。第2回目のECOアカデミーでの話し合いが生きてきているように感じる

 

このテーブルではエネルギーシステムについて話し合われました。地域単位でエネルギーを分け合えるような仕組みができれば、防災への備えにもなります。節電や省エネなど、環境やエネルギー問題への意識も地域内で深められそうです。

 

地域で環境に対する共通意識を持ち、ゆくゆくはそれをみんなの常識に変えたい

 

このテーブルでは自然環境についての共通意識をいかに持つかが話し合われました。地域の自然環境が破壊されているなどといった問題があっても、それが地域の共通意識になっていかないと、解決の手法が見えません。いかにそれを多くの人に伝えるかが課題となってきます。SNSなどインターネットサービスを利用して地域自然環境に対する情報交換の場をつくることがその解決の糸口になるのではないか、という意見が出ました。

 

自然環境とバランスのとれた暮らし方をするために、意識改革をしたい。このテーブルでもエネルギーのことまで話が及ぶ

 

このテーブルでは、自然環境とバランスのとれた暮らし方をするにはどうしたらよいかということが話し合われました。楽しく学びながら体験できるような、自然エネルギーの拠点をつくれば、エネルギーの大量消費に関する地域住民の意識を変えていくことができるのではないか、ということでした。

 

実現したい世界を目指して私たちができることは何か? 抽象的だが、みんなが同じようにこの疑問を抱えているのかもしれない

 

このテーブルでは、今の社会が抱える根本的な問題について話し合われました。個人の行動が地域全体に与える価値が見えないから、行動につながっていかないという現実があります。理想的な社会を誰が、何を、どうやって、実現していくのか……といった様々な疑問について意見を出し合いました。

最後に佐土原先生はこう言いました。「環境問題の解決のためには、地域に住む皆さんが足元からどう行動していくかがポイントだと思っています。住民たちが生活者の視点を持って、地域の情報を生かしていく。そのためにも、研究者として情報を発信していきたいです」

あおばECOアカデミーに3回とも参加して思うことは、いわゆる温暖化などの環境問題の解決策を話し合うというよりも、皆さんがいかに地域コミュニティを再生していくのか、どうつながっていったらいいのかを求め、模索しているということ。

社会をよくしていくためには、まずは地域で、自分の足元からできることを始めていくことが大事だと思います。家庭の中で個人的に日々エコ活動をすることももちろん大切なのですが、地域で同じ志をもった仲間とつながっていくことで、より広がりと手応えを感じられるのではないでしょうか。そのためにも、コミュニティづくりが求められています。

一人一人が思い描く理想の社会はもしかしたら曖昧なものなのかもしれません。しかし、見たこと・聞いたこと・感じたことを身近な人と共有し、話し合うことで、その曖昧な世界へ近づくための具体的な解決策が見いだせるのではないかと感じました。

あおばECOアカデミーも老若男女が集まり、自由に意見を出し合えるコミュニティのひとつ。一人ではできないことも、仲間がいれば一歩前へ進めるかもしれません。地域をもっとよくしたい! と願う皆さん、一緒に井戸端会議しませんか?

 

<おまけ>

即席で4コマ漫画描いてみました。

 

Information

第4回 あおばECOアカデミー

日時:2013年9月13日(金)10:00〜12:00

会場:ウィズの森

ゲスト:藤江惠一氏&玉置哲也氏(株式会社ウィズハウスプランニング)

テーマ:地球と地域と共生する住まい、コミュニティ

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