(text,photo: 末田千鶴)
「八百屋」という言葉を聞いて、皆さんはどんなことをイメージしますか? 賑やかに野菜が並ぶ店内。威勢のいい店主の声。きっと、どこか懐かしさを覚えるのではないでしょうか。
「べジフルフラワートゥーシェ 八百屋」は、白を基調にしたレトロな佇まい。確かに野菜は並んでいるのだけど……。まるで雑貨屋さんのように丁寧に商品が並べられています。
店内には、無添加・天然醸造で手作り味噌と麹の専門店「井上麹店」の麹、私の友人にもファンが多い「とこ豆腐」の豆腐や、「ゆるひ」のふわふわのシフォンケーキ、加熱処理をしていない生はちみつなど、「体にいいもの、優しいものを」という店主のこだわりの品々が並んでいて、つい、いろいろ手に取ってしまいます。
こちらのお店は2014年9月に、同場所で営業していた八百屋さんが都合により店じまいするのを引き継ぐ形で、自然栽培を中心に扱うスーパーでバイヤーをしていた間島幸夫さんと、元々土地の一角で小さな花屋をしていた、藤田広江さんがオープンしました。
「<べジフル>は野菜と花をイメージする言葉。<フラワートゥーシェ>はフランス語で心にふれるという意味。花屋をやっていた時の名前なんです。これだけでは何のお店だかわかりにくいですよね? それで<八百屋>とつけたんです」。広江さんは笑います。これで野菜と花の関係と、長い名前の秘密がわかりました。
「安心・安全・美味しいを届けたい。そして、農家さんの思いや野菜たちのストーリーを伝えたい。旬の野菜の中にも、さらに“今!”という旬があるんですよ。だから対面販売は絶対条件なんです」と顔を見合わせるお二人の目線は、作る人、食べる人、野菜たち。すべてに優しくてあたたかさを感じます。
そんなトゥーシェさんは、どんな未来を思い描いているのでしょうか? 伺ってみました。
彼らの夢は、自家採取の種を守り、つなげていくこと。普段“種”に注目する人は少ないかもしれませんが、昔は収穫と共に次の野菜作りに備えて、その土地に根ざした自家採取の種を大切に残していました。今、流通している種の多くは、昔のように「つなぐもの」ではなく、「買うもの」という感覚の一代限りの種(F1種といいます)なのです。「その土地に根付いた種を守って、後世につないでいくことの大切さを、子どもたちに伝えていきたいんです。」と、広江さんは言います。
その強い思いは形になり、4月からHSSプロジェクト(“H”はハンド・ハート・ヘッド。“SS”はシード。種から種への意味)として始動し、プランター作りから始まり、土作り・野菜作りを、親子で体験して学ぶという、ワクワクするような内容です。それは、自らで考え、手を動かし感じることができる人を育てることでもあります。
私も参加したいなと思ってしまいました。
小さいけれど、お二人の「やりたい!」がたくさん詰まったお店。つくる人と食べる人をつなぎながら、どんな風に成長していくのか。トゥーシェさんのこれからがとても楽しみです。
小さな「街の八百屋さん」。そこには、野菜が並べられているだけのスーパーには無い、人の温かさを感じることができます。店員さんとのやりとりから、晩御飯のレシピのヒントや、野菜の豆知識も得られてしまうかもしれません。皆さんもそんな醍醐味を体験してみてはいかがでしょうか?
べジフルフラワートゥーシェ 八百屋
住所:神奈川県相模原市中央区鹿沼台2-12-13
電話:070-5020-0224
Fax:042-812-7155
営業時間:11:00~18:30
定休日:日・月(祝祭日営業)
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