十日市場発、クラフトビールで乾杯! 「TDM1874」
本格的な夏到来ですね! この時期の「一杯のビール」の美味しさ、それが地ビールだったらさらに嬉しい……。そんな願いを叶えてくれる場所が十日市場(横浜市緑区)にあります。ビールの醸造所を持ち、クラフトビールが飲めるお店、「T=Ten(十)」「D=Days(日)」「M=Market(市場)」、創業1874年という由来で、その名も「TDM1874」です。

横浜市緑区十日市場、中山方面へと続く道の「宝袋入口交差点」に以前から大きな酒屋さんがあるなと思っていました。昨年の秋、信号待ちをしながら交差点の角に目をやると……、赤銅色に美しく輝くビールの醸造設備が一面のガラス窓越しに見えました。
十日市場でビールが醸造されている?! 馴染みの街にそんな革命が起きていたなんて! 信号が青に変わり車を発進させながら醸造所とそれに並ぶ素敵なお店が目に入り、さらに胸が高鳴りました。

赤銅色に輝く醸造設備とブリティッシュグリーンが映える店構え

その醸造所とお店「TDM1874」は、昨年11月に老舗の酒屋、坂口屋がオープンさせました。坂口屋は十日市場で、明治7年の創業から142年間地域とともに歩んできました。

背負う歴史の中で古き良き伝統を守りながら、坂口屋の5代目加藤修一さんは「新しいことに挑戦していく開拓精神」を大切にしているそうです。今回、加藤さんから「TDM1874」を任されている店長の清藤洸太さんにお話を伺い、醸造所と店内を案内してもらいました。

「世界中の人に飲まれているお酒を通して世界とつながっていきたいと思ったことがこの世界に入るきっかけだった」という清藤さんと「大好きな国日本で、ビールを造るのが夢だった」というジョージさんのコンビがプロデュースする「TDM1874」のビール

「TDM1874」は酒屋さんで、ビールの醸造所を店内に持ち、夜はバー、土日は昼からお酒が楽しめるお店として営業している新しいスタイルのバーです。
お店で扱うお酒の多くは「蔵直」といって、直接蔵から仕入れます。仕入れ先は、北は北海道から南は屋久島まで、酒蔵を訪ね、生産者と会って話をすることを大切にしています。

取材に伺った前日まで、清藤さんは3日かけて北海道のワイナリーを回っていたそうです。
直接産地を訪れ、生産者さんと話をすることで、その心意気と味、五感で受け取ってきたフレッシュな情報を、熱を込めて話してくれました。

「お茶の出来がお茶畑次第であるように、ワインも葡萄畑で収穫される葡萄あってのものなので、その収穫量次第で生産量も限られます。ですから、自分が『ぜひ』と思うワインを仕入れさせてもらえるかどうかというのは、出会いと運というところもあります」(清藤さん)
今回の北海道出張で出会ったワインも、今後お店に入荷されるということで、見かけたら北の大地に思いを馳せてしまいそうです。

店内のワインには全て生産者の写真が載ったタグが付けられている。店頭で会うことのない生産者の顔を見られることで、より一本のワインの持つストーリーが広がる

清藤さんの話には、たびたび生産者やお酒の原料となる「お米」や「葡萄」、「麦」といった農産物にまつわることが出てきます。
それは、坂口屋の「お酒は工業製品ではなく〈一つの文化〉であると思う。各地の歴史と風土、そして人に携わる農産物である」という考えに通じています。

お話を聞いているとき、お店に隣接されたガラス張りのビール醸造所から現れたのは、ビール醸造長のジョージ・ジュニパーさん。イギリスのブライトン出身の醸造家です。

贅沢なシチュエーションで飲むビールの味はまた一段と旨い!

ジョージさんの故郷では、日本のお母さんが家庭で「梅酒」を造るように、家庭でフルーツワインなどを作っていたそうです。ジョージさんが人生初のお酒を造ったのは13歳のとき、家の周りに豊かに生えていたエルダーフラワーを使ったお酒だったそうです。
ホームブルーイングでハーブを使った自家製のお酒! 飲んでみたいなぁと憧れてしまいます。

醸造所の中は冷房ができないため、夏場は過酷な作業になります。大きな釜に大袋の麦を入れたり、かき混ぜたりの作業をするのはかなりの力仕事。ジョージさんの腕の筋肉に納得です

ビールの醸造が暮らしの一部という環境で育ったジョージさん、19歳のときからイギリスの醸造所で働きながら、技術を磨いてきたそうです。
「ビール造りの魅力は〈クリエイティブ〉な仕事であるところ。レシピから自分で考えて、原料を選び、仕込みをして、発酵させて……どの工程にも魅力を感じています」(ジョージさん)

こちらはビールの棚。ラベルをじっくり眺めるのも楽しい

清藤店長とジョージさんに、窓越しに輝いていたビールの醸造所を案内してもらいました。仕込み、発酵、熟成、ろ過までここで行っています。

まずは、粉砕した麦とお湯を、一つ目の赤銅色の仕込み槽に入れるそうです。そこで液の中のでんぷん質が麦芽糖に変わります。仕込槽でできた麦汁をろ過槽でろ過すると「あめ湯」という透明な麦汁ができるそう。「あめ湯」……聞いただけで、なんだか美味しそうですが、まだまだビールになるにはここからです。肝心な「ホップ」を、次の煮沸釜に加えて煮沸します。

そして、冷却機で冷やした麦汁に、ビール酵母を加えて発酵させるのが、店内からもよく見えているシルバーに輝く発酵貯蔵タンク。ここで発酵、熟成されたビールが「TDM1874」で飲めるのです。どれも、世界で一つの味わいです。

写真は「浜なしごーぜ」「TDM1874」で作られたビールは店頭販売もされるが、あっという間に売り切れてしまう。発売日はFacebookで要チェック!(写真:「TDM1874」)

ジョージさんがこの醸造所で初めて造ったビールは、地元の特産「浜なし」を使ったその名も「浜なしごーぜ」です。第一回目の醸造で生産された「浜なしごーぜ」は既に完売していて、見学させてもらった時には、次の「浜なしごーぜ」が発酵タンクの中で熟成中でした。「あと一週間くらいで飲めるかと思います」と清藤さん。

TDM1874では、このように地元の名産「浜なし」を使ったビールを造ったり、地域と共に育っていきたいという思いがあります。お店の中には、森ノオトでも取材した十日市場の農家「佐藤農園」の直売コーナーもありました。バジルやきゅうり、新鮮な地元野菜をお酒と一緒に買って料理し、お酒とお料理を楽しむ夕食のひと時、そんなストーリーが浮かんできます。

醸造の世界では名の知れたジョージさん。「ジョージのビールを飲みに来た!」と外国人のお客さんも多い

お店ではビールサーバーから5種類のビールを飲むことができます。この日は4種類のTDM1874オリジナルビールが用意されていました。金色のサーバーが輝くカウンターの上の黒板には、[この日に飲めるビールの名前・ABV(アルコール度数)・IBU(苦味単位)・色・特徴・価格]が書き込まれています。

今回はTDM1874 Breweryオリジナルの3種類「CoCo-Natsu」・「BBB(British Best Bitter)」・「PALE ALE」を清藤さんがセレクトし、ジョージさんが注いでくれました。
並べてみると、それぞれ色の明るさが美しく、目でも楽しめるのがビールだなと実感します。キャラメルとチョコレートが苦味のフレイバーとして使われている色の濃い「BBB」は見た目もぐんと美味しそうです。軽くて飲みやすく、アメリカのホップが使われていて、オレンジピールやシトラスで香り付けされた「PALE ALE」は香りも爽やかでした。ローストしたココナッツが甘くかすかに香る「CoCo-Natsu」。どれもジョージさんが自信と愛情を持って造ったものだということが伝わってきます。

ビールに合うおつまみのセレクトもたしかなこだわり。写真は清藤さんオススメのビールによく合う一品。ドイツでは定番の「レバーケーゼ」。名古屋にあるドイツ国家認定ハム・ソーセージマイスターのお店「AKITAHAM」から仕入れているそう

「クラフトビールや、お酒を飲みに気軽にふらりとここに集まってもらい、顔なじみとワイワイ過ごしたり、くつろぎながらお酒を楽しんでもらえるような、地域と共に進化していけるお店にしていきたいです」と清藤さん。

今年の夏も暑くなりそうな予感です。暑ければ暑いほど、美味しく飲めるのがビール!  夏の夕暮れ十日市場の坂の入り口にある「TDM1874」で、輝く醸造釜を眺めながら、ぜひビールと、それに合うこだわりのおつまみで暑気払いをしてはいかがでしょう。

Information

TDM1874

電話:045-985-4955

住所 横浜市緑区十日市場町835-1

営業日:月・火・木・金 販売: 11:00  /バー:17:0022:00

   土 販売: 11:00   /バー:12:0022:00

      日・祝日 販売:11:00  /バー:12:0021:00

定休日:水曜

  • 8月末までサマータイム営業

日曜日の閉店時間が22:00  月曜日の閉店時間が21:00

Facebook https://www.facebook.com/tdm1874brewery/

HP: http://www.sakaguchiya.co.jp/shop/

醸造所の見学についてはお店に問い合わせて下さい。

南部 聡子
この記事を書いた人
南部聡子ライター
富士山麓、朝霧高原で生まれ、横浜市青葉区で育つ。劇場と古典文学に憧れ、役者と高校教師の二足の草鞋を経て、高校生の感性に痺れ教師に。退職後、地域に根ざして暮らす楽しさ、四季折々の寺家のふるさと村の風景を子どもと歩く時間に魅了されている。森ノオト屈指の書き手で、精力的に取材を展開。
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