自然の中を親子で歩こう!風の谷幼稚園2歳児保育「たんぽぽ」の一日
【森ノオトリポーター養成講座修了レポート(8) 写真・文/長谷睦子】
長女が今年の春卒園した、川崎市麻生区にある「風の谷幼稚園」には、2歳児保育の「たんぽぽ」というクラスがあります。娘も年少クラスに入る前に少しだけ参加したのですが、親子共々とても楽しい経験をさせてもらったことを、ついこの前のように思い出します。風の谷幼稚園の2歳児保育は、一般的に言われている「プレ保育」とは少し違うようです。3月にしては日差しの温かい日、2歳児保育担当の四條寛依先生にお話を聞きながら、その一日をのぞいてきました。

「たんぽぽ」とは、風の谷幼稚園の2歳児保育クラスの呼び名です。4月に始まり、翌年の3月まで、週1回活動が行われています。活動場所は、主に幼稚園の周りの自然にあふれる場所。まず幼稚園の子どもたちが活動する通称「たんぽぽ広場」に集合し、そこで少し遊んだあと、雑木林や田んぼの見える散歩道、周囲の公園までの道を、親子で手をつなぎ歩きます。四季おりおりの遊びや工作などをしたり、みんなでおやつを食べたりと、そんなお楽しみも折り混ぜながら、活動の基本は、親子で手をつなぎ、たくさん歩くことです。

私が取材に訪れた日は「たんぽぽ」の1年の最終日。幼稚園から少し離れた真光寺公園までの道を親子で往復します。その距離、なんと全行程で5kmほど! 今まで親子で1年間、てくてくといろいろな道を歩いてきたのですが、この日はその集大成とのことです。みんな、最後まで歩けるでしょうか? ちょっと涙目になっている子や、不安そうな顔をしている親子もいます。

歩き始める前に、四條先生が「さあ、みんな目をつむって!」と声をかけ、この1年親子で頑張ってきた一つひとつの活動を思い返しながら、優しく話し始めました。目をつむり先生の声を聞きながら、不安そうな親子の表情も、心なしか和らいでいったように見えました。

 

頑張って歩こうね!」お母さんは子どもたちをぎゅうっと抱きしめたり、足をマッサージしてあげたりしていた

 

目的の公園までの道は、「尾根道」と呼ばれており、幼稚園の子どもたちも、遠足や、じゃがいも堀り、さつまいも堀りなどをしに行くのにしょっちゅう通ります。晴れた日には富士山もくっきりと見える見晴らしの良い散歩道で、気持ち良さそうにウォーキングをする人たちともすれ違います。この日は3月の上旬で、まだ雑木林の木々は寒そうでしたが、気温は温かく、親子で歩くのにはとても穏やかな、春を感じられる日でした。

 

雑木林をてくてく歩く。常緑樹の深い緑が目に気持ちいい

 

スリングにすっぽり隠れてしまう赤ちゃんを連れながら歩いているお母さん。なんと1月に出産したばかり! 久しぶりのたんぽぽ参加とのことだが、最終日のこの日はどうしても参加したかったとのこと。2歳児と手をつなぎながらさらに小さな0−1歳児をおんぶして歩くお母さんの多いこと!

 

真光寺公園までは片道2kmはあるとのことで、途中ぐずって歩かなくなる子もいるのでは……と思ったのですが、そんな心配は無用。小さくても力強い足で、根っこのあるでこぼこ道もしっかり歩きます。さすが、1年間お母さんとたくさんの道を歩いて来た子どもたち。2歳児とは思えない頼もしさです。

 

落ち葉を踏みしめながら歩きます。さあ、ゴールの公園まではもう少し!この日はお父さんの参加も。赤ちゃん連れのお母さんの荷物を持ってくれていた

 

てくてく歩くこと40分程。目的の真光寺公園まで辿り着きました。途中で2回ほど軽い休憩を挟みましたが、みんなもくもくと前を向いて歩きます。そして、お母さんの手をしっかりと握っています。その結ばれた手と手に、親子の強い心のつながりを感じました。この長い距離を少しもぐずらずに歩けるのは、隣に大好きなお母さんがいてくれる安心感からなのかもしれません。

 

おつかれさま。みんなでゴール!泣いている子なんて1人もいない

 

公園にはお楽しみが待っていました。同じ「たんぽぽ」の別の曜日クラスのお母さんたちが事前に準備してくれたスタンプラリー。公園の木々をバス停に見立てて、台紙にシールを集めていきます。全部そろった子にはメダルのプレゼント!

 

お母さんと一緒にシールを集める。何個集まったかな?

 

全部集まったね! おめでとう! もちろんメダルも手作り

 

ちょっとしたお楽しみで疲れも吹き飛んだ様子の子どもたち。次は公園の芝生広場に移動しました。そこで先生が用意していたのは、親子の絆と子どもの成長を実感できるちょっとした儀式。まず、全員で手をつないで芝生広場を100メートルほど走ります。その後は、お母さんが子どもの手を離し、1人でもといた場所まで戻ります。あれ? 一緒にいかないの? と、ちょっと不安そうな表情の子どもたち。そして、遠く離れたお母さんは、1人ずつ順番に大きな声で子どもたちを呼ぶのです。

「◯◯ちゃーん! おいで!!」

今まで、たんぽぽでは親子でずっと手をつなぎ活動してきました。最後に、お母さんから離れ、1人でお母さんのところまで走っていきます。お母さんの呼びかけに、小さい足で一生懸命駆けていき、最後にお母さんにぎゅっと抱きしめられる光景は、私のみならず、周りのお母さんたちの涙を誘っていました。1年間、一緒に成長を見守ってきた仲間だからこそ、我が子の成長のように感じられるのだなあと思いました。

 

最初はみんなで手をつないで。切れないようにね!

 

「おいで〜!」「おかあさ〜ん!!」

 

お母さんにぎゅうっと抱きしめられて安心の表情。涙を誘う

 

四條先生にたんぽぽで大切にしていることをうかがいました。それは「親子で時間を共有すること、四季を感じる自然の中での活動、そしてお母さんに子育ては楽しいと思ってもらうこと」とのことです。母子分離のプレ保育が多いなか、「たんぽぽ」では、最後の日まで母子が一緒に過ごします。核家族化の増加により密室で孤独な育児をしながらストレスをためるお母さんも多いと聞きますが、同じ子育てをしているお母さんたちが集まり、我が子も他の子の成長も1年間一緒に見つめながら、親子ともに成長できるように願っているとのことでした。

この日は、往復5kmの距離を歩いて帰った子どもたちですが、最初は500mを歩くのもやっとだったそうです。4月から少しずつ歩く距離を増やしていき、ようやくこの距離まで歩けるようになったとのこと。その道のりには、様々なドラマがあったのだろうと、この日の親子の表情を見ていて感じました。

 

風の谷幼稚園の2歳児保育担当の四條寛依先生。いつも温かい眼差しで親子を見つめている

 

この他にも、たんぽぽに参加するほとんどの子は、秋くらいまでにおむつが外れる、ご飯を食べる時にみな正座をできるようになる……など、詳しく聞きたい話もありました。この4月から新しいたんぽぽのクラスが始まっています。機会があれば、また別の一日をのぞかせてもらいたいなと思いました。

風の谷幼稚園2歳児保育「たんぽぽ」では、新年度の園児をまだ募集しているそうです。興味のある方は風の谷幼稚園(044-986-5515)までお問い合わせください。

Information

風の谷幼稚園

〒215-0023

神奈川県川崎市麻生区片平1510

TEL 044-986-5515

URL http://www.kazenotani.net/

ながたに 睦子
この記事を書いた人
ながたに睦子ライター/デザイナー
東京都町田市の里山風景が色濃く残る地域で、パンを焼き、絵を描き、デザインをする日々を送る。賑やか三姉妹と珈琲焙煎が趣味の域を超えた夫と楽しく暮らす。おっとり可愛い子リスのような容姿とは裏腹に、3児を育てながら保育士資格を取得するモーレツな一面も。趣味は里山歩きとキャンプ。
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