ポートランドの「道」事情と、自治会? Field Trip in PDX(7)
##リード
昨年6月に北原まどかさん・船本由佳さんと行ったポートランド。街を歩くだけで楽しい、その感覚のヒントの一つは「道」にありました。現地で見てきたこと聞いたこと、そして私が感じたことを、建築に携わる者の視点で紹介します。

旅行にいくと、その街の道路の様子を見るのが好きです。ストリートファニチャー、電線の有無(とそのデザイン)、路面店の雰囲気など。

 

<街の道>

 

船本由佳さんのレポート(5)にもあるように、ポートランドのダウンタウンの区画は61メートル、歩いて約1分と、一般的な区画の半分の大きさになっています。

また、南北に?長いダウンタウンのちょうど中央には、長く公園が連なる緑地帯が存在しています。

私がポートランドに到着して街歩きを始めたのが、ちょうどお昼時。ビルの間から出てきた人たちは、テイクアウトのランチを片手に公園で仕事仲間と食事をするなど、思い思いの時間を過ごす風景が見られました。どこの建物からも、数区画歩けば樹木に囲まれた環境に身を置くことができます。

オブライアントスクエア

 

ノースパークブロックス

 

ノースパークブロックスにある子供向けの公園。子供向けの公園の周りはフェンスで囲われ、道路に飛び出さないよう配慮されている。

 

コンクリートジャングルでは仕事したくない! と、都会嫌いな私ですが、こんな場所が近くにあったら、心の環境も整う気がします。

写真の通り、周辺道路には路上駐車が非常に多く、正直残念に感じた初日の滞在でしたが、ポートランドにいるうちに何が良くて何がダメなのか、それを決めるのはそこで暮らす人たちなのだから、とだんだん気にならなくなってきました。

ビルの立ち並ぶすぐ隣に憩いの場がある。ゴミ箱は中が見えず、緑地に馴染みやすいデザインだった。奥には駐輪スペースも確保されていることが分かる

 

自転車のチェーンを巻いて停めることができる青いバー

 

店舗が店先の歩道に商品と椅子を並べて、そこで自由に座ることができる、というケースも多かった。写真はまどか編集長がタイプライターを打っているところ。

 

ダウンタウンの人々が集う屋台村(フードカート)

 

オシャレなお店や美味しい食事処がたくさんあるミシシッピ通り。店の機能の一部が歩道に染み出している場所が多かった。

 

<住宅街の道>

 

私が衝撃を一番受けたのが、住宅街の道でした。私たちがAirbnb(自宅を宿泊先として貸し出す民泊の紹介サイト)で借りた家は、ダウンタウンから北東に7キロほどのローズ・シティ・パークというエリアです。碁盤の目状に区画整理され、各々広い庭を持ち個性的な家が並ぶ閑静な住宅街で、約7割の家族がファミリー世帯だそうです。

車道は両サイドに路上駐車があっても車が通れる程度の幅があります(このエリアでは路上駐車は1世帯につき1台は時間制限で許可されているそうです)。

大きな樹木がそびえたつ住宅街

 

車道と歩道の間はグリーンゾーンと呼ばれ(呼び方は様々あるので一例)、そのエリアの正面の敷地の所有者が自由に使ってよい場所なのです。

この使い方がとても面白く、ポートランドの文化を濃縮して表しているような気がしていて、近所を探索しました。

車道、グリーンゾーン(あるいはParking Strip)、歩道、住宅の関係を図示した

 

こうした広めのグリーンエリア自体は、米国では珍しいことではなく、整備された比較的大きさに余裕のある住宅街では、このような道のつくりをしています。グリーンゾーンが芝生になっている住宅街は実際よく見かけるかと思います。この場所の使い方はそれぞれの住宅街の近隣組合(日本でいうところの自治会に近い)で決めるそうです。整えられた清潔な印象を与える町並みにしたいという住民が多いと、芝生にするのでしょうか。

ポートランドで私が見たグリーンゾーンは、芝生にしているところは少なく、住んでいる人に会ってみたくなるような楽しい場所でした。いくつかご紹介します。

私たちが借りた赤い家。その前のグリーンゾーンではブルーベリーやラズベリーを育てていて、近所の人が食べることもできる

 

街路樹を取り囲むようにして物見台とブランコが。さっそく子どもたちを魅了した

 

マイクロライブラリー。写真の場所はグリーンゾーンではなく敷地内だが、グリーンゾーンに建てている場所もいくつかあった

 

コンテナを作り、野菜や果物を育てているケース、バードハウスをぶら下げる家も多かった

 

この家は敷地内の庭と連動して素敵な花畑を作っている。中には灯篭も置いてあり、グリーンゾーンの使い方は自由度が高いのがうかがえる。電柱が木製なので、樹木に馴染んで違和感がない

 

マイクロライブラリーと一緒によく見られたのが、「詩」が投稿できる掲示板。

ポエトリーポストと言うそうです。

このエリアの道にほれ込んだ私は帰国後、近隣組合についてもう少し具体的にどんな活動をしているのか調べてみることにしました。

ポートランドには全部で95の近隣組合があり、先の私たちが泊まった家のあるエリアは「ローズシティパーク・ネイバーフッド」に属していることが分かりました。

このようにほぼすべてのエリアがどこかの近隣組合に属している。自分の住んでいるエリアがどこに属しているか、どんな近隣組合なのかは、ポートランド近隣参加局のホームページから簡単に検索することができる。

 

住所を打ち込むと、その近隣組合のエリアの詳細な情報(面積、人数、世帯構成、年齢層、人種割合など)が紹介されています。また、「ローズシティパーク・ネイバーフッド」は独自のホームページを持っていることも分かりました(すべての近隣組合が持っているかは分かりません)。

この近隣組合ではどんな活動を行っているのか、ホームページを見てみると、「neighborhood tree survey」という街の樹木を目録化するという興味深い活動が掲載されていました。これは、ポートランド全体でも行っているようです。ホームページには44ページにも及ぶ詳細な樹木の記録があり、これらは近隣組合の中のチームの活動でつくられたことが分かります。

http://www.rcpna.org/wp-content/uploads/2016/07/Rose-City-Park-Inventory-Report-2016.pdf

その他には、ガレージセールの開催、コミュニティガーデンの管理といった話から、土地利用・交通計画、防犯対策、中にはホームレスを助ける方法や犬の糞問題についてなど、幅広い内容がインターネット上で話し合われていました。それぞれに対して、地域のボランティアが糞をされないよう看板を作ったり、ガレージセールの企画から集客までを行っています。セールの売上の一部は近隣組合に入り、市からの補助金だけに頼らず活動しています。

月一回100人程度が集まるミーティングで決まった内容のうち、ポートランド市やオレゴン州との協議が必要な内容は、議論のうえ、決定します。中には、市が下した決定に対しての反対運動が起こり、決定が覆ることもあったようです。

話し合いの内容から予算配分などは全てホームページ上で公開されており、ミーティングに参加しなくても意見を言える仕組みができています。

行政と市民をつなぐ働きをしているのがこの近隣組合であり、今のポートランドを作っていると言っても過言ではありません。

私が衝撃を受けた「ローズ・シティ・パーク」の「道」は近隣組合で話し合われた小さなことの積み重ねと、住民のオープンマインドがあってこその空間なのだと納得しました。

山川 紋
この記事を書いた人
山川紋ライター
教育やWEB関連の仕事を経て、現在は夫と住宅の設計やリノベーションを手がける「ショセット建築設計室」を主宰。横浜市青葉区のビンテージマンション「桜台ビレジ」に住まい、事務所を構える。森ノオトでは教育と建築の専門家として、子ども向けの建築ワークショップなどを展開。愛猫4匹が看板。
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