キラリと光る自由な感性!造形教室「にいはるびじゅつ」の魅力
1996年に、緑深い新治の森近くで始まった造形教室「にいはるびじゅつ」。美術関係の習い事では女の子の割合が多いといいますが、ここに通っている子の7割は男の子だそうです。男の子たちが夢中になる「にいはるびじゅつ」の秘密に迫ります!
緑豊かな細道を進む

緑豊かな細道を進む

緑区三保町の野山に囲まれた細い道をまっすぐ行ったところにある、木のぬくもりを感じさせるシンプルモダンの大きな一軒家。ここが、子どもたちのあつまる造形教室「にいはるびじゅつ」です。緑に囲まれた空間はまるで秘密基地のよう。

緑に囲まれたアトリエ

緑に囲まれたアトリエ

子どもたちの笑い声に誘われるように中へ入ると、天井の高い吹き抜けのあるアトリエ内で、思いおもいに制作している子どもたちの姿がありました。壁一面が木でできている広々としたアトリエには、様々な工具や作業台がズラリと並んでいます。

このウッドテラスから入り、奥にアトリエが広がる

このウッドテラスから入り、奥にアトリエが広がる

この日はたまたま子どもたちの大好きな自由制作の日。

 

瓶ビールのふたをトンカチで平らにする子、

 

慣れた手つきで電動のこぎりを使いこなす子、

 

自由に切った布でコラージュをつくる子、自分の好きな絵をひたすら描き続ける子、

 

スタッフのお兄さんに支えてもらいながら大きな板で制作する子たちのイキイキとした姿がありました。

創作に没頭している子どもたち

創作に没頭している子どもたち

スタッフの手を借り、大きな板を使って制作に挑む女の子。なんと自分が入れるくらいの家をつくっています!

布絵を楽しむ男の子

布絵を楽しむ男の子

 

布絵のしあげに集中する男の子

布絵のしあげに集中する男の子

 

カナヅチでビールのふたを平らにしている男の子

カナヅチでビールのふたを平らにしている男の子

 

熱中して大好きなアニメのイラストを描く男の子

熱中して大好きなアニメのイラストを描く男の子

アトリエ内には個性が光る自作のお道具箱がずらり。「じぶんひきだし」といって、子どもたちはここに制作途中のものや置いておきたいものを入れています。

アトリエには子どもたちお手製のオリジナルお道具箱がならぶ

アトリエには子どもたちお手製のオリジナルお道具箱がならぶ

 

たくさんのちいさな素材がつまった棚には、子どもたちが一目見てわかるように素材が仕分けされている

たくさんのちいさな素材がつまった棚には、子どもたちが一目見てわかるように素材が仕分けされている

子どもたちから「イチゴ先生」の愛称で慕われているのは、にいはるびじゅつの生みの親でもある、ふんわりとやわらかな印象の沢田清美さんです。

にいはるびじゅつ代表の沢田清美さん

にいはるびじゅつ代表の沢田清美さん

沢田さんは熊本出身。武蔵野美術大学を卒業後、童具(どうぐ)デザイナーの和久洋三さんの元で2年間の修行を経て、その後、世田谷の造形教室「くじらっぱ」を生徒ごと引き継ぎ、たくさんの子どもたちにものづくりのおもしろさを教えてきました。シュタイナー幼稚園や、住民参加型の講座や公園づくりなどの企画や、まちづくりの事務所でコンサルタントとしてのキャリアもあり、さらに、ご自身も24歳と21歳と18歳の3人のお子さんを持つお母さんでもあります。

 

私の娘が通っている川和保育園の卒園児の多くがにいはるびじゅつの生徒です。沢田さんの3人のお子さんも、川和保育園を卒園しているそうです。沢田さんが3人のお子さんを育てる中で、もっと子どもたちが自由にのびのびと遊べる場を提供したいという想いから、地域の母親仲間たちと自由な遊び場(プレイパーク)をつくるなど、川や森での市民活動にも力をいれていたといいます。

 

そんな子どもたちへの想いから、「にいはるびじゅつ」がスタートします。はじめはアパートの一室から始まり、その後、使われなくなった工場がアトリエになったりと、時とともに形を変えながら、やがて現在のアトリエへと行き着きます。

 

現在は、アトリエの上が吹き抜けになっており、2階と3階は居住スペースです。家族の声が通り、顔が見えるアットホームで開放的な空間が広がっています。そしてなんと、アトリエの横には沢田さんのご主人のアトリエも!

 

じつは、沢田さんのご主人・沢田均さんは、金属造形作家として活躍するアーティストなのです。子どもがにいはるびじゅつにいる間に、大人も横のアトリエで彫金のレッスンを受けることができるそうです! ちょうどこの日もお子さんを通わせながら、彫金のレッスンを受けている保護者の方がいました。

 

これまで何年も子どもたちを見続けてきた沢田さんは、「子どもたちのモノづくりの感覚や感性にはかなわない。ほんとうにすごいんです。私は子どもたちのつくり出す姿や、完成した作品を見て、自然と“すごいね〜”や“いいね〜”の言葉が口からしょっちゅう出てしまうんですね。長年子どもたちを見ていますが、ほんとうにいつも、子どもたちの感性には驚かされます。子どもっていうのは大人がびっくりするような、すごくいいモノをつくってしまうんですね」と話します。

 

にいはるびじゅつではあえて、うまく正確に描いたりする技術的なことを教えるのではなく、作品に対する概念くずしからはじめるそうです。沢田さんは、「うまい絵」と「いい絵」は違うといいます。

 

「うまく、きれいに」描くこと、つくることよりも、子ども自身がやりたいと思うことを「自分らしくつくる」ということを一番評価しているといいます。作品が完成するまでの楽しさや、できるまでの努力や苦労、葛藤もふくめ、つくりあげるまでに体験するひとり一人のプロセスを何よりも大切にしている、とも。

 

はみだしたり、いびつだったりすることを安易に正そうとするのではなく、そこにある子どもたちのありのままの自由な感性を見出し、その中に光るすばらしさを生かしていくこと。うまく正確に描くことが評価されがちな学校生活ではなかなか認めてもらえないような個性にこそ光をあて、子どもたちが思い切り自分らしく自由に表現できることで、ものづくりの本当の楽しさを感じてもらいたいといいます。

 

また、ここでは大人が日曜大工で使うような電動工具も子どもたちが使っています。音がガンガン出てもオーケー! ワイルドに自由にできるモノづくりは特に男の子たちの多くが求めていることで、育ちにも必要なことだと沢田さんはいいます。にいはるびじゅつが男の子から人気なのもうなずけます。

危険だからと排除するのではなく、やりたいことをとことんできるように、危険な道具も使い方を教えて見守るスタンスは、川和保育園の教育方針にもつうじる

危険だからと排除するのではなく、やりたいことをとことんできるように、危険な道具も使い方を教えて見守るスタンスは、川和保育園の教育方針にもつうじる

 

沢田さんの愛犬で看板犬のサラン(韓国語で愛の意味)。ほかにもうさぎ1匹、犬1匹の姿があり、アトリエの空気を和ませてくれている

沢田さんの愛犬で看板犬のサラン(韓国語で愛の意味)。ほかにもうさぎ1匹、犬1匹の姿があり、アトリエの空気を和ませてくれている

おもに大人の意向ではじめられる早期教育や、塾通いが流行る世の中で、子どもたち本人が望んで本当にやりたいと思うことを、とことんできる環境がここにはあります。テレビやゲームではなかなか味わえない、手をつかって生み出すという、創作することの楽しさをとことん味わえるのがにいはるびじゅつ。あくまで主役は子ども。子どもたちの純粋な感性を引き出し、表現できる場と道具、やり方を教え、そっと見守ることで、大人の私たちが想像してもみなかったような、見て驚くほどすばらしい芸術的な作品の数々が誕生しています。

イチゴ先生の説明を聞きながら創作している子どもたち

イチゴ先生の説明を聞きながら創作している子どもたち

現在、にいはるびじゅつには80人近くもの子どもたちが通っているそうです。平日、週1回の小学生を対象にしたクラスのほかに、土曜日は個別支援を必要とする小学生から高校生の子どもたちが通う「土曜クラス」や、未就学の子どもたちが通う「ようじクラス」も。その他にも毎年8月は年に一度の「なつやすみフリーデイ」が実施され、外部の子どもたちも加わって一層バラエティーに富んだ作品が生まれているそうです。

 

これまでの個性光る子どもたちの数々のアート作品は、にいはるびじゅつの公式ホームページからも観覧できます。大人の私が通ってみたいと思うほど魅力的な場所、にいはるびじゅつに、みなさんもぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。

Infomation

子どもたちの造形教室「にいはるびじゅつ」

ホームページ: http://niiharu-art.com/

高山 えりか
この記事を書いた人
高山えりかデザイナー
森ノオトの花形デザイナーでおしゃれ番長。キャッチーなデザイン、キュートなイラストは見る人の心を鷲掴みに。写真の腕前も相当なもので、Instagramで発信する愛犬とのユーモラスな生活にファンも多い。料理、お酒、キャンプ、インテリア、ハワイが大好き。北海道出身で愛称は「ピリカ」。
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