「自分を持つ」から始まる自己肯定感〜のむぎ保幼部「どろん子」
横浜市青葉区、寺家ふるさと村の外れに佇む、のむぎ保幼部「どろん子」。1歳から5歳児まで約40名の園児が通う小さな幼保園です。恵まれた自然環境の中で仲間と遊びこみ、心身の健康と自己肯定感を育むどろん子の魅力をお届けします。

初めてどろん子を見学に訪れた日、エネルギーに満ちあふれた子どもたちに圧倒され、素朴な給食が心に染み渡り、夫婦揃って「ここに通わせたいんですが、どうしたらよいでしょう?」と入園を即決していました。息子が入園してからの3年、我が家にはさまざまな環境の変化がありました。住む場所も、仕事も変わり、妊娠出産と人生の節目を経験する時、心のバランスを保つことができたのは、「どろん子」に息子を通わせているという安心感、保護者の気持ちにも寄り添ってくれるスタッフの温かさに支えされていたからだと思います。

 

「やまのなかにね、やまんばのいるおうちがあって、こわかったけどてがみおいてきたよ」

「たぬきのウンチがたまっていてさ、ふまないようにあるいてるんだよ」

 

寺家ふるさと村の恵まれた自然の中で、友だちと遊びこんで帰ってくる息子の言葉には、つくられていない自然の中で見てくる風景や音や匂いが日々好奇心を育んでくれていることが感じられ、親である私もワクワクします。

「たみちゃん」こと園長の萩原多美江先生。園長として、いち保育者として子どもたちと共に寺家の自然を駆け回るそのエネルギーにいつも驚く

「どろん子の親御さんたちには『よくぞここを選んでくれた』って思うんです。いろんな選択肢がある中で、おそらく勇気を出して来てくれた方もいるはずだけど、その気持ちを応援したいと思っています」。そう話すのは、園長の萩原多美江先生。園児からも保護者からも「たみちゃん」と呼ばれています。

 

行政などからの助成金は一切なしの届出済認可外保育施設で、駅からも遠く、もちろん園バスもない。園舎はお世辞にもキレイとは言えない年季の入った一軒家。それでも「どろん子」に魅力を感じて「ここだから通わせたい」と遠方からも通う親子が多いのは、この園の大きな特徴です。

子どもたちは年中薄着に真冬も草履を履いて、野山を駆け回る(写真:高橋エイジ)

どろん子が設立されたのは1991年。寺家ふるさと村のこの地で、全国に先駆けてフリースクール事業を行なっていた「のむぎ地域教育文化センター」の父母の「幼児の保育をして欲しい」というニーズに応える形で誕生しました。

 

縁あって、たみちゃんがどろん子に来たのは設立間もない頃、40歳の時でした。その当時、どろん子の園児はたった一人だったそう。それまで相模原市で無認可園の立ち上げ経験を持つたみちゃんには、園児一人という状況も、「ワクワクしたんですよね」と笑って振り返ります。

 

全国から集まってくるフリースクールに通う高校生たちと同じ空間でスタートした小さな小さな園は、保護者もスタッフも一緒になってチラシを配り、地域の親子が参加できるお散歩会などを企画して、地道に丁寧に園の活動を広げていきました。

まさに「どろんこ」になって遊ぶ子どもたち。親なら躊躇してしまう泥遊びをとことんさせてくれる環境に感謝。こびりついた泥汚れを落とすのはどろん子父母の特技に(写真:どろん子)

「公立保育園に勤めていた頃、『子どもにとって本当に良い保育って何だろう?』、『自然治癒力を高める給食を作れないだろうか』という疑問をずっと持っていたんです。小学校のプレスクールのための幼稚園や保育園じゃなくて、大人になるまでの心身の健康の土台をつくる、長い目で見た保育がしたいと思ったんですよ」(たみちゃん)

 

『水と土と太陽のもと、子どもの全面発達を保障する』という保育方針のどろん子では、大きい子は3時間、小さい子でも2時間以上、野山を走り回る外遊びが保育の中心です。

 

「自然の中って、子どもの可能性をグンと広げてくれるんです。どうやったら木の高いところまで登れるか、虫を逃さずに捕まえることができるか。子どもたちはすごく頭を使っています。毎日毎日、自然の中で仲間とどっぷりと遊ぶから心が満たされて、さぁ次は何しようって、違うものごとへの集中力も高まる。『月曜はこれを習って、火曜はあれを習って、水曜は泥遊びをさせたい』なんていうような良いとこどりはできないと思うんですよね」

子どもたちの遊び場を提供してくれている地域のじいじとハイタッチ。地域の方の理解あってこその保育環境です」と、たみちゃん (写真:高橋エイジ)

小さな園では一人ひとりの子どもの育ちに寄り添ってくれる反面、「少人数で育つと、環境が変わっても適応できるの?」と不安に思う保護者の方もきっといますよね。たみちゃんはこう話します。

 

「少人数だからこそ、子ども同士の中で自己主張を見守ることができると思っています。自己主張は人間関係の始まりなんですよ。初めから相手を受け入れるのでは、自分がなくなってしまう。自己主張をしてぶつかり合って、相手と自分が違うことを認識していくんですね。それでこそ譲り合うこととか、助け合うことを学べるんです。すぐに譲ってしまう子もいるから『それでいいの?』って声をかけることもあります」。

「何がいるかな?」捕まえた生き物は図鑑と照らし合わせて、生きた学びが日常的にできるのがどろん子の魅力(写真:高橋エイジ)

つい最近、こんなエピソードがありました。

年中・年長クラスでは、「今日何をするか、どこに行くか」の話し合いがあります。多数決で決まることもあれば、じゃんけんで決まることも、誰かの意見に流れることもあります。ある日の朝の話し合いのこと。

 

息子は「ザリガニ釣りに行きたい!」と手を挙げましたが、息子以外のほとんどの子が「お部屋で工作をしたい」と主張しました。普段理性が働きがちで争いを避けるタイプの息子は、ザリガニ釣りに燃えていてどうしても行きたいと主張するも、みんなの意見に押されて泣きながら「じゃあ工作でいいよ」と受け入れてしまいます。しかし、担任の先生は、「本当にそれでいいの? 良い子にならなくてもいいんだよ」と言って、その日は特別に工作チームとおさんぽチームに分かれて行動することを提案してくれたのです。

 

お迎えの時、先生から「今日はそれぞれの子の気持ちが強く、この気持ちは大事にしたいと思ったから2チームで活動しました」というエピソードを聞いて、私は胸が熱くなりました。「やりたい」と思う瞬間にその体験をできたことは、きっと息子にとって何倍も楽しく、感じるものがあったのだと思います。「大切な瞬間」を見逃さず、気持ちを受け止めてくれることは、子どもたちの自己肯定感も育ててくれていると感じています。たみちゃんと保育の価値観を共有するスタッフは、私にとって「保育の職人」のように思えてきます。

無認可園の立ち上げをしながら、自身も2人の子どもを育ててきたお母さん。「子育てに悩んでいるお母さんたちの話を聞いていると、かわいいなぁって思うんですよ」とその眼差しはいつも温かい

高い質の保育を提供する一方で、公的な補助がない中でこうした保育環境を維持していくことは苦労も多いと言います。駅前型の利便性の高い保育施設の拡充だけでなく、どろん子のようなこれまでに実績のある認可外保育施設にも光が当たる助成制度が整っていくことを願って止みません。

 

「寺家ふるさと村の豊かな自然の中で子どもと遊ぶと、きっと親御さんも心が解放されますよ」とたみちゃん。どろん子では毎月第2・4木曜に地域の親子お散歩会を開催しています。どろん子の子どもたちのエネルギーに触れ、ぜひ美味しい給食を味わってみてください。

 
 

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Information

のむぎ保幼部「どろん子」

住所:横浜市青葉区寺家町112

TEL045–961–6682

Facebook https://www.facebook.com/nomugi.doronko/

HPhttp://www.doron-ko.net/wp/

*見学も随時受付けています。お電話でお問合せ下さい(1317時)

地域の親子おさんぽ会

どろん子の園児たちと一緒に寺家ふるさと村をおさんぽしましょう!

毎月第24木曜日、9:0012:00(給食付き)

参加費:500円(保険料込み)

給食費:500

申込みはお電話で。

宇都宮 南海子
この記事を書いた人
宇都宮南海子ライター/スタッフ
元地域新聞記者。エコツーリズムの先進地域である沖縄本島のやんばるエリア出身で、総勢14人の大家族の中で育つ。田園風景が残る横浜市青葉区寺家町へ都会移住し、2017年から森ノオトの事務局スタッフとして主にシステムと編集部を担当。ワークショップデザイナーとしての活動もスタート。
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