おかあさんたちの作るやさしいパン 麻生区細山「ひこばえパン屋」
【リポーター養成講座受講生修了レポート:坂本香織】麻生区細山の住宅街に、かわいい看板の「ひこばえパン屋」があります。坂の多いこの地域で個人宅への配達をおこなうなど、地域に根差したパン屋さんは今まさに伸び盛り。まもなく5周年を迎えるひこばえパン屋をご紹介します。

小田急よみうりランド前駅からよみうりランド方面へ15分ほど歩き、西生田小学校を越えたところに、小さなかわいいパン屋があります。ここは、障がいを持つ方々に働く場を提供する地域活動支援センター、わーくはうす・ひこばえの運営する「ひこばえパン屋」。おいしく、かわいく、そしてお手頃価格のパンが並ぶひこばえパン屋は、私も娘と息子と一緒に行く大好きなパン屋です。

三叉路の角にある建物

三叉路の角にある建物

わーくはうす・ひこばえは2008年に設立され、2009年から2名の職員を中心にパン屋のオープンに向けて準備が始まりました。そのうちの一人、野田智子さんにお話しをうかがいました。

 

ひこばえパン屋の商品開発を一手に担っている野田さんは、2009年当時は、パン作りに関しては完全な素人だったと言います。最初は本を買ってきて勉強、発酵器もなくオーブンも家庭用の小さなものしかないところから始まり、パン教室に通い、少しずつ道具を揃え、2年間練習を繰り返して2011年5月にお店をオープンさせました。オープン当時20種類ほどでスタートしたパンの種類は、今では定番のパンから季節のパンまで60種類もあります。

小さな店内には、かわいいパンが行儀よく並び、あたたかい手作りの内装にほっこりする

小さな店内には、かわいいパンが行儀よく並び、あたたかい手作りの内装にほっこりする

ひこばえパン屋のパンには、国産小麦のゆきちからを使用しています。またあんこ、チョコレートクリーム、カスタードクリームなどの具材はすべて手作り。丁寧に手作りすることで、おいしく安くパンを提供することができるそうです。

 

野田さんを含めスタッフの方はほとんどが子育て中の主婦なので、「どうしても子育て主婦目線の店作り、パン作りになるんですよね」。高すぎても買えないしおしゃれすぎても日常的ではない……、家族が食べるのに、安全安心であるのはもちろんのこと、安くておいしい普段着のパンがひこばえらしさと言えそうです。

 

関西出身の私は、首都圏のパンの値段にはいつもびっくりさせられていて、高すぎて買えない! ということが多々あるのですが、ひこばえパン屋ではたくさんかごに入れてレジに持っていっても1000円を超えないことが多くて、逆にびっくり! 買い物が楽しくて、ついつい買いすぎてしまいます。

季節によって具材も変化する惣菜パン。夏にはきたあかりを使ったじゃがバターフランス、初夏にはそらまめパン、秋にはさつまいもパンなど

季節によって具材も変化する惣菜パン。夏にはきたあかりを使ったじゃがバターフランス、初夏にはそらまめパン、秋にはさつまいもパンなど

 

クリームがぎっしり入ったチョココロネとクリームパン。メロンパンはサクサクふわふわ

クリームがぎっしり入ったチョココロネとクリームパン。メロンパンはサクサクふわふわ

 

ハード系のパンもたくさん種類があって迷ってしまう。オーブンの都合上たくさん焼けないので、どうしても欲しい場合は予約がおすすめ

ハード系のパンもたくさん種類があって迷ってしまう。オーブンの都合上たくさん焼けないので、どうしても欲しい場合は予約がおすすめ

野田さんおすすめのパンは、「食パン」と「バケット」です。食パンは、もちっとしていながら、それでいてしっとり、ふんわりしていて本当においしい! そして、バケットはパン教室で先生に徹底的に指導されて練習を重ね、うまく作れるようになった思い入れのあるパンだそうです。外はパリっと中はふんわり柔らかくて、私の娘も大好きで、おやつに何も塗らずにバリバリ食べています。

 

それから、乳製品にアレルギーがある息子さんをお持ちの野田さんが、小さい赤ちゃんでも安心して食べられるようにと作った「ふわふわちびぱん」は4個入りで100円。乳製品も卵も使用しておらず、離乳期にも最適です。

パンの焼きあがり時間が記されている黒板

パンの焼きあがり時間が記されている黒板

2年前からは周辺地域への配達も始めました。「魔女の宅急便プロジェクト」と名付けられた宅配サービスは、坂が多いこのエリアで買い物に行きにくいお年寄りの方々にもパンをお届けしたいという思いから始まりました。配達を始めたことでお客さんの幅が広がったと言います。個人のお宅だけではなく、保育園や特別養護老人ホーム、コミュニティカフェや近隣の市役所などへの配達を定期的に行い、ひこばえパンのファンを増やしています。

 

現在ひこばえパン屋では、知的障がい者3名を雇用しています。数字に強い人には計量など、得意なことを中心に作業してもらっているそうです。送迎ができないために自力で通える人しか雇用できなかったり、作業場が狭いために落ち着いて作業してもらえないことがもどかしいと野田さんは言っていましたが、できる範囲で障がい者の活動の場を提供しています。

 

わーくはうす・ひこばえには、パン部の他に工芸部と農業部があり、毎年秋には、合同でひこばえまつりが行われます。地域の方へ開かれたイベントで、昨年のひこばえまつりでは、ふらっと行った私たち家族もお餅つきに参加させてもらい、おいしいお餅をご馳走になりました。積極的にイベントに参加したり出店して、地域のみなさんに活動を知ってもらおうとしています。

工芸部の作品の販売。入学前シーズンだったので小学校で使用するナフキンと巾着袋が陳列されていた

工芸部の作品の販売。入学前シーズンだったので小学校で使用するナフキンと巾着袋が陳列されていた

ひこばえとは、切り株や根元から生えてくる若芽のことで、“たとえ逆境にあっても力強く上に向かって伸びていく、成長していく”という願いを込めて名付けたそうです。地域という切り株に芽生えたひこばえパン屋、これからもどんどん伸びていきます。

Infomation

わーくはうす・ひこばえ ひこばえパン屋

〒215-0001 神奈川県川崎市麻生区細山5-1-1

定休日:日曜・月曜・祝日

営業時間:10:30-16:30

配達:火曜・水曜・木曜 11:00-15:00 (受付:9:00-14:00、対象地域:麻生区細山・高石・多摩美、多摩区西生田2丁目)

TEL:044-455-5372

FAX:044-455-5373

駐車場:有

坂本カオル
この記事を書いた人
坂本カオルライター
森ノオトで数少ない「リケジョ」で、建築・土木系の記事を手がけられる貴重な存在。巨大な建設物から天然自然な住まいづくりに転身し、化学物質を極力使わないライフスタイルを心がけている。生まれ育った家庭も結婚後も転勤族で、各地を転々とする暮らしを送っているため、抜群の順応性をもつ。
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