7/19(土)進和学園「いのちの森づくり見学ツアー」に行ってきました!
「進和学園」は、障がい児・者の自立支援や生活介護を主な事業としておこなっており、500名以上の利用者さんがいる社会福祉法人です。森ノオトは7月19日(土)、進和学園が8年前からスタートしたという「いのちの森づくり」を見学するツアーを開催しました。(text:中島美穂)

集合場所の目印と名札には森ノオトの看板どんぐり「もりたろう」が

7月19日(土)、私はドキドキの朝を迎えました。森ノオト初のツアー。参加してくれたみなさんを引率する大役を担っていたからです。

もちろん同時に楽しみな気持ちも抱いていました。3月に進和学園を見学したリポーター仲間の松岡美和さんのレポートを読み、進和学園の取り組みを実際に見てみたかったのです。

私が進和学園の活動に興味を持った理由のひとつは、どんぐりの苗を育て植樹して森をつくる取り組みです。名前に“森”があり、「もりたろう」という看板息子ならぬ看板どんぐりがいるメディアに携わる者として、どんぐりからの森づくりについてぜひとも知りたいと思いました。

これまでも横浜市民の水源である道志村を訪ねたり、間伐された木材での木琴づくりのワークショップに参加して学んだ、私たちの命の源である森についてもっと知りたいという気持ちもありました。

そして、ふたつめには、「いのちの森づくり」プロジェクトをおこなっている進和学園が社会福祉法人で、この取り組みが、障がいのある方たちの就労支援にもなっていることです。

障がいの有無関係なくみんなが一緒に当たり前に暮らせる地域。森ノオトに関わるようになってから私が描くようになった理想です。しかし、その夢を見るにもまだまだ勉強不足で、とにかく知らなければと、地域で農による就労支援をおこなっている社会福祉法人を訪ねたり、障がいのある方たちによるお芝居のワークショップに参加したりしています。

広い広い「どんぐりハウス」。水やりには3人がかりで1時間半要するそう

さて、集合場所である小田急線鶴巻温泉駅には、私と、先に見学している松岡美和さん、そして心強い助っ人(!)森のなかま会員で「森びとプロジェクト」にも関わる山崎誠さんの他、ウィズの森の藤江惠一社長やスタッフの佐々木淳子さんなど参加してくれた大人6名、お父さんと一緒に来た小学生5年生と中学1年生の兄弟と、それに2歳のおチビさんも2人、時間通りに集まってくれてホッと一安心(なにしろこの時はまだドキドキしていましたから)。

進和学園「いのちの森づくり」プロジェクトマネージャーの川下都志子さん。詳しく、かつわかりやすい話に感激!

この日、私たちを案内してくれたのは、進和学園「いのちの森づくり」プロジェクトマネージャーの川下都志子さん。川下さんと共にバスに乗り、20分ほどかけて「どんぐりハウス」に向かいました。ハウスの中には可愛い苗木がたくさん! およそ80種類、年間で12万本もの苗が生産されているのです。

この日は空にどんより雲が広がり、雨が降ったり止んだりのお天気。しかし、この時期晴れていたらハウス内は40℃を越える暑さになるそうで、夏場のスタッフみなさんのご苦労は大変なものです。それを思えばこの日は絶好の見学・体験日和だったと言えます。

森の“主役級”タブノキ。水分含有量が多いという。昔、山形県酒田市で、タブノキを植えていた家が大火から守られた教訓から「タブノキ1本、消防車1台」という言葉ができたという

私たち参加者とスタッフの方との自己紹介の後、川下さんにハウス内を案内していただきました。進和学園のいのちの森づくりは、横浜国立大学名誉教授の宮脇昭先生が提唱する「潜在自然植生理論」に基づいています。その土地本来の木を育て、主役となる木を中心に様々な樹種を混植・密植して、自然な森づくりを目指しています。

秋に採取されたシイ・カシ類などのどんぐりは、1つのトロ箱(海産物を入れる箱、転じて育苗にも使われる)に200-250個もまかれ、わざと密植状態で育てられます。そして、春に発芽して大きくなった苗を5-7月頃ポットに移します。そのまま2年ほど根っこがポットの中に充満するまで育て、しっかりと大地に根付く力を蓄えさせます。

根本にどんぐりの殻が残るアカガシの苗。このどんぐりは、森ノオトエリアからも近い横浜市港北区にある師岡熊野神社から採取された。できるだけ植樹地の近くにある元気な老大木のどんぐりがよいのだという

私たちが体験したのは、密生したアカガシ苗をポットに移し替える作業です。ちゃんと根付いて森をつくる木となるよう、状態よく出荷して作業所の方たちに工賃が還元されるよう、まっすぐなポット苗をつくるべく、みんな丁寧に手を動かしていました。子どもたちも一生懸命作業し、みんなでつくったポット苗はなんと321本!

私たちが作業している間、スタッフの方がせっせと苗を運び、土を足してくれました。どんぐりのイラストが描いてあるそろいのTシャツを着たスタッフの方たちの、優しくも自分の仕事に誇りを持っているような表情や、黙々と作業する姿が印象的でした。

進和学園の“いのちの森づくり”は、森をつくるという環境保全活動が福祉施設利用者の就労支援にもなっている取り組みなのです。

しんわルネッサンスをぐるりと囲む森。最初は1平米あたり3-4本と密集して様々な種類の樹木を植える。人間が手を加えなくても、自然の采配でやがて3平米あたり1本ぐらいの間隔にまで淘汰され自然な森の姿になるという

その後、車で15分ほどの「しんわルネッサンス」に移動しました。進和学園の授産事業の中核施設で、ホンダの車の部品工場を主軸に、農業、しいたけ栽培、清掃、給食、パンやお菓子の製造販売などに取り組んでいます。どんぐりチームもここに所属しています。

しんわルネッサンスの敷地をぐるりと囲うような雑木林は、8年前に植えられたポット苗が大きくなったものだそうです。わずか30cmほどだった苗がこんなに立派に!? と思わず木々を見上げてしまいました。背の高いものと低いもの、たくさんの種類の樹木が植えられていました。

人の手によって植えられたものと言えば、1種類の針葉樹が植えられた人工林や、街路の並木道を思い浮かべる私にとっては驚きでした。

この小さな森を眺めながら、ふと、どんぐりハウスで出会ったスタッフの方の表情を思い出しました。自分たちがまいたどんぐりがやがてこんな大きな森になる。自分たちが森づくりを担っている。日々この木々の成長を見て過ごすことが、仕事への自信や未来への希望につながっていくのかもしれないと思いました。

ツアーの間、いのちの森づくりプロジェクトや施設の説明をしてくれた川下さんのお話の中に、いくつも印象的な言葉がありました。

「ポットの中でじっくり根が育つまで待ち、足腰の強い苗木にするんです。大器晩成という言葉がありますが、本物の成長には時間がかかるんです」

「森には高い木だけじゃなくて、低い木も必要なんです。必要無いものなんて何ひとつありません」

その言葉に、育児にも全く同じことが言えるなとハッとしたのですが、障がいのある方と共に暮らす社会においてもこの森づくりから得られるヒントがあるように感じました。

朝焼いたばかりの種類豊富なパンの昼食。用意してくれたランチョンマットにもりたろうがいて感激! フレッシュなトマトジュースも参加者に大好評だった。進和学園は地産地消など高付加価値の農産加工といった「第六次産業」化も進めていく

作業所の方が朝焼いてくれた美味しいパンの昼食をいただいた後、最後にホンダの部品工場を見学しました。車の部品づくりには精密さと正確さが求められます。福祉作業所だからといって間違いは通用しません。サイズや作業内容を間違えないような工具や、検品の仕組みが随所に見られました。障がいのある人とともに生きるためのヒントがあるように思いました。

今回のツアーを終えて、もっとたくさんの横浜の子どもたちと一緒にいのちの森づくりを見学・体験したい! と思いました。第2弾、第3弾と企画していきたいし、いつか地元の森づくりにもつながったらいいな……。次は植樹にも参加してみたい! 地域の福祉関係の方ともつながっていきたいな、などなど、森づくりとの出会いから、むくむくとやりたいことの枝葉が広がっているところです(笑)。

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