大切なあの人にありがとうを込めて 「merci cinq」の洋菓子を……
2017年9月12日に新百合ケ丘にオープンした「merci cinq(メルシー サンク)」。長年本格フランス菓子を学び伝えてきたパティシエールの伊東かおりさんが、卵・乳製品・白砂糖を使わず、国内産やオーガニックなど、こだわりの素材に合わせたアクセントが楽しいお菓子が並ぶ洋菓子店です。

小田急線新百合ケ丘駅から徒歩13分ほどの交差点「王禅寺五差路」に佇むお店「merci cinq(メルシー サンク)」。お店からほど近い場所に伊東かおりさんのご自宅があります。

フランス菓子教室の先生でもあるかおりさん。ご自宅を建てる前に、子どもたちを側でみていられる環境で働けるよう設計されたキッチン。正面の大きな窓からは光がたっぷり入る

 

かおりさんは群馬県桐生市の洋菓子店・パティスリーウチヤマの長女として生まれました。「好きなことをやって良い」と、明るくおおらかなご両親が近くで働きながらいつでも会話ができる環境で育ち、高校2年時にアメリカへ単身留学。帰国後は大学で英語を深めます。
 
実はかおりさん、社会人になるまで洋菓子屋さんになりたいと思ったことがなかったのだそうです。では、なぜ今パティシエールに?
 
さてさて、これからどんな物語が始まるのでしょうか……。

 

こちらは有機人参をすりおろしたキャロットマドーレーヌ。ココナッツミルクやレモンがアクセントに

 

純粋な「カカオマス」(カカオ豆の胚乳を発酵、焙煎、磨砕したもの)をつかった焼きたてショコラマドレーヌ。上質な香りがキッチンに広がる。「カカオマス」には抗酸化作用の強い「カカオポリフェノール」、リラックス効果の高い「テオブロミン」が豊富に含まれ、さらにミネラルや食物繊維も多く含まれているのだそう

 

美しく丁寧な仕事を眺めている間に、かおりさんは3種類のマドレーヌ(キャロット、ショコラ、抹茶)を仕上げた。小さな背中はわたしの小さなアシスタント。ご褒美はうれしい焼きたてマドレーヌ。ごちそうさまでした

 

ここからはかおりさんのパティシエールまでの道のりとオープンしたばかりの「merci sinq(メルシーサンク)」をご紹介します。
 
コックコートがお似合いのかおりさん。意外なことに、初めて洋菓子をつくったのは大学在学中。友人からお誕生日ケーキのオーダーが入ったことがきっかけでした。まずレシピ本を購入することからスタート。かおりさんが選んだケーキはなんと、なんと!!難易度の高いシャルロットポワール!!
 
ところが、ご自身も驚くほど上手に仕上がり、その完成度の高さに、友人たちには初めて洋菓子をつくったことなど信じてもらえなかったそうです。幼い頃からパティシエのお父さまの側にいたことで、感覚が養われていたのでしょうか。かおりさんは皆が喜んでくれたことがとてもうれしくて、ここから洋菓子の世界に心が傾いていったのでした。

 

左からシナモン、ナツメグ、ジンジャーなどをつかったスパイスクッキー、お隣の可愛いお顔は発芽玄米クッキー(10月12日までオープン記念としてお買い上げされた方に1枚プレゼント)、真ん中は国産の抹茶をふんだんに使った抹茶。どれも一つひとつ丁寧に選ばれた素材が味わい深い

 

その後、大学でフランス語を専攻していた先輩からフランス行きを勧められ、まずはアテネ フランセでフランス語を勉強しながらフランス料理菓子専門学校ル コルドン ブルー・東京校で料理の「基礎」と菓子の「初級」を同時に3か月で取得!!そして渡仏し、120年の歴史をもつ本場ル コロドン ブルー・パリ校でも料理と菓子を学び、中級、上級を取得しました。その後はHôtel de CrillonのレストランとGérard Mulotで研修を経て、ご実家の洋菓子店、パティスリーウチヤマで8年間勤めました。
 
さらりとご紹介しましたが、かおりさんのコツコツと妥協することなく学んだこの10数年は誰もが真似できることではありません。

 

「5」に看板商品のマドレーヌを組み合わせたかおりさんデザインのロゴが入ったギフトボックス。merci(仏語でありがとう)は皆さんへの感謝の気持ち。cinq(仏語で5)はお店が王禅寺五差路にあることから

 

また、ご実家の洋菓子店で8年間働かれていた中で、月一回「かおりフランス菓子教室」を主宰。ホールケーキを2種類もつくるなど内容も含めとても好評でした。かおりさんは結婚後、2人のお子さんの成長を見守りながらご自宅でも「La maison de kaori」としてフランス菓子教室を開き、これまで80人ほどの生徒さんがあの素敵なキッチンで甘い香りに包まれたそうです。

 

暖かなオレンジ色の看板が目をひく外観。写真の左、実はかおりさんではなく……オープンから1カ月ほどお手伝いにいらしたパティシエであるかおりさんのお父さま。お父さまの熟練の技は見入ってしまう

 

かおりさんが心から信頼を寄せるスタッフ。きめ細やかな応対が嬉しい。愛情深いかおりさんの周りにはこんな素敵な笑顔が集まる。そんな笑顔にわたしもにっこり

 

さらにかおりさんの学びは尽きず………数年前に少し体調を崩したことから食事とご自身がつくる洋菓子を見直してみることに。体にやさしい洋菓子とは……と考えたものの、その知識がない、それでは!と、麻生区王禅寺でマクロビオティックのカフェを開いていた稲葉知香さんの教室の門をたたき、マクロビオティック中級、初級と学びを深め、学び終えたと同時に数年間探していたお店の場所が、自宅からも近いところに見つかったのだそうです。
 
フランス滞在時に抱いた夢「いつか自分のお店を出したい」が叶う瞬間でした。わたしはそのエピソードを聞いた時、胸がいっぱいに。思いは叶うのですね……。

 

数々の学びを経て生まれたメルシーマドレーヌ。左から無農薬パンプキン、カカオマスのショコラ、有機フランボワーズ、アーモンドパウダーたっぷりのバニラ、キャロット、国産の抹茶。どれも自然な甘さで素材が引き立ち、しっとりと上品な味わい。わたしのお気に入りはフランボワーズ。アクセントの紫いもとのコラボレーションに感動

 

かおりさんは「体に入れるものに関心を持って欲しい。そのためにシンプルでわかりやすい材料でつくること。間口は広く、どんな方でも気軽に安心して召し上がっていただけるような洋菓子をつくること。これが私が大切にしているところです。まずは今ご用意している洋菓子(プリン、マドレーヌ6種類、クッキ−3種類)を知っていただいて、今後米粉を使ったり、季節を感じながら街の小さなお菓子屋さんとしてゆるやかに少しずつラインナップを増やしていきたい」と話します。

 

店内はオープンキッチン。ピカピカのスチームラックオーブンを背にガラスのドアからちょこっと顔を出し、恥ずかしそうに笑うかおりさん。「merci cinq」とオレンジの糸で刺繍されたコックコート姿がまぶしい

 

実はわたしの大切な友人でもあるかおりさん。いつも笑顔に包まれたご家族の下、母として楽しく子育てをしながら、そしてフランス菓子のプロとして、しっかり地に足をつけ、丁寧に着実に夢に向かって歩んできた姿をみてきました。あたたかく素敵な洋菓子店のオープン、本当におめでとうございます。たくさんの方にかおりさんの洋菓子が届きますように…….。
 
ご自身へのご褒美や大切な方へのお礼や贈り物にいかがでしょうか。ぜひ一度あたたかな想いあふれる「merci cinq」を訪ねてみてくださいね。

Information

merci cinq (メルシーサンク)

住所:川崎市麻生区上麻生2-36-17 SSコーポ1F

電話番号:044-567-0621

営業時間:10:00~17:00

定休日:水曜・木曜

駐車場:あり

http://mercicinq.com

おおかわら あさこ
この記事を書いた人
おおかわらあさこライター
自然のもの、手仕事が放つ光を切り取り、写真におさめるフォトグラファー。ピュアでやわらかな感性から生まれる作品に、とびきり繊細でやさしい言葉をふわりと添えるフォトレポートが多くのファンを生んでいる。植物が好きで、フレッシュな姿もドライな様子も載せた植物図鑑をつくるのが夢。
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