大切なお人形を最後まで慈しむ心。 琴平神社の「人形浄化和め祭」
近頃はやりの「断捨離」ですが、思い出とともにあるお人形達はなかなか手放せないものです。琴平神社の「人形浄化和め祭」では、古くなった人形に感謝し、御霊を慰めてくれます。その裏側には、今は使わなくなったものにも優しい目を向け、慈しむ心の豊かさを育てる宮司さんの優しいまなざしがありました。

毎年37日、川崎市麻生区にある琴平神社では「人形浄化和め祭り」が行われます。古くなったお人形たちに感謝し、お祓いをして清めるお祭りです。

境内にずらりと並べられたお人形たちの姿は圧巻!

 

私が訪れたのは、早春の暖かな日。

境内には白梅がほほえむように、咲いていました。

境内には梅の他にも東屋があり、参拝帰りに缶コーヒー片手にのんびり過ごしている方も

 

20年くらい前から始まったこの祭儀では、毎年5000体以上もの人形が集まるそうです。

近頃は「断捨離」が人気ですが、単にモノとして人形を処理するのではなく、大切に送ろうとする温かい気持ちの方がたくさんいるんだなぁと、私はうれしくなりました。

ここに飾れないものもまだたくさん保管されていた。剥製や甲冑を持ち込まれた方も中にはいらっしゃるそうな

 

並べられたお人形はお供え物や、祝詞の奏上などで御霊を慰め、神聖な火でお人形の頭上をお祓いします。お清めして御霊抜きをしたあとに、環境への配慮から境内ではお焚き上げをせず、焼却施設へ運ぶそうです。

お祓いをする宮司の志村幸男さん曰く、

「たくさんのお人形たちのお顔からは、それぞれお人形の気持ちが伝わってくる」

「哀しい顔をしているお人形もあるし、満足そうに微笑まれているお人形もいる」そうです。

人形も長い時間を経ると感情を持つものなのでしょうか?

我が家の人形たちはどんなお顔をしているのかな、と最近はゆっくりお顔を見ていないことを思い出し、反省しました。

おひな様がいると、ペアのお内裏様はそばにいるかな? と時間を忘れて探してしまう

 

お人形を持って来る方も、子育てがひと段落した時、親としての務めを終えたことに感謝の気持ちを持っている方、親としての思いが満たされたように見える方、様々な面持ちで来られるそうです。

「持って来られる方々のお気持ちを受け取り、お人形の魂や、邪気を払って浄化していくことに、ご自分がぶれることはないですか?」

という私の質問に、

宮司さんは「それは修行がたりません。そんなことでは神主はつとまりませんよ」と笑って、こんな話をされました。

「信念をもつことが大切です。人の心の平安や安心、心の豊かさを願う、という信念を持ってお務めをしています。

お人形を持って来られた方の心を癒やし、子育ての終えたことへの感謝の気持ちに寄り添い、神社に来られる方の心の豊かさのために日々、何かできることがあるか? と探しています。ほめられてうれしい、感動するとか、そういったよかったことを少しでも多く経験することで、人の心は豊かになっていきます」

そして、自らの信念を積み上げるために、宮司さんは毎朝、絵を描いているそうです。

宮司・志村幸男さんは画家としても長年活躍しており、参集殿や琴平会館でその絵を見ることができる

 

大地に咲く、いくつものコスモスに注がれるまなざしのあたたかさに、ぐっと心をつかまれました。これが宮司さんの信念だと、人の心の平安、心の豊かさへの思いがまっすぐに伝わってくる絵でした。

3時に起きてお務め前の7時半までの時間を積み重ね、この絵を描きあげるのに3カ月かかったそうです。

朝まだ明けきらぬうちに自分と向き合い、絵を描くことで人の平安を祈る。

琴平神社に流れるあたたかな、静かな時間、静謐さはこんな宮司さんの心があるからなのかな、と思いました。

また琴平神社では、秋の例大祭(体育の日)や節分祭りなどで、地域の人のつながりをつくる場所として、地域とのつながりを大切にしています。

中学生の職業体験や、留学生の受け入れなど、宮司さん自身、たくさんの人に会う機会を作っているそうです。

「人とコミュニケーションをとる時に、人の顔を見て話すことが大切です。その表情を通して一人ひとりを認識していくことで、もめごとや誤解が解けていきます」

人にとって大切なことって、ほんとにシンプルな、昔からよく耳にしたようなこと、足元にあるようなことだな、とつくづく思いました。

1カ月差で姉妹ともに嫁いだので、当時我が家には4人もお人形さんが飾られた。それも今は懐かしい思い出。

 

これは、我が家にある「高砂人形(尉と姥)」です。

結納の時にいただいたもので、お義母さんが手縫いで作ってくれた木目込み人形です。久しぶりにいただいた時のこと、一針一針縫ったお義母さんの気持ち、結婚して過ぎたこの16年を思い返すと鼻の奥がツーンとしました。

いつかこの人形も手放す時があるのかな、

その時、自分は心豊かな人となっているかな、とこの先に続く道に想いを馳せました。

それぞれの心にある人形物語。

琴平神社にはあたたかな思いでそれを見守る人がいます。

Information

武州柿生 琴平神社

住所:神奈川県川崎市麻生区王禅寺東5-46-15(駐車場有り)

電話:044-988-0045

HP: http://kotohirajinja.com/

人形浄化和め祭についての詳細:

http://www.kotohirajinja.net/ningyou.html

【人形浄化和め祭】  毎年3/7に行われます。

・毎日1800まで、年間を通してお人形を納めることができます。

(注:保管場所に限りがあるため、2月中旬以降だと助かるそうです)

・初穂料(お清め料)はお気持ちです。

・日本人形、ひな人形、五月人形、西洋人形、などお人形類、ぬいぐるみなど。

その他、歳旦祭(初詣)、どんど焼き(1/15)節分祭(2/3)例大祭(体育の日)などいろんな行事があります。

新楽 津矢子
この記事を書いた人
新楽 津矢子ライター
横浜市青葉区在住。「心とからだをすこやかに、笑顔をたいせつに」をモットーに、自宅のある鴨志田町近辺でフリーのヨガインストラクターとして活動中。生きる素は、ヨガ。笑顔の素は、おいしものを食べること、自然のエネルギーを感じること、親しい人と笑いあう時間。
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